この記事は2024年2月2日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「好業績と割安さを追い風に現実味を増す日経平均の最高値更新」を一部編集し、転載したものです。
2024年の日本株は良好なスタートを切った。年初こそ日経平均株価は下落して始まったものの、1月9日にはおよそ半年ぶりに80年代バブル崩壊後の高値を更新した。その後、急ピッチな上昇が続いて、1月第4週には一時3万7,000円に近づく場面もあった。株高の反動も気になるところだが、幸先の良いスタートで、24年における日経平均株価の史上最高値更新への期待も高まっている。
足元の日本株上昇の背景には、米国株の堅調や為替の円安推移なども追い風となっている。さまざまな複合的な要因があるにせよ、シンプルに解釈するのであれば「好業績と割安さで選べば日本株に行き着く」ということだろう。24年の日本の企業業績は、良好な推移が見込まれている。賃上げによる内需の拡大や在庫調整が進むハイテク企業の復調もあり、業績改善のモメンタムは欧米と比較しても強い。そうした日本企業の好業績への安心感が、株高を支えている。
一方で、バリュエーション面で見た日本株は、依然として割安な状態にある。13年初は、日本(TOPIX)と米国(S&P500)のどちらの予想PER(12カ月先予想ベース)も13倍程度だった。それが、現在では米国の予想PERが約20倍まで上昇しているのに対し、日本の予想PERは14倍を少し超えた水準にとどまっている。日米間の成長期待の差がPERの格差につながっていると考えられるが、変革期を迎えつつある日本の成長期待がそこまで低いことには違和感がある。
14倍台の予想PERが、歴史的に見てどのあたりの水準にあるのかを確認するために、1980年代後半のバブル期以降の推移を確認したい(図表)。図表を見ると、90年代には40~50倍という水準で推移することもしばしば見受けられた。もちろん、これが適正な水準であったとはいえないが、足元の水準もデフレ下で定着した低PERの延長線上にあるように思える。
足元では賃金・物価の好循環や企業の資本効率改善、貯蓄から投資の本格化といった日本の構造改革が進展しており、今後、日本株の予想PERは切り上がっていくことが容易に予想される。好業績と割安さで日本株が選ばれれば、近い将来における日経平均株価の最高値更新は決して夢物語ではない。
大和証券 エクイティ調査部長/壁谷 洋和
週刊金融財政事情 2024年2月6日号