近年、中小企業で後継者問題が解決できずに廃業する企業が多いことが問題になっている。中小企業であっても優れた技術を有する優良企業は多い。しかし中小企業の後継者不足の問題は深刻で、多くの企業がその悩みや問題を解決できずに廃業を余儀なくされている。事業承継不足の問題点としては後継者を育てるのが難しいことがあげられるが、事業承継の方法は親族内承継だけではない。
本稿では、中小企業でもできる事業承継の解決方法について解説する。
目次
後継者とは?
端的に言えば、会社の後を継ぐ人のこと。親族間や社員、社外の優秀な人物など第三者へ引き継がれる場合もある。受け継ぐものとしては、企業や財産など有形資産のほか、これまで培ってきた理念や伝統といった無形資産がある。
中小企業の後継者不足の現状
後継者がいないために廃業を決断する経営者も多くいる。最初に中小企業の後継者不足の現状を分析したデータから見てみよう。
日本の経営者の高齢化による悩み
中小企業庁が2023年4月には公表した「2023年版中小企業白書」に掲載されている株式会社帝国データバンクが集計したデータでは、中小企業の経営者は50~70歳代前半にかけた年齢層が多い。団塊世代の経営者が事業承継や廃業によって引退しているものの、それでもなお経営者の年齢層が高いことがうかがえるだろう。
75歳以上の経営者の割合は、過年度よりも2022年のほうが高くなっており、団塊世代の経営者の引退が進んでいるものの、経営者が高齢となっても事業承継ができていない企業はまだ多いといえる。中小企業白書では、経営者年齢の上昇に伴い「事業承継を実施できている企業」と「事業承継が実施できていない企業」に二極化していると見ている。
後継者が決まっていない企業、廃業を予定している企業が多い
日本政策金融公庫総合研究所が2023年3月23日に公表した「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)」によると中小企業における事業承継の見通しの割合は、以下のようになっている。
なんと廃業を予定している企業(廃業予定企業)は、57.4%にものぼる。廃業予定企業の割合は、2019年調査時点で52.6%であったが、4.8ポイントも上昇した。そのうち従業者数1~4人の企業の割合が81.8%となっており、規模が小さい企業ほど廃業を予定する傾向にある。また廃業予定企業では、経営者が60歳代の企業が28.1%、70歳以上の企業が44.1%と高齢になるほど高いことも特徴的だ。
未定企業における事業売却に関する意識では「現在売却を具体的に検討している」と回答した企業が2.9%、「事業を継続させるためなら売却してもよい」と回答した企業が39.4%となっており、約4割の企業で事業売却の可能性を考えていることになる。
事業承継に向けた経営状況・経営課題の把握では、「決定企業」の3.4%、「未定企業」の2.5%が外部機関や専門家などから「すでに支援を受けている」と回答。一方で「決定企業」の15.6%、「未定企業」の19.7%が「将来支援を受けたい」と回答している。
これらを踏まえると中小企業でも事業承継計画の策定や事業承継時の具体的手続き、事業売却先の選定の支援を受けることを希望する企業は多く、一定のニーズがあると考えられる。