この記事は2024年3月29日にSBI証券で公開された「プロ投資家も注目!?「ROE」改善期待の銘柄は?」を一部編集し、転載したものです。
目次
プロ投資家も注目!?「ROE」改善期待の銘柄は?
国や多くの企業が会計年度としている2024年3月期の相場が終わりました。3月末(3/28時点)の日経平均株価は前年の3月末比で43.2%の上昇となり、21年3月期の同54.2%上昇以来の高い年度上昇率を記録しました。
大幅高した株式相場の背景には無論、米国経済・株式市場の堅調や、円安の進展、インバウンド需要の回復、生成AI(人工知能)への期待・半導体市場の回復等の要因があげられると考えられます。しかし、同様またはそれ以上に重要な点は、海外からみて日本が投資対象として復活したと考えられる点です。米中対立を契機に、中国に向いていた投資が、日本にも向かってきたことが大きいと考えられます。TSMCが熊本に新半導体工場を建てたことは、その象徴例でしょう。
東京株式市場においては、バフェット氏による商社株買いや、東証による上場企業への資本政策改善要請等により、日本株への再評価が進んだことが大きいと考えられます。新NISAの開始による個人マネーの流入により株価上昇が加速。日経平均株価は1~3月だけでも20%超の上昇(3/28まで)を記録しました。
今後も日本株の上昇が続くためには「日本が変わってきた」という期待を、内外の投資家が抱き続けられることが必要であると考えられます。その意味で、日本経済新聞の報道(3/5)の通り、24年3月期における上場企業のROE(株主資本利益率)が前期比0.5ポイント上昇の9.7%に向上しているのであれば「まずは上々」と言えるのかもしれません。
ご存知の通り、「ROE」は、会社の株主資本(純資産)に対し何%を純利益として稼ぎ出しているかを示しています。投資家の投資資金をいかに効率よく利益に結びつけているのかを示しています。数年前までは8%程度が基準とされてきましたが、上述した通り、9%台が基準になってきたようです。
今回の「日本株投資戦略」では、足元のROEは市場の基準に届いていないものの、今期・来期には基準以上になってくると、市場が予想している銘柄を抽出すべく、以下のスクリーニングを行ってみました。
(1)東証プライム市場に上場
(2)EPS(1株利益)を予想するアナリストが3名以上
(3)直近の実績ROE(Bloomberg調べ)が8%未満
(4)今期の市場予想ROE(Bloombergコンセンサス)が8%超
(5)来期の市場予想ROE(同)が10%超
(6)今期・来期の市場予想営業増益率(同)が10%超
(7)信用取引上の規制銘柄、注意喚起、日々公表銘柄に該当しない(3/28時点)
図表の銘柄は上記の全条件を満たしています。
掲載は、(5)にある来期市場予想ROEが高い順です。
掲載銘柄の一部を解説!
東京応化工業(4186)~半導体の微細化を支えるグローバルトップ
■半導体用フォトレジストで世界トップ
当社は半導体製造時、シリコンウェハに塗布して使われるフォトレジストの大手企業です。周辺分野として高純度化学薬品にも展開しています。
フォトレジストは、ポリマー(高分子)、感光材、溶剤を成分とする化学薬剤です。その性能の良し悪しで半導体の微細化の程度が左右される重要な材料です。
当社は、市場規模25億ドル(2022年 約3,775億円)と言われるこの分野で世界シェア26%(22年・会社資料より)を有するトップ企業です。最先端の微細加工に必要で今後高い成長が見込まれるEUV(極紫外線)向けでは38%(同)のシェアを有しています。
ライバルはトップを争うJSR(4185)の他、信越化学(4063)、住友化学(4005)、富士フィルム(4901)で、日本企業の合計シェアは約9割に上るといわれており、日本企業が強い分野になっています。
業績は半導体市況の影響を受けやすくなっています。同市況の低迷もあり、2/13(火)に発表された23.12期決算は売上1,622億円(前期比7.5%減)、営業利益227億円(同24.8%減)と減収減益。会社公表ベースのROEは7.2%と、一般的に基準と考えられてきた8%を下回りました。しかし、前10~12月期だけみれば、営業減益率(前年同期比)は3.4%まで縮小し、業績は底入れの様相を呈しています。
■2030年度にROE13%が目標
24.12期の会社計画では、売上高1,792億円(前期比10%増)、営業利益268億円(同18%増)と増収増益が見込まれています。生成AIの本格的な普及で各種最終製品の需要増加が見込まれ、顧客製品在庫水準が低下し、半導体市況が回復すると会社側は見ています。
DOE(純資産配当率)は4%をメドにしています。また、23.12末付けで1対3の株式分割を行っています。1株配当は58円が会社予想で、前期から実質2円の増配が見込まれています。
会社側は決算発表と同時に中期計画の上方修正を発表しています。2030年度には売上高3,500億円(修正前は2,000億円)、EBITDA(営業利益+減価償却費+支払利息)770億円(同450億円)、ROE13%(同10%以上)を目指すとしています。実現に向け、新規事業への進出のみならず、M&Aも積極化する方針です。
▽日足チャート(6カ月)
*データは2024/3/29(日足)10:00時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽業績推移(百万円)
※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
トクヤマ (4043)~エレクトロニクス分野で世界高シェア製品も
■総合化学メーカー。エレクトロニクス分野で世界高シェア製品も
総合化学メーカー。1918年、山口県・徳山町(現:周南市)で「日本曹達工業株式会社」として設立されました。
売上高構成比(23.3期)は、化成品33%、セメント18%、電子材料26%、ライフサイエンス10%、環境事業2%、その他11%です。最も大きな割合を占める化成品事業では、国内3位のシェアを誇る苛性ソーダ(薬品や日用品の製造等に使用)、国内製造only1のソーダ灰(洗剤等に使用)を取り扱っています(SBI証券推定)。
エレクトロニクス分野でも、複数の高シェア商品を展開。最先端半導体ウエハに使用される多結晶シリコンは世界シェアの30%、「熱を逃がす」放熱材料として半導体等で使用される窒化アルミニウムは世界シェアNo.1(75%)等があります(同)。 は会社発表数値。
中期経営経営計画2025では、詰め物など歯科器材などを扱う「ライフサイエンス」、半導体関連製品を扱う「電子材料」、「環境」の3つを成長事業と定めています。23.3期末時点で、全売上高に占める3事業の割合は、38%です。会社目標は25.3期で同50%以上、30.3期で同60%以上を目標として掲げています。
■下方修正実施も、約3年ぶり高値水準
今期3Q(23.3‐12期)累計の業績は売上高2,502億円(前年同期比4%減)、営業利益169億円(同28%増)です。半導体市場の減速により関連製品の販売が軟調でしたが、セメントや化学品の価格上昇が利益を押し上げました。
同決算発表では、売上高・各利益項目の通期計画の下方修正を実施。半導体市況の低迷を要因に挙げました。同発表翌日は、株価は5%超下落。その後、世界的な半導体株・関連株の盛上がりに伴い3年ぶりの高値水準まで回復。PBRが未だ1倍に満たず(3/28時点)、割安感のある銘柄として選好された面もありそうです。
半導体市況では、メモリー・ロジックの低迷感が底打ちし、2024年度から回復する兆しがあるといわれています。一方、注意点は同社が高シェアを占める多結晶シリコンは、市場回復の速度が遅めになると会社側はイメージしていることです。
また、韓国大手のOCI社と、前述の半導体ウエハ向け多結晶シリコンの共同生産が2026年から開始予定です。
▽週足チャート(3年)
データは2024/3/29(週足)10:00時点。
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
▽業績推移(百万円)
※当社Webサイトの業績表示ツールをもとに、SBI証券が作成。
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。