サービタイゼーションによる付加価値の創造と競争力の強化

ものやサービスにまつわる、比較的新しいビジネスモデルである「サービタイゼーション」が世界規模で進んでいます。サービタイゼーションを導入することで、ビジネス変革を実現している企業も出てきています。

サービタイゼーションとは具体的にどのようなことを指し、どのような事例があるか、またそのために必要なことは何なのでしょうか。

今回は「サービタイゼーションによる付加価値の創造と競争力の強化」をテーマに、コアコンセプト・テクノロジー(CCT)取締役CTOの田口紀成氏と、CCTのアドバイザーでもある東芝のデジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト 福本勲氏の2人が、ローランド・ベルガーの貝瀬斉氏を招いてウェビナーを開催しました。今回は、その内容を再構成したダイジェストをお届けします。

サービタイゼーションによる付加価値の創造と競争力の強化
貝瀬 斉氏
株式会社ローランド・ベルガー パートナー
横浜国立大学大学院工学研究科修了。完成車メーカーを経てローランド・ベルガーに参画。その後、ベンチャー経営支援会社、外資系コンサルティングファームなどを経て復職。20年以上、モビリティ産業において、完成車メーカー、部品サプライヤー、総合商社、ファンド、官公庁など、多様なクライアントにサービスを提供。未来構想づくり、コアバリュー明確化、中長期事業ロードマップ策定、新規事業創出、事業マネジメントの仕組みづくり、協業の座組み設計と具現化支援、ビジネスデューデリジェンスなど、幅広いテーマを手掛ける。特に、クライアントと密に議論を重ねながら、生活者や社会の視点に基づき、技術を価値やビジネスに昇華するアプローチを大切にしている。
福本 勲氏
株式会社東芝 デジタルイノベーションテクノロジーセンター チーフエバンジェリスト
アルファコンパス代表

1990年3月、早稲田大学大学院修士課程(機械工学)修了。1990年に東芝に入社後、製造業向けSCM、ERP、CRMなどのソリューション事業立ち上げやマーケティングに携わり、現在はインダストリアルIoT、デジタル事業の企画・マーケティング・エバンジェリスト活動などを担うとともに、オウンドメディア「DiGiTAL CONVENTiON」の編集長を務める。また、企業のデジタル化(DX)の支援と推進を行う株式会社コアコンセプト・テクノロジーのアドバイザーも務めている。主な著書に「デジタル・プラットフォーム解体新書」(共著:近代科学社)、「デジタルファースト・ソサエティ」(共著:日刊工業新聞社)、「製造業DX - EU/ドイツに学ぶ最新デジタル戦略」(近代科学社Digital)がある。主なWebコラム連載に、ビジネス+IT/SeizoTrendの「第4次産業革命のビジネス実務論」がある。その他Webコラムなどの執筆や講演など多数。
田口 紀成氏
株式会社コアコンセプト・テクノロジー 取締役CTO兼マーケティング本部長
2002年、明治大学大学院 理工学研究科修了後、株式会社インクス入社。2009年にコアコンセプト・テクノロジーの設立メンバーとして参画し、3D CAD/CAM/CAEシステム開発、IoT/AIプラットフォーム「Orizuru」の企画・開発などDXに関する幅広い開発業務を牽引。2015年に取締役CTOに就任後は、ものづくり系ITエンジニアとして先端システムの企画/開発に従事しながら、データでマーケティング&営業活動する組織/環境構築を推進。
✳︎所属及びプロフィールは2023年12月現在のものです。

目次

  1. グローバルで進むサービタイゼーションの現在地
  2. 消費者向けサービタイゼーションの代表例はテスラ
  3. 日本のものづくり企業が始めるサービタイゼーション
  4. サービタイゼーションを実現する戦略
  5. サービタイゼーションによる付加価値の創造と競争力の強化

グローバルで進むサービタイゼーションの現在地

田口 今回のテーマは、サービタイゼーションです。まずはグローバルで進むサービタイゼーションは現在、どのような状況なのかを貝瀬さんにお話しいただきたいと思います。

貝瀬 辞書では「サービタイゼーション」について、物財を生産しないか、物財と運搬配給を行ったり、あるいは金融・通信・教育・医療など、ものの形を取らないで、商品の生産に必要な役務を提供したりすること、といった説明があります。

福本 物質的なものだけではなく、非物質的なものが含まれているということですね。

貝瀬 今回のテーマであるサービタイゼーションは、ものの形を取った物財の提供だけではなく役務も提供するビジネスモデル、またはそのビジネスモデルへの転換と定義しています。

事例の1つに、Terra Drone社があります。元々はドローンの本体やセンサーを作っている会社で、同社はそれに必要なソフトウェアもセットで提供し、さらには測量や点検作業も行います。橋げたの老朽化などインフラの点検を行っている会社からすると、ドローンのメーカーにサービスとして全部やってもらえるのなら、人を抱えたり安全管理を行ったりするリスクがなくなるというメリットがあります。

福本 社会インフラの保守点検ですと、たとえば、目視でさまざまな異常を発見できるベテラン技術者の方に高圧電線などに登ってもらわなければいけないような場合もあるわけです。こういった危険も伴う作業をサービス化して提供できれば、ニーズはかなりあるかもしれません。

貝瀬 航空機エンジンのロールス・ロイス社は、エンジンを販売するのではなく、エンジンが「正常に稼働する状態」を提供するというモデルに変えました。正常に稼働する状態を提供することで、航空会社にとっては不具合が起きる前にきちんと対処できます。さらに月額で払うお金が常に一定なので、リスクをコントロールできるのです。メーカー側にとっては、販売の際に過度な値引きをせずに済み、キャッシュフローの観点でもメリットがあり、Win-Winが成り立っています。

ローランド・ベルガー 貝瀬氏
「メーカー側にとっては、販売の際に過度な値引きをせずに済み、キャッシュフローの観点でもメリットがあり、Win-Winが成り立っています。」(ローランド・ベルガー 貝瀬氏)

バンドー化学社は、ベルトコンベアなど工場の設備を作っている会社です。従来、年数回のコンベアの点検時はラインを止める必要があったのですが、自動点検装置を開発したことでベルトのたわみ方などの状態を常時モニタリングでき、点検のためにラインを止める必要がなくなりました。

状態に応じて必要十分なメンテをやればよく、過剰メンテが無くなります。さらには、ベルトの状態をつぶさに理解することで、ラインの設計や物の運び方などコンベアの使い方についてもアドバイスもできます。そうなるとお客様にとっては、単なるベルト屋さんではなくて、工場設備にアドバイスをくれる人になりますよね。

福本 エンジンや工場設備などの保全管理を顧客と一体で行うことで、提供側も多くの情報を取ることができます。これらの情報を使って、たとえば、障害が起きたときなどに、その原因を推定できるようになれば、稼働率が高まって顧客満足度の上昇につながり、好循環で双方のビジネスが回るようになります。データが価値に変わっていく瞬間が生まれるのではないでしょうか。

消費者向けサービタイゼーションの代表例はテスラ

貝瀬 顧客側としては結局、お付き合いのある企業を変えたくなくなる、つまり顧客をロックインもできるということですよね。BtoCでもサービタイゼーションが出てきていて、その最たるものがテスラです。

これまでは、乗用車は売った後は機能劣化していくだけだったわけですが、インターネット経由でソフトウェアをアップデートしていくことで、車両に新たな機能をどんどん追加できます。それによって車の価値を維持していこうという考え方になっています。

福本 顧客の運転環境や実際の事故の情報などを収集し、解析し、ソフトウェアの更新に活用していると思うのですが、顧客の利用開始後にソフトウェアの更新で機能が最適化、強化されれば、これによって顧客が車を保有する期間も長くなるとも思います。製品寿命が長くなるとサステナビリティに貢献するはずで、ソフトウェア・デファインド(✳︎)にはこういう価値もあるのでしょうね。

✳︎サーバーやネットワークといったハードウェアを仮想化技術で抽象化し、これらコンピュータリソースをソフトウェアによって操作しようという考え方

貝瀬 はい。だからこそ、最新モデルのインテリアやデザインはどんどんシンプルになっていますよね。ソフトウェアでコントロールしていけばいいので、あとはハードウェアを長く使える、シンプルなものにするという傾向があります。

たとえば、テスラの「フルセルフドライビング」は、「ベーシックオートパイロット」と、もう少し機能強化をした「エンハンストオートパイロット」とがありますが、だいたい月1万4,5000円から、エンハンストのもので月3万円弱です。結構な金額でもありますが、価値のあるものに対してはお金を払う人はいます。これをユーザーが長期間保有すると積み上がっていくので、企業収益が大きくなります。

サービタイゼーションによる付加価値の創造と競争力の強化

簡易試算すると、だいたい2,000億円から3,000億円の営業利益が、サブスクリプションからもたらされているとみられます。テスラの中で2割ぐらいがフルセルフドライビング搭載車で、開発費はハードウェアがない分そこまで大きくなく、原材料費も少ないという中で収益性も高いです。これはメーカーにとって、経営上のインパクトが非常に大きいです。こういうお金の払い方に顧客は満足しないという指摘も一部にはありますが、実際にテスラのユーザーのうち、直近で6割から7割が買い替え時もテスラを選んでいます。非常に満足しているのがわかります。

福本 ものだけ売っているという意識だと、この機能がどうかとか機能の価値がいくらだといった考え方になってしまいがちです。しかしサービスを組み合わせることで、顧客の経験価値をどれだけ高められるのか、そしてこの経験価値に対して顧客はお金をいくら払うのかという方向に変わっていくので、LTV(顧客生涯価値)に対する考え方が大きく変わりますね。

日本のものづくり企業が始めるサービタイゼーション

田口 日本のものづくり企業では、どんな事例があるのでしょうか。

貝瀬 日本の高品質なものづくり企業は実は、サービタイゼーションにおいても海外の企業以上にメリットを享受できるのではと思っています。企業側がアセットを持ちながらサービスを提供していく場合、品質が良く故障が少ないと、お客様に高い金額をチャージできます。

壊れなければメンテナンスのコストはあまりかかりませんから、その差分は企業側の儲けとなります。品質が高くないものを作っている企業にとってはコスト負担が大きくなります。高品質なものづくり企業だからこそ、サービタイゼーションを推進するメリットが大きくなります。

たとえば農機メーカーのヤンマーは、農業バリューチェーンを一貫して支援することを掲げています。農家さんは作物を作るだけではなく、農業経営の観点で数字も見なければならないし、管理も必要です。そういった業務を全部、まるっと面倒を見ることが価値であるという考え方です。この中には、ドローンを飛ばして圃場の育成状況を高解像で把握して、施肥のタイミングなどのアドバイスを含めたサービスもあります。コニカミノルタと組んで行っている事業です。

サービタイゼーションによる付加価値の創造と競争力の強化

田口 こうなるともう、農機具の製造販売ではなく、どうやって農業を営めばいいかという経営コンサルみたいなことも一部兼ねて、ビジネスに変えていっていますね。

福本 農家さんからみるとフルサービスで色々なものを提供してくれるので、これもやっぱり、離れられないですよね。

貝瀬 そうなのです。もう1つは、コマツのスマートコンストラクションです。建設現場には建機のほかに働く人がいて資材があり、さらに資材を運び込む車両もあります。これらを一元管理できるLANDLOG(ランドログ)が提供されています。

サービタイゼーションによる付加価値の創造と競争力の強化

福本 ランドログの中心には、建設現場3Dデータがあります。さまざまな企業がここに参加するときに、それぞれ自社の製品やサービスを提供すればいいのだと思っていると、上手くいかないのではないかと思います。提供するものをどういうサービスや価値に転換できるのだろうと考えながら、皆さんが寄り集まって提供していくことが大切なのではないでしょうか。

貝瀬 本当にその通りで、それぞれの役割分担はもちろんあるにせよ、その上にある「工事現場を皆で最適化したいよね」というシンプルな思いを、どれだけ共有できるかがカギになります。一部の人が我田引水に色気を出し始めると、おそらく全体が上手く機能しなくなるでしょう。

この事業は元来、コマツ単体でIoTの基盤を作り比較的上手く立ち上がってきていたものの、顧客である工事現場にとっては、競合他社の建機も含めて全体で見ていかないと結局、ボトルネックが解消されません。そこで、他社の建機も含めて全体を見渡せるような形に、サービスを昇華させていったわけですね。

そうなると、コマツ100%子会社でやっていくのは難しい面があり、関連するNTTドコモやSAPジャパンが新たに資本を注入して、ランドログ社が設立されました。単体でやっていて比較的上手く立ち上がってきた事業に、後から他の資本を呼び込むのはなかなか普通ではやりづらいです。オープン化していくことの有用性を認識していると、囲い込む方がむしろ悪だよねという考え方があったのでしょう。こういう考え方をきちんと共有できるかどうかが結構、成否を分けている気がします。

田口 実際にサービタイゼーションを進めるときの課題は何でしょうか。

福本 どこをオープンにしてどこをクローズにするのかという、オープン&クローズ戦略が とても大事です。ただ、日本企業は全体がクローズで、クローズ&クローズ的な企業がとても多いと感じます。外部と連携するときにまず、相手のためにどのようなサービスや価値が提供できるのかを、顧客や市場の視点から考えることが必要です。

基本はオープンで、でも当社のコアコンピタンスがこれだから、ここだけはどうしてもクローズにしたい、という方向に変わっていかないといけません。今は考えが違うという現状をお互いに認識した上で、「でも、近い将来、一緒にやれたらいいね。そのためにどうしたらいいだろうか」という会話を続けることも必要になるでしょうね。

サービタイゼーションを実現する戦略

田口 コマツの動きは理想的ですが、どうしても一企業がどこかのポイントでオープンに切り替えるには、とても広い心が必要だとは思います。サービタイゼーションをどうやって実行したら、上手くいくのでしょうか。

貝瀬 ものを通じて価値を提供し、生涯を通じて積み上げていくことが大切です。企業側から見ると、いかにライフタイムを通じてのファンを増やしていくのかという観点かと思います。

サービタイゼーションによる付加価値の創造と競争力の強化

マズローの欲求段階説で示されているように、自己実現欲求の部分がどんどん高まっていく中で、この部分はより主観的で多様性があるので、提供する側からするとスケーラブルにやっていくことが難しくなってきます。だからこそ、長期的な関係やデータを駆使していくことがより必要です。こうした部分は、時代とともにシフトしてきていますよね。生活者の欲求が変化している部分に、きちんとサービタイゼーションも歩調を合わせていくことは、非常に重要です。

生活者起点で考えるなどと、わざわざ言われなくても分かっているという声もあるかもしれません。でも、いざ社内で事業の議論をしようとなると、「教育産業が…」「交通産業で…」「医療・介護で…」となってしまいがちです。たとえば、生活者は教育を受けたいわけではなくて学習したいのですよね。医療サービスを受けたいわけではなくて、健康になりたいのです。このように、個々人が何を目的にしているのかを主語にして、物事を考えることができるかどうかが、意外と重要なポイントです。

サービタイゼーションによる付加価値の創造と競争力の強化

自動車部品のサプライヤーで、自動運転に参入しているコンチネンタル社のデゲンハートCEO(2020年退任)に質問したことがあります。これまでBtoBの部品を売るビジネスをやってきましたが、どのようにしてサービスビジネスにおいて競争力を作っていくのかを尋ねたところ、「ウチには10万人の生活者がいるんだよ」と回答をいただきました。

社員は生活者でもあるのだから、その人たちの知恵を多分に活かしていけば、サービスの知恵は社内にすでにあるのだと言います。ただし、「いや、我々自動運転の開発部門としては…」などと組織の「背番号」があると、そこから脱却できなくなってしまうので、背番号をいかに捨てて、生活者目線で議論ができるか、そういう土壌を作ることができるかが、マネジメントとしての宿題があるとのことでした。

福本 文化や風土づくりは、確かに経営トップがやるべきことですね。

貝瀬 そうですよね。どうしたら思考回路や議論の流れを変えていくことができるのかという点も含めた文化は結構、重要です。新しいサービタイゼーションのビジネスを考えるといっても、なかなかアイデアは出てこないという声もあるでしょう。

一見、違う業界のビジネスモデルはどうしても線を引きがちですが、それを少し引いてみて、「違う世界の話だけれど、何が本質的なのだろう」と抽象化して、エッセンスを抽出することで、自分のアイデアにどう適用できるかと考えていくことが大切です。具体と抽象を行ったり来たりする頭の使い方が、1つのヒントになるかもしれません。

サービタイゼーションによる付加価値の創造と競争力の強化

福本 慣れていない人は、ファクトからの抽象化が結構難しいのかもしれません。

貝瀬 そうなのですが、才能はさして要らないと思います。色々なことにとにかく興味を持ってみるというのでもいいです。実は私、40歳を超えてから生まれて初めて、アイドルに興味を持つようになりました。乃木坂46のファンになってコンサートにも行きましたが、組織論がとても面白いなと思うのですよ。

田口 その「ファクト」がどのように抽象化をされるのでしょう。

貝瀬 たとえば、西野七瀬ちゃんというエースが抜けましたが、次なる3〜4期生が組織として、上手く世代交代を果たしてきました。この事例は、「うちの部署でエース人材が転職してしまったけれど、どうやってこの組織をマネージしていくか」に置き換えて考えられます。

福本 乃木坂46のコンサートに行って、それを考えている人はあまりいないのでは(笑)。

貝瀬 そうですね。ちょっと違うアングルで捉えてみるとか、自分の解釈次第だという点に気づいていただければと思います。1人の人間の中で具体と抽象を行ったり来たりするだけでなく、組織で色々な人が行ったり来たりすると、アイデアとしても双発的になっていきます。組織にこういう仕掛けがあるといいですね。

田口 私はKoto Onlineで企業にインタビューをやっていまして、その中で行き着く先は、企業文化なのだなと感じています。コミュニケーションや経験をしやすい企業文化だと、結果的にいい方向に向かってくのだなと今、抽象化して考えてみました。さまざまな企業に行って、それはもう、どこかでお返ししなければと思うぐらい、いい企業の条件が浮かび上がってきているのです。

文化を作ると土台が整うので、何をやってもだいたいは成功するのではと思うくらい、成功している企業の文化は理解したほうがいいです 。サービタイゼーションを実現するために、メーカーとしては何をすべきでしょうか。

コアコンセプト・テクノロジー 田口氏
「文化を作ると土台が整うので、何をやってもだいたいは成功するのではと思うくらい、成功している企業の文化は理解した方がいいです 。」「コアコンセプト・テクノロジー 田口氏」

福本 顧客や市場は欲しいものを、明文化できません。なぜならば、今世の中にないものをイメージできないからです。今、世の中にないものを顧客や市場の立場に立ってイメージするために、抽象化がとても大事です。そしてそれを具現化していくことの繰り返しが必要なのではないでしょうか。

田口 そうですね。コミュニケーションを通して経験を積み重ねて、具体と抽象の行ったり来たりを繰り返せる環境が必要になっていくのでしょうね。次世代へのメッセージをお願いします。

福本 まず、顧客の製品やサービスの使い方を理解するべきで、それに応じた設計が大切です。サービタイゼーションによって使い始めてからの情報を取れるというメリットが、提供側にもあります。それを実現するのが、顧客とデジタルでつながっていく仕組みです。

東芝 福本氏
「サービタイゼーションによって使い始めてからの情報を取れるというメリットが、提供側にもあります。それを実現するのが、顧客とデジタルでつながっていく仕組みです。」(東芝 福本氏)

その上でより大事なのは、テスラのソフトウェア・デファインドに見られるように、ソフトウェアやハードウェアの交換がとても簡単になっていることです。そうすることで結果的に長く使えるようになるので、その先を見据える必要があります。

これを実現できているのが、マルチサイドプラットフォームです。UberやGoogleもそうですね。アセットを持つという、スケールしない領域で投資をしないという選択をしているわけです。Uberのように売り手と買い手、広告主などを結びつけるようなビジネスが今後、ますます発展していくことが、サービタイゼーションの1つの側面なのではないでしょうか。

貝瀬 サービタイゼーションをどう作るかとは、単なるお金の取り方の違いではないですよね。私からはまず、「ドラえもん」を改めて読みましょうとお伝えしたいですね。

田口 飛びましたね(笑)。

貝瀬 「こんなことができたらいいな」がサービタイゼーションを考えていく上での起点だからです。最初から小難しく「どうビジネスに仕立て上げるか」とか「この弊社の強みを使ってどうのこうの…」と考えていると、主語が違ってしまいますよね。

そう考えると、ドラえもんは今見ても、色々とインサイトがあるなと思います。もう1つは、イソップ童話の「北風と太陽」です。サービータイゼーションを考えるにあたっては、長期的な関係に立ち、顧客サイドにどれだけ寄り添えるかを、まずは起点にするのです。それに、仕事としてやるよりも、楽しいことを仕事の中で考える、楽しむことをとにかく大切にするのが、実はサービータイゼーションを具現化していく上で重要です。

田口 貴重なお話をありがとうございました。

【関連リンク】
株式会社ローランド・ベルガー https://rolandberger.tokyo/
株式会社東芝 https://www.global.toshiba/jp/top.html
株式会社コアコンセプト・テクノロジー https://www.cct-inc.co.jp/

(提供:Koto Online