中外製薬株式会社
(画像=中外製薬株式会社)
矢野 嘉行 (やの よしゆき)
中外製薬株式会社 上席執行役員(人事、ESG推進統括)
1986年 中外製薬株式会社入社。営業本部、国際本部、5年の海外駐在を経験したのち、経営企画部マネジャー、調査部長を歴任。
2016年から人事部長となり、2019年に執行役員、2020年に人事統轄部門長、2022年3月から上席執行役員 人事、EHS推進統括、サステナビリティ推進部担当 兼 人事部長を務め、2024年1月から上席執行役員 人事、ESG推進統括(現職)
中外製薬株式会社
中外製薬(本社:東京)は、抗体エンジニアリング技術をはじめとする独自の創薬技術基盤を強みとする、研究開発型の製薬企業です。ロシュ・グループの重要なメンバーであるとともに、東京証券取引所プライム市場の上場企業として、自主独立経営の下、アンメットメディカルニーズを満たす革新的な医薬品の創製に取り組んでいます。中外製薬に関するさらに詳しい情報は中外製薬HP をご覧下さい。

目次

  1. ダイバーシティ経営に対する取り組み
  2. ダイバーシティ経営の取り組みで苦労した点
  3. 取り組みを行う前後の変化や取り組み後の反響
  4. 従業員の研修や育成制度、働き方改革について
  5. 従業員の価値(人的資本)向上に向けて取り組んでいることやこれから取り組もうと思っていること
  6. 理想とする組織像と従業員への期待について

ダイバーシティ経営に対する取り組み

中外製薬株式会社
(画像=中外製薬株式会社)

中外製薬では「革新的な医薬品とサービスの提供を通じて新しい価値を創造し、世界の医療と人々の健康に貢献する」というミッションのもと、ダイバーシティ経営を進めてまいりました。

世界の患者さんへ革新的な医薬品を届けるために、当社ではイノベーションや創造性の追求という考えに価値を置いており、『多様な価値観や専門性から革新は生み出される』ことを共通認識として、ダイバーシティ&インクルージョンを経営の重要課題の1つに置いて取り組んでいます。

当社のダイバーシティ&インクルージョンの取り組みは、2010年に社長をオーナーとしたジェンダーワーキングチームの発足からスタートし、2012年からは、女性、シニア、外国籍社員をはじめとする多様な人財の活躍推進に向け、専任組織としてダイバーシティ推進室を設置し、活動を展開しています。全ての社員は各々の個性や強みを持つことを大前提とし、多様な考え方を持つ全ての社員が能力を存分に発揮できるよう、年齢・属性にかかわらずチャレンジを後押しする⼈事制度や職場環境の構築をしています。

ダイバーシティ経営の取り組みで苦労した点

ジェンダーダイバーシティに取り組み始めた2010年時点では、ライフイベントを理由とした退職者が少なくはなく、性別によらない活躍は、当社においても大きな課題と捉え、下記の3点を目指す姿に設定しました。

① 指導的立場の女性が増え、意思決定の場面で女性も男性も活躍している ② ライフイベントで退職することなく、女性も男性も長く働き続けている ③ 多様性を受け入れる意識が職場に根付き、男女ともに仕事のやりがいが高まり、生活が充実している

これらの目指す姿の実現に向け、女性のキャリア意識醸成・育成、両立支援、組織風土醸成の3つの観点での取り組みを進めてきました。こうした取り組みにより性別に関わらず、ライフイベントにより退職することなく活躍できるようになりました。

また、当社の成長戦略を実現するためには、その原動力となる多様な人財の活躍が不可欠ですが、そのためには、自ら課題をみつけ、周囲を巻き込んで解決していく自律的な社員を増やしていく必要があります。そして、マネジャーはこれまでの直接指示型のマネジメントから自律支援型のマネジメントへの変革が必要となります。そこで、弊社では、部下の成長支援に向け、上司と部下の対話の機会を増やすことを目指して、1on1のプログラムを導入いたしました。これを「Check in(チェックイン)」と呼んでいます。上司と部下の対話は、仕事の話が中心となりがちですが、仕事の話にとどまらず、5C(Career/キャリア、Capability/ケイパビリティ、Connection/コネクション、Contribution/コントリビューション、Condition/コンディション)の観点での対話を推奨しています。これにより、より部下の成長に向けた質の高い対話ができるものと考えています。

取り組みを行う前後の変化や取り組み後の反響

多くの日本企業が同じような悩みを抱えているかと思いますが、ダイバーシティ経営に取り組み始めた当初は女性の管理職やマネジャーの比率も低い状況でした。社長を含めた経営役員、部門長がコミットし、女性のマネジャー比率の向上や、ジェンダーダイバーシティの推進について、繰り返し話し合ってきたことで、現在はジェンダーダイバーシティへの理解が全社的に進んできていると感じています。

また、このような取り組みによる成果が具体的な数値として表れるようになりました。女性の管理職比率やマネジャー比率が年々上昇しており、2023年末のマネジャー比率は17%と、2010年の数%といった状況から大きく進捗しています。今後は、2030年末に女性マネジャー比率を女性社員比率と同水準(推定値38%)にするという目標を掲げ、推進していきます。

従業員の研修や育成制度、働き方改革について

当社では、戦略実現の実行主体は社員であると考えており、社員一人ひとりの活躍が不可欠です。そのためには、自律的に学び・成長する風土醸成が重要と考えています。これまでも、社員の成長を支援する多様な研修プログラム等を提供してきましたが、どちらかと言えば、会社や上司から研修を受けるように促すといった受動的なものが多かったと思います。

自律的な学びや成長を支援していくために、2021年から学びのプラットフォームとして「I-Learning」というラーニングマネジメントシステムを導入しています。これにより、誰でも自分で学習する分野や時間、場所を自由に選んで参加できるようになりました。

従業員の価値(人的資本)向上に向けて取り組んでいることやこれから取り組もうと思っていること

当社は、人的資本向上に向けた取り組みを非常に重視しています。 当社の成長戦略TOP I 2030は、中外製薬グループが2030年までにヘルスケア業界のトップイノベーターになるための成長戦略です。これを達成する最大のカギは、人財です。イノベーションの主体は人であり、社員一人ひとりの価値創造力こそが原動力になるからです。

そのためには、会社の戦略や目標に向かって自律的に考え、行動できる人財を増やす必要があります。そこでTOP I 2030では、社員一人ひとりの成長にフォーカスした「3つの個」というコンセプトを打ち出しました。「個を描く」、「個を磨く」「個が輝く」という3つのコンセプトに基づいて、社員の働きがいを高め、多様な人財の活躍につながる施策の検討、実行を心がけています。

当社ではこれからも成長を続けるために、従来の制度から脱し、社員の主体性や自律を前提とした組織へと変革していく必要があると感じています。日本ではこれまで新卒者を大量に採用し、年功序列や終身雇用制度を通じて育ててきました。しかし、キャリア採用や転職が増え、若い世代の働く価値観や考え方も大きく変わってきています。そのため、時代と共に、働き方を改革していくことも重要だと考えています。

理想とする組織像と従業員への期待について

弊社が目指すのは、社長をはじめとした経営陣と社員が強い信頼関係のもとで互いの期待を共有し合い、挑戦を支援し、多様な個々の発掘・成長・発揮が、個を変え、会社を変え、中外グループ全体の成長となっていくことです。

弊社は製薬企業ですので、最終的に患者さんのもとに薬が届き、少しでも患者さんの健康に貢献したいという強い想いを持ち、仕事に取り組む社員が多くいます。社員がそのような自身の想いと会社や組織の目標に繋がりを感じ重ね合わせていくことで社員がより主体的に考え、行動できるようになると信じています。当社ではそうした強い想いを持った社員一人ひとりを全力でバックアップできるような仕組みや組織をつくっていきたいと考えています。

氏名
矢野 嘉行 (やの よしゆき)
会社名
株式会社中外製薬
役職
上席執行役員(人事、ESG推進統括)