ドル円相場が大きく動く中、外貨への投資でリターンを得たいのであれば、それぞれの通貨の需給バランスを把握することが肝要だ。ただし、需給の強弱を知るには、ドル円の為替チャートを見ているだけでは十分とは言えない。ドル円相場の動きに関してより深く分析したいなら、ドル指数にも着目すべきだ。

ドル円チャートだけでは「木を見て森を見ず」に

ドル円チャートを見るだけでは不十分 ? 「ドル指数」も見る重要性
(画像=Dilok / stock.adobe.com)

ドル円の為替レートは、そのときどきの需給バランスで決まる。例えば、日本から米国への輸出が好調で、多くの日本企業が代金として受け取ったドルを日本円に換金しようとするとき、「ドルを売って円を買う」動きが進み、円高ドル安の要因となる。

反対に、米国から日本への輸入が増え、支払いに必要なドルを多くの日本企業が調達しようとするとき、「円を売ってドルを買う」動きが進み、円安ドル高の要因となる。

もちろん、需給バランスに影響を与えるのは貿易だけではないため、実際にこのような単純な動きをすることはないが、日々の為替レートはこうした需給関係の変化が影響して変動している。

つまり、今後「円安ドル高」に向かうのか「円高ドル安」に向かうのかを予測するには、「円を売ってドルを買う」動きが強いのか、「ドルを売って円を買う」動きが強いのかを慎重に見極める必要がある。

ただし、需給バランスの分析において、ドルと円の関係をチャートで見ているだけでは十分とはいえない。なぜなら、世界の通貨はドルと円以外にも多様な通貨で構成されており、それぞれに影響し合っているからだ。それでは、需給バランスを分析するためには、何に着目すればよいのだろうか。

ドル指数とは ?

ドルと円の関係をより俯瞰的にとらえるためには、ドル指数 (ドルインデックス) が参考になる。

ドル指数の意味

ドル指数とは、世界の基軸通貨ともいわれるドルと他の複数の国の通貨に関して、ドルの相対的な強さを示すものだ。

ドル指数の上昇はドルが他国通貨に対して買われている (=強い) 傾向を示し、反対に下落はドルが売られている (=弱い) 傾向を意味する。

米連邦準備制度理事会 (FRB) が公表しているドル指数と、インターコンチネンタル取引所 (ICE) が公表しているドル指数 (USDX) が代表的だ。FRBのドル指数は26通貨から構成される一方、ICEのドル指数は構成通貨が6通貨と少なく、構成比率もユーロの割合が過半数と高いなど、それぞれに特徴がある。

ドル指数の算出方法は ?

ドル指数はどのように算出されるのか。ここでは、計算方法を公表し、およそ15秒ごとに算出されているICEのドル指数を使って概要を確認したい。ICEのドル指数を構成している6通貨と構成比率は以下の通りだ (2023年2月17日時点) 。

・ユーロ (EUR) 57.6%
・日本円 (JPY) 13.6%
・英ポンド (GBP) 11.9%
・カナダドル (CAD) 9.1%
・スウェーデンクローナ (SEK) 4.2%
・スイスフラン (CHF) 3.6%

ICEの公表資料によると、ドル指数は以下の計算式で求められる。

USDX = 50.14348112 × EURUSD -0.576 × USDJPY 0.136 × GBPUSD -0.119 × USDCAD 0.091 × USDSEK 0.042 × USDCHF 0.036

最近のドル指数の動きは ?

チャート分析ツールのトレーディングビューを使って、ここ最近のドル指数の動きを確認してみよう。以下のチャートは、2022~2023年 (2023年2月18日時点) に、ICEのドル指数がどのように動いたかを示している。

[図表] 最近のドル指数の動きは ?
出典:TradingView

ドル指数は、2022年は序盤こそ96前後を推移していたが、3月ごろから上昇を始め、4月には節目の100を突破。その後もさらに上昇を続け、9月には114台をマークした。9~10月を境に今度は下落に転じ、2023年2月には100に迫る動きをみせている。

ドル指数が2022年に大きく上昇したのは、FRBが同年に相次いで金利を大幅に引き上げたことが関係している。一般的に、米金利が上昇すると米ドル資産を保有しようとする動きが強まり、自国通貨を売って米ドルを買う取り引きが活発になる。

2022年9~10月ごろからの下落は、FRBの利上げペースが減速するだろうという見方が強まったからだと考えられる。

ドル指数を確認する必要性は ?

為替相場を分析する際に、なぜドル指数にも目を向けた方がよいのか。

ひと口に円高ドル安と言っても、それが「円が買われている」ことによる円高ドル安なのか、「ドルが売られている」ことによる円高ドル安なのかは、ドル円チャートを見ているだけでは判別できない。

そこで、ドル指数に目を向けると、ドルが買われている状態なのか、ドルが売られている状態なのかの見当がつけられる。もし、ドル指数に大きな変化がないにもかかわらず、円高ドル安が進行しているなら、それは円が相対的に買われている可能性を示している。

このように、ドル指数を確認することで、ドル円相場の変動の背景にある動きをより正確に分析できる可能性が高まるのだ。

俯瞰的なマーケット分析が重要

ドル指数はドルが買われているのか売られているのかを示す重要な指標で、ドル円相場を分析する際の一助になるだろう。大切なことは、マーケットをより俯瞰的に見て、投資判断の質を高めていくことだ。

(提供:大和ネクスト銀行


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