米国の「FF金利」という言葉を聞いたことがあるだろうか。FF金利が上がるのか下がるのかで、米ドル円相場は大きく変動する。つまり、この金利がどう変更されるのかを予測できれば、投資戦略を立てやすくなる。本記事では、その実践例や考え方を解説していく。
FF金利とは
米国の民間銀行は、預金残高に対して一定割合のお金を全米12の連邦準備銀行に預けている。この預金残高が余った銀行が、不足する銀行に無担保で短期の貸し付けをしており、この際の金利が「FF (フェデラル・ファンド) 金利」と呼ばれている。
FF金利は、日本における日銀金融政策決定会合にあたるFOMC (連邦公開市場委員会) が金融政策を決める際の誘導目標で、米国の政策金利だ。
米国の中央銀行であるFRB (米連邦準備制度理事会) は、金融機関が持つ国債の売買などを通じて世の中に出回るお金の量を調節し、FF金利が目標値になるよう誘導している。
米FF金利がドル円相場に影響を与える理由
FRBが操作の対象とするFF金利は、住宅ローンや企業の借り入れ時などにかかる金利のベースにもなる。FRBがFF金利を上昇するように誘導すると、市場でほかの金融機関に貸すよりFRBに預けたほうが儲かるため、市場から資金を引き揚げる金融機関が増える。世の中に出回るお金が減ってお金を借りにくくなることから、ほかの金利も上昇するという仕組みだ。
米国の金利が上がれば世界の投資マネーが米ドルに集中する。なぜなら、金利の高い通貨で資金を運用したほうが有利だからだ。そうすると米ドルの価値が高まり、円との関係なら円の価値が相対的に下がり円安米ドル高となる。
逆にFF金利が下がるようにFRBが誘導するなら市場に出回るお金が増えて、お金を借りやすくなるため、金利は低下。米ドルの価値が下がれば、米ドル安の方向に動くことになる。
以上のことから、世界のマーケットはFOMCがFF金利を上げようとするのか、下げようとするのかに注目しているのだ。
任意のFOMCにおける政策金利変更の確率を調べてみると……
FOMCがFF金利を上げるのか下げるのかが予測できれば投資戦略を立てやすくなる。予測は難しそうだが「FedWatchツール」という予測に役立つものがあることをご存じだろうか。FedWatchツールとは、開催が予定されているFOMCでの金利操作に関する確率を分析するツールだ。世界最大の先物取引所であるCMEが提供している。
CMEは、米国のシカゴにある商品先物取引所・金融先物取引所である「シカゴ・マーカンタイル取引所」を略したものだ。
金利変動の可能性を分析
このツールを使って、2023年2月3日時点の将来の利上げの可能性を調べてみた。なお、この数字は日々変化するため、あくまでも2023年2月3日時点のデータとして参考にしてほしい。
例えば、2023年2月3日現在の政策金利は4.50~4.75%だが、直近の2023年3月22日のFOMCでは、4.75~5.00%に利上げする確率が85.6%もあると予測されており、残る14.4%は4.50~4.75%に据え置かれるという予測だった。
一般的にFedWatchツールでは「確率が70%を超えてくるとFF金利が変更される可能性が高い」と解釈されることが多い。2023年3月のFOMCの場合、利上げの予想確率は85.6%となっており、70%を大きく超えていることから利上げは既定路線といえることがうかがえるだろう。
このように同ツールでは、先々のFOMCで金利がどう変更されるかの予測を確認することができる。例えば、2023年9月20日開催のFOMCでの予測は、現時点 (4.50~4.75%) と比べて利上げが行われている可能性が57.3%あり、据え置きの可能性が32.4%、利下げの可能性が10.4%となっている。
今後の予測金利を基にした投資戦略のつくり方
FOMCが利上げを決めれば、日米の金利格差から円安米ドル高の方向に動きやすい。利上げすると予想できれば、資金を米国内の商品に移し替えることも視野に入れることになる。逆に利下げを決めれば円高米ドル安になる傾向があるため、資金を米国内の商品から引き上げることも検討することになるだろう。ただ、利上げが既定路線であることが分かっても市場は織り込み済みであることが多い。
たとえ政策金利が上げられたとしても予想通りなら為替の値動きは限定的だったり、逆に動いたりすることもある。マーケットは、事前の予想と発表値にギャップがあるほど反応して為替も大きく動きやすいことには注意したい。
投資判断の一つにFF金利も
ここまで見てきたようにFF金利は、米ドル円相場に大きく影響する。FOMCがFF金利をどう変更する可能性があるのかを分析し、それに基づいて投資戦略を練ることは、取引を有利に進める一助となるだろう。さまざまな指標とともに、FF金利の見通しも判断材料の一つに加えてみてはいかがだろうか。
(提供:大和ネクスト銀行)
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