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(画像=森永製菓株式会社)
高橋 正明(たかはし まさあき)
森永製菓株式会社 上席執行役員 
1985年入社。情報システム部にてネットワーク網構築やデータベース設計等を経験。
1997年人事部人事企画担当にて、人事制度設計を中心に労務・厚生全般を担当。
2008年業務推進本部企画室長として、シェアド事業会社設立を推進し、その後シェアドサービス会社の森永ビジネスパートナーに出向。
2012年関連事業部長を経て人事総務部副部長、2016年から人事部長、2022年に上席執行役員に就任。 経営戦略との連動を前提に「会社の意思としての人材育成」と「個人のキャリア自律」の両立を図り、人的資本経営の実現に邁進している。
森永製菓株式会社
1899年創業。国内では、菓子食品事業・冷菓事業・in事業・通販事業、海外では米国事業を中心に、主に食料品製造事業を営む。
「森永製菓グループは、世代を超えて愛されるすこやかな食を創造し続け、世界の人々の笑顔を未来につなぎます」をパーパスに、心と体をすこやかにする食を創造し、誰もが笑顔で過ごせる持続可能な社会の実現に貢献することを目指している。

人的資本経営(ダイバーシティ、従業員エンゲージメントの向上、働き方改革 など)に対するこれまでの取り組み

弊社では、人材を重要な財産と捉え、人に焦点を当てた経営を進めています。そのベースとなるのは、企業理念やパーパス、ビジョンの策定とそれらの従業員への自分事化です。そこで、企業理念を策定するにあたっては、社長と従業員との対話を重ねることで、従業員と経営者の目線を合わせ、一体感を醸成することに重点を置きました。また、制定後も、社長が自ら全国の拠点を回り、約1,700名の従業員と率直な対話を行いながら企業理念を浸透させる取り組みを積極的に進めてきました。こうした地道な活動により、従業員のエンゲージメントを高め、自発的な貢献意欲がさらに喚起されることを期待しています。

加えて、ダイバーシティ経営を推進することで、多様な価値観や背景を持つ人材が活躍できる環境の整備にも注力しています。この一環として、当社では会社が必要とする人材の計画的な育成と、従業員個人のキャリア自律を両立させることを重視しています。具体的には、選抜型研修やサクセッションプランの実現のための育成と、従業員が自らキャリアの主体となり、自己成長を図るための施策を同時に推進することで、2つの側面から人的資本経営を強力に推進しています。

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(画像=若手向けのキャリア研修の様子)

人的資本経営の取り組みで苦労した点と、乗り越えるための施策

先述の従業員のキャリア自律を推進するための取り組みにおいて、当初はいくつかの課題に直面しました。中でも、「当社にとってのキャリア自律とは何か?」を共通認識として浸透させていくことに大きな課題を感じておりました。そこで、2022年度をキャリア自律元年とし、キャリア自律の中核的な考え方として、「プロティアン・キャリア」を導入するとともに、全社でe-ラーニングを展開しました。「プロティアン・キャリア」とは、組織に依存せず、「キャリアは自らが切り拓く」という当事者意識(キャリアオーナーシップ)を持ち、環境変化に応じて変幻自在に自身を変え、学び高めていくキャリア観のことです。その後、2023年度にはコロナが沈静化しつつあることを受け、キャリア自律を支援する上司向けのワークショップを展開しました。これは、従業員が自律したキャリア形成を進めるために、上司がどのようにサポートすべきかを考え、理解を深めることを目的としています。

目下、こうした一連の取り組みを進めていますが、従業員のキャリア自律の浸透を深めている段階であり、今後この考え方を理解し、実践している従業員の割合をさらに増やす必要があると考えています。一般的に、日本ではマジョリティからの理解があることに寄り添う傾向があるため、さまざまな施策を通して、理解度や共感度を高めていくことが加速度的な浸透につながると考えています。

人的資本経営を進める上で、人事部門が果たすべき役割は大きくなっています。当社では、各職場との率直な意見交換により、それぞれが抱える人事課題を的確に把握することと、大局的な視点を持って、経営戦略と連動させた人事戦略を実現することの2点を重視しています。そのためには、経営者と従業員の目線を合わせることが必要です。人事部門では、こうした複眼的な視点を持って、課題を解決するための適切な人事施策を立案し、スピーディーに展開できる人材の育成に注力しています。

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(画像=キャリア自律支援に関する上司向けワークショップの様子)

取り組みを行う前後の変化や取り組み後の反響

こういった人的資本経営の取り組みを行ったことで、いくつかの変化が生まれています。 まず、キャリア自律の一環として、社内公募制度の取り組みを活発化させるとともに、従業員が自分の希望部署や仕事について、より詳細な形で会社に伝えられる仕組みを導入したことで、従業員はキャリアについて積極的かつ主体的に考えるようになりました。これにより、従業員が自らの強みや価値観を棚卸しし、戦略的にキャリア資本を蓄積していく動きが出てきています。

さらに、働き方改革においても、テレワークやフレックスタイム制度、個人別の振替休日制度などを導入したことで、従業員が自身の働き方を自律的かつ柔軟に選択できるようなっています。また、コアタイムを設けないことで、従来よりも育児や家庭を両立しやすくなりました。これらの取り組みにより、従業員は自分のライフスタイルに合わせて、柔軟に働くことができるようになったと考えます。

今後の展望と従業員に対して期待すること

今後の展望としては、これまでの取り組みを一歩ずつ確実に前進させ、進化させることに重点を置いています。具体的には、サクセッションプランを軸とした計画的な人材育成と、従業員のキャリア自律の2点を軸としていきます。これに加えて、採用する従業員の質を高めていくことも重要なテーマです。

従業員には、世代を超えて愛されるすこやかな食を創造し続け、世界の人々の笑顔を未来につなげる、というパーパスの実現を期待しています。この実現のためには、日々の業務を通した継続的な成長に加え、研修や自己啓発の時間も効果的に活用し、自ら考え、主体的に課題を解決する能力を養っていくことを望んでいます。こうした従業員の育成を後押しするために、従業員が悩んだり、不安を感じたときに、安心して相談できる環境の整備にも取り組んでいます。

今後も従業員がやりがいと成長を実感しながら、いきいきと働ける環境を整えていくことが、弊社の目指す基本的な方向性です。

ステークホルダーの皆様へのメッセージ

弊社は、2030年に向けたウェルネスカンパニーへの変革を目指しており、この変革を実現するためには、人材が極めて重要な経営資本であると考えています。この観点から、私たちは従業員一人ひとりがその能力を最大限に発揮できる環境を整えることを目標としています。

私たちが目指すのは、従業員がそれぞれの個性を生かして輝くことによって、お客様に真の価値を提供できる企業を創造することです。この目標を達成するために、さまざまな施策や取り組みを通じて変化に対応できる、失敗を恐れずに果敢に挑戦できる強い人材を育成し、お客様に対して最高の価値を提供することに注力しています。私たちの取り組みが、ステークホルダーの皆様にとって価値あるものとなるよう、日々努力を重ねてまいります。今後とも森永製菓グループへのご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。

氏名
高橋 正明(たかはし まさあき)
会社名
森永製菓株式会社
役職
上席執行役員