この記事は2024年4月12日にSBI証券で公開された「決算発表シーズン接近!自社株買いも期待できる?割安銘柄」を一部編集し、転載したものです。

決算発表シーズン接近!自社株買いも期待できる?割安銘柄
(画像=SBI証券)

目次

  1. 決算発表シーズン接近!自社株買いも期待できる?割安銘柄
  2. 掲載銘柄を解説!
    1. ■ほくほくフィナンシャルグループ(8377)
    2. ■群馬銀行(8334)
    3. ■クレハ(4023)
    4. ■コメリ (8218)
    5. ■長瀬産業(8012)
    6. ■エイチ・ツー・オー リテイリング (8242)
    7. ■NIPPON EXPRESSホールディングス (9147)
    8. ■アルフレッサホールディングス (2784)
    9. ■上組(9364)
    10. ■ケーズホールディングス (8282)

決算発表シーズン接近!自社株買いも期待できる?割安銘柄

日経平均は足元、上昇一服となっています。3/22(金)取引時間中には史上最高値41,087円を付けましたが、4/5(金)には38,774円まで下げる場面がありました。米国の利下げ観測が後退し、同国株価も上昇一服となっていることが要因です。東京市場が年度替わりとなり、機関投資家による期初の益出し売りが多かったことも下げを加速させました。テクニカル的には当面の強弱感を示唆する25日移動平均自体の上昇も一服し、株価はもみ合いとなりやすくなっています。

現在の株価は次の上昇局面に備え、好材料と悪材料を吟味している局面なのではないでしょうか。好材料のひとつは、株価が割安な企業に対し東証が改善対策を要請したのを機に、資本政策を見直す企業が増え「日本企業は変わる」との期待が高まったことだとみられます。

これまで、海外投資家が日本企業に抱いてきた大きな不満のひとつは「現預金を多くため込んでいるものの、有効に活用していない」という点であったとみられます。結果としてROE(株主資本利益率)の低さが、問題視されてきました。そのひとつの解決策として、配当や自社株買いが有効だと考えられてきました。これを受け最近は、自社株買いを積極的に活用する企業が増えているようです。

自社株買いの実施は、企業の資本政策に対する意識の高さを示し、実際にROEを高める要因となります。さらに需給の引き締まりを通して、その会社の株価を押し上げるケースが多いとみられます。例年、3月決算企業の決算発表が実施される4月下旬頃から5月にかけ、自社株買いを発表する企業が増える傾向があります。決算発表を控えたこの時期、「自社株買いをしそうな会社」をチェックしておくことは、投資戦略的にも重要ではないでしょうか。

今回の「日本株投資戦略」は、決算発表シーズン(4/20~5/20頃)に「自社株買い」を発表しても不思議ではないと考えられる銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。

まず、以下のスクリーニングにより11銘柄抽出しました。

(1)東証上場銘柄
(2)時価総額が1,000億円以上
(3)2023年4/20~5/20に自社株買い決議の発表を行った経緯のある企業
(4)市場予想PER(Bloombergコンセンサス)が17倍(日経平均並み)未満・・・日経平均の予想PER(4/9)は17.1倍
(5)PBR(株価純資産倍率)が1倍(解散価値)未満
(6)2024年以降に自社株買いを実施していないこと
(7)ROEが5%以上9%未満

図表の銘柄は上記(1)~(7)のすべてを満たしています。掲載はPBRの低い順になっています。

表現を変えれば「自社株買いも期待できる低PBRランキング」と表現できそうです。

3/28(木)には上記の(6)を除く全条件を満たしたフジ・メディア・ホールディングス(4676)が発行済み株式数(自己株式を除く)の4.6%に相当する自社株買い計画(24年度中に実施)を発表し、その後株価は上昇しました。

決算発表シーズン接近!自社株買いも期待できる?割安銘柄 決算発表シーズン接近!自社株買いも期待できる?割安銘柄
(画像=SBI証券)

掲載銘柄を解説!

■ほくほくフィナンシャルグループ(8377)

北陸銀行と北海道銀行を中核とする金融グループです。PBRの構成要素であるROE・PERが地方銀行で中・下位であることを自己分析し、成長戦略と資本戦略により収益性・成長期待を高める方針です。23.3期の決算発表時に自社株買い40億円を発表し、実施。24.3期の総還元性向は87%の予想です。PBR・ROEはまだ低く、自社株買いが今後も発表される可能性もありそうです。

■群馬銀行(8334)

群馬県を中心に埼玉県・栃木県等にも展開する地方銀行です。安定的配当と自社株買いを合計した株主還元率は、親会社株主に帰属する当期純利益の40%とする方針です。23.3期の決算発表とともに自社株買い計画を発表しました。さらにの昨年11月の24.3期2Q決算発表時にも自社株買い計画を発表するなど、自社株買いを積極的に活用しています。

■クレハ(4023)

「クレラップ」で知られる中堅化学メーカーです。23.3期の決算発表時に取得株式数120万株、取得金額100億円を上限とする自社株買いを発表し、実施済みです。自己資本比率60%(24.3期3Q末67%)をメドに負債も活用する方針。配当性向30%以上、総還元性向50%以上の方針で、26.3期までの3年間で自社株買い200億円程度を実施する方針です。

■コメリ (8218)

農村地域をターゲットとしたホームセンターを展開。「農家のコンビニ」とも称されています。中計で自社株買いの機動的な実施を基本方針の一つに掲げており、直近では22年と23年に実施しました。配当方針は安定的・継続的に向上させることを基本とし、24.3期は7期連続での増配実施予定です。

■長瀬産業(8012)

化学系の専門商社です。継続的な増配と機動的な自己株式の取得を株主還元方針とし、2021年からは毎年自社株買いを実施してきた実績を有します。また、配当実績も24.3期で14期連続で増配を実施する見込みです。また、PBR1倍割れ(参考:4/11時点での同社PBRは0.76倍)に対する解消方法の一つとして、株主還元の充実を掲げています。

■エイチ・ツー・オー リテイリング (8242)

関西を中心に小売事業を展開。「阪急百貨店」・「阪神百貨店」等の百貨店や、「イズミヤ」・「阪急オアシス」等のスーパーや商業施設などを運営しています。22年と23年には連続で自社株買いを行った実績があります。業績を勘案しながら安定的な利益還元を配当政策の基本方針としており、24.3期は最終増益の見通しに伴い1株当たりの年間配当が25円(23.3期)→28円になる予定です。

■NIPPON EXPRESSホールディングス (9147)

日本最大級の総合物流企業。かつては「ペリカン便」で個人向け商品を展開していましたが、2009年に事業を譲渡。現在のメインは企業間物流(BtoB)です。24.3期が最終年度の中計では、総還元性向は50%以上を掲げており、自社株買いは19年から毎年実施されています。ROEの向上を目指す手段の一つに、自己資本のコントロールのための株主還元を挙げています。

■アルフレッサホールディングス (2784)

医療用医薬品卸で売上No.1の企業です(会社HPより)。株主に対する利益の還元を重要政策の一つに掲げており、連結純資産配当率(DOE)2.4%が配当政策の基本方針です。自社株買いは21年から毎年実施されています。配当に関しても、24.3期は8期連続での増配が実施される予定です。

■上組(9364)

神戸に本社を置く、港湾総合運送の最大手です。全世界30カ所に物流拠点を有しています。23.3期‐25.3期の中計では、総額300億円規模の自社株買いを目標に掲げています。4/11(木)時点で240億円弱が実施済みです。さらに、発行済み株式の5%超過分は消却の方針も示しています。

■ケーズホールディングス (8282)

家電量販店の大手で、郊外大型店を中心とした店舗展開や現金値引きが特徴です。巣ごもり需要の反動や、店舗で使用する電気代などの高騰で軟調気味な業績が続いています。総還元性向80%を目標に、PBR1倍割れの解消に取り組んでおり(4/11時点で0.95倍)、2007年から毎年自社株買いが実施されています。全店で利用可能な1,000円分の優待券が、株数や継続保有期間に応じて配布されます。

▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数