ユニクロ柳井社長は円安のメリットはないと言及

自動車・鉄鋼・精密機器などでは、円安による恩恵を受けているが経済界では円安の行方を心配する声も多い。ユニクロの柳井社長は「円安のメリットは全くなく日本全国にとってデメリットばかり」と言及した。ユニクロ自体、海外の売上高が大きいため、円安は業績を押し上げる効果がある。しかし資源を輸入に頼る日本では、仕入れた原材料を加工し付加価値をつけて売るに過ぎない。

進む円安と原材料の高騰で様々な製品の値上げラッシュが続く。消費者の購買力が下がれば企業業績にも影響する。

この円安は悪い円安なのか

1米ドル=126円台となった後の2022年4月15日、鈴木俊一財務相は、現状の円安を「悪い円安と言える」と述べた。資源価格の高騰に伴う輸入物価の上昇に円安が拍車をかけているが、原材料価格の高騰による価格転嫁や賃上げが不十分な状況の中で円安が進んでいるとの見解だ。しかし本当に「悪い円安」なのだろうか。

繰り返しになるが本来円安は、製造・輸出の多い日本経済にとってプラスのはずだ。価格転嫁や賃上げが不十分というのは、日本が1990年代後半から続くデフレから抜け出せていないことが影響している。デフレ圧力が高まって内需が萎縮している状況では、内需に依存する業種はもとより国内外の需要をにらむ自動車業界なども設備投資に慎重にならざるを得ない。

政府の円安けん制発言が飛び出す一方で、黒田日銀総裁は「急速な円安はマイナス」と歩調を合わせながらも「日本経済全体としては円安がプラス」という基本的な立場を譲らない。ブレーキが効かない円安は、日米の金利差が要因であることは周知のとおりだ。しかし円安の良し悪しを問うよりもまずは、デフレから脱却するための抜本的な経済対策が必要なのではないだろうか。

續 恵美子
著:續 恵美子
ファイナンシャルプランナー(CFP®)。生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。こうした経験をもとに、生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などを行う。
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