「家族が増えて今の住宅が手狭になったから、ひとまわり広い家に住み替えたい」など家を売って新しい家の買い換えを検討している人は多いだろう。そこで、買い替えによる売却損益の現在の発生状況などについて今回見ていくことにする。

売却損の発生原因

そもそも、売却損がなぜ発生するのかという原因の一つは、家を購入する際に最近では物件価格の100%に諸経費を含めて住宅ローンが組めるようになったこと。不動産会社はそれを前提に年収から借入限度額の上限を購入可能価格として推奨する。そして住宅ローン残高が減るスピードより、不動産価格の下落のスピードが速く、返済開始から5年たっても元金がほとんど減らないという実情がある。また、不動産は新築購入と同時に中古物件の扱いに変わるということも売却損の発生する原因になっている。

たとえば、4000万円で購入した住宅が、その直後には3000万円台の中古物件に変わり、住宅ローン残高は4000万円のままということに直面する。一方、初公開の価格は仕入計算をした時点より少しアップした価格で公開。さらに「もう少し高く売れるかもしれない」という思惑と最終区画での指し値のバランスを取るため、もう1段階アップして公開するという価格設定の手法もある。つまり最初に購入した場合、2段階アップした価格が、直後に2段階ダウンして中古市場の扱いになる側面がある。

住み替えの8割が損をする 現状とその背景

2014年10月8日に一般社団法人 不動産流通経営協会が発表した『第19回不動産流通業に関する消費者動向調査』によると、マイホームから住み替えた世帯の68.5%が以前の家を売却しており、このうち売却損が発生した世帯は85.2%に達している。この売却損の金額は2011年度から年々増加傾向にあり、1千万円以上の損が発生している世帯は41.8%に及んでいる。また、『3千万以上の損』の高額な売却損が発生した世帯は8.5%となっている。売却損発生世帯は以前の住宅を平均価格3858.3万円で購入し、平均価格2595.7万円で売却している。その差額は前年度から微増し、1262.6万円(前年度1250.7万円)となっている。

自宅を売却して損が発生する世帯は年々増えており、その要因の一つは今年の公示地価発表で大都市圏を中心に地価の上昇が伝えられるまで、バブル崩壊以降の地価は下がり続けてきたという歴史がある。