個人投資家からの調達額15億円を突破した不動産クラウドファンディングのプロパティプラス(property+)。運営会社であるリビングコーポレーションの代表取締役社長、鈴木英樹さんに新規分野に参入した理由や、不動産クラウドファンディングの課題と可能性を伺いました。

【プロパティプラス(property+)概要】
飯田グループの株式会社リビングコーポレーション(本社:東京都渋谷区)が運営する不動産クラウドファンディングのプラットフォーム。直近のファンドの予定年利回りは3%台前半。
【鈴木英樹さんのプロフィール】
泉証券(現 SMBC日興証券)に十数年間在籍。法人営業やリテール部門、経営企画部門を担当。その後、上場不動産会社の社長秘書を経て、株式会社リビングコーポレーションに入社。現在は同社代表取締役社長。

*利回りなどの情報は2023年4月現在の内容です。最新情報は「プロパティプラス」公式サイト上でご確認ください。
*投資における最終判断はご自身で慎重に行ってください

目次

  1. 拡大しないマーケットにとどまることがリスクである
  2. 今は共同で不動産クラウドファンディングのマーケットを作っていくステージ
  3. 重要なのは、不動産投資の小口化が拡大する流れ

拡大しないマーケットにとどまることがリスクである

後編

--先ほど、リビングコーポレーションが開発する一棟収益マンションなどへのニーズが今の段階では、かなり高いというお話がありました(前編参照)。主力事業が好調であれば、今、不動産クラウドファンディングに参入しなくてもよいという考え方もできますが、いかがでしょうか。

そうですね。富裕層や機関投資家向けに一棟物件を提供するという既存のビジネス形態のままでも、短期から中期の業績では問題ないかもしれません。

しかし、長期的に考えると、日本の人口減少を看過することはできません。不動産マーケットは人口増減の影響を大きく受けるのが原則です。だからこそ、新しい事業の可能性を探っていくことが重要だと考えます。

楽観的に見れば、私たちが開発・販売しているのは、東京・名古屋・福岡などの大都市の物件なので、人口減少の影響は限定的かもしれません。だからといって、人口維持または人口微減の環境の中で既存のビジネスだけを続けていても、現在の2倍、3倍というような大きな成長は見込めないでしょう。

突破口を切り拓いていくには、伸びる市場に投資していくしかありません。その選択肢のひとつが不動産クラウドファンディングだったというわけです。

--とはいえ、御社であれば金融機関から資金調達をすれば、1%台の金利負担で済むのではないでしょうか。不動産クラウドファンディングから資金調達すれば3%以上の金利負担になるわけですよね。この差は大きいと思うのですが。

資金調達という観点ではその通りです。ただ個人投資家の皆様とインターネットで直接つながって相対取引ができる。そのプラットフォームを自社で持つことの意味はとても大きいと思います。ただ、将来的に個人投資家と不動産投資を介在するものがNFT(非代替性トークン)などに変わっていく可能性はありますね。

--未来を見据えた事業展開の一部が、不動産クラウドファンディングとのことでした。ご参考までに、リビングコーポレーションでは未来の成長のために、不動産クラウドファンディング以外にどのようなことに取り組まれていますか。

現在リビングコーポレーションの主力商品は、単身向けの一棟収益マンションですが、 これと並行しながら、ファミリー向けのビジネスラインも開発しています。また、ホテルを開発したり、海外での事業展開を考えたりしています。

今は共同で不動産クラウドファンディングのマーケットを作っていくステージ

--ここから先は 不動産クラウドファンディング業界全体について伺いたいと思います。 現在の業界についてどのような印象を持っていますか。

端的にいえば、黎明期の未成熟なマーケットです。不動産クラウドファンディング事業を立ち上げる業者はたくさんいますが、主力の事業にしようと本気で取り組まれているところは10社にも満たない印象ですね。

不動産クラウドファンディング自体の認知度が低いので、プロモーション費用をかけないと投資家が集まらないファンドもあるようです。費用をかける分、マネタイズできないという理由で撤退する業者も一部出てきています。

ですから今はまだ、事業者同士でライバル視している次元ではないと思います。それぞれの事業者で考え方や立ち位置は違うと思いますが、共同で不動産クラウドファンディングのマーケットを作っていくようなステージではないでしょうか。

--今後、不動産クラウドファンディングのマーケットが拡大するための課題は何でしょうか。

不動産クラウドファンディングの制度そのものを国交省が始めたわけですから、認知度が向上するようにしっかりPRしていただきたいですね。

国交省にできることは多くあると思います。まず、金融商品はNISAの拡充もあり一般投資家が税制メリットを感じやすくなってきました。同様に、不動産クラウドファンディングでも一般投資家が税制メリットを感じられるような制度が必要なのではないでしょうか。もちろん、他の省庁との調整が必要なので、現実化はそう簡単ではないと思いますが。

また、広義では投資用不動産のマーケットを後押しする制度があってもよいかもしれませんね。それが結果的に不動産クラウドファンディングのマーケット拡大を後押しする。例えば、賃貸住宅に住む人の家賃が一部所得から控除されるとか、ファミリー向けの賃貸物件を開発する業者に補助金が出るなどが考えられます。

重要なのは、不動産投資の小口化が拡大する流れ

--不動産クラウドファンディングの将来性についても伺いたいです。

日本には約1,100兆円もの家計金融の現預金がありますね。この莫大な現預金は人口が減っても変わらないものであり、確実にそこにあるものです。それらが運用されずに価値を生み出していない状況はもったいない。その現預金の活用方法のひとつとして不動産クラウドファンディングには可能性があると感じています。

--人口が減っているにもかかわらず、日本の家計金融資産は減らないどころか右肩上がりで増え続けていますね。

最終的に、家計金融の現預金と不動産投資をリンクさせるのが、不動産クラウドファンディングになるかは分かりません。なぜなら、国交省の意向や彼らがどれくらい不動産クラウドファンディングに力を入れるかが未知数だからです。

最終的に形態は変わるかもしれませんが、いずれにしても、不動産投資の小口化のマーケットは伸びる可能性が高いと感じています。

--重要なのは、不動産クラウドファンディングという形態ではなく、不動産投資の小口化が拡大する流れということですね。

その通りです。時代の流れとともに形態が変われば、柔軟に対応していきたいと考えています。

--最後に個人投資家の皆様に、メッセージをお願いします。

先ほどお話したように、プロパティプラスのファンドの利回りは他の不動産クラウドファンディングよりも低めの設定です。そこには、投資家の皆様からお預かりした大切なお金を毀損(きそん)させないという私たちの想いがあることをご理解いただければと思います。

株式、投資信託、REITなどそれぞれの投資商品で流動性やボラティリティが違います。私たちのファンドの特性は、流動性がないものの、安定的な配当金を生みやすいと考えています。分散投資効果を高めるためにも、皆様のポートフォリオの一部にぜひプロパティプラスのファンドを加えていただければと思います。

(提供:YANUSY

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