日産の平均年収は?
最後に日産の平均年収を紹介する。同社の2021年3月31日現在の平均年収は796万5,467円。トヨタに比べると平均年収は62万円程度下がるが、ホンダとは2万円程度と僅差。売上高もホンダの6割程度であるにもかかわらず、平均年齢はホンダよりも低く平均勤続年数も短い。
同社の平均年収は前年に比べると約13万7,000円の低下。冒頭で各社の売上高を見たが、ホンダは前年比-11.4%であるのに対し日産は前年比-20.2%と減少率が大きいにもかかわらず、下げ幅はホンダより小さい。これらのことから自動車業界の平均年収は、売上高や企業規模に必ずしも比例していないことが分かる。
コロナ禍に見る自動車業界のリスク
国税庁の「令和2年度 民間給与実態統計調査」によると2020年度における日本の給与所得者の平均年収は433万円。世界各地で起こったロックダウンや半導体の供給不足に伴う減産で自動車メーカー各社は苦戦を強いられた。2回の大幅減産を余儀なくされたが、自動車大手3社の平均年収は高水準を保っている。
通常、減産は固定費負担の増加で収益を悪化させるが、人件費……つまり給与への影響はないのだろうか。そのカギを握るのは、生産と販売のバランスと考えられる。コロナ禍では、地域バランスの重要性が露見した。コロナ禍の自動車メーカー各社のなかで特に大きな影響を受けたのは、生産地域が集中していて販売の分散度の高いメーカーだ。
少ない生産拠点から世界各地に分散して出荷するということは、物流の距離が長く仕向地が多いということである。コロナ禍の移動制限が長く続く状況ではディーラーへ卸すことができず、既存出荷分が一時的にポートに留め置かれてしまう。その分費用も発生してしまい収益を圧迫するのだ。今回見た大手3社は、販売地域に応じて生産地域を分散させておりバランスがいい。
それが収益および給与への影響を抑えた要因とも考えられる。しかし長く続く減産で需給ひっ迫による価格上昇が長引けば、旺盛な需要を冷やしかねない。今後の各社の調整力に注目したい。