総括
FX「G7サミット、FOMC、日銀、欧州議会、南アGNU、メキシコ強権?」
ドル円=154-159、ユーロ円=166-171、ユーロドル=1.05-1.10
通貨ごとの注目ポイント
*円「通貨最下位(最下位)、株価3位(3位)、日銀会合による市場の反応は短期。トレンドは貿易と長期資本がつくる」
(介入を受け入れる米国の寛容さがいつまで続くか。介入の効果は無きにしも非ず)
円は年間では依然最弱通貨だが、4月29日の介入後は5位、5月は8位、6月は2位でスタートと、円買い介入の効果がまったくないわけではない。9.8兆円という介入額はちょうど今年の外貨投信残高の増加と貿易赤字の合計金額だ。金額としては、見合っているが、昔の介入のように小出しにせず、一気にやった。ただイエレン米財務長官が「介入は稀に行うべきだ」発言しているように、頻繁にやるより、1回で大口でやったほうがG7の介入ルールに近づくのだろう。G7では介入の金額については明記されていない。しかし少なからず米国市場にも影響しているので、米国はよく許容してくれているものだ。日本が逆の立場だと、大騒ぎとなるだろう。
(日銀総裁=物価の基調は2%に達していない。国債買い入れは減額示唆)
金融政策決定会合を前に日銀植田総裁は、物価安定目標の実現に向けては、人々が2%の物価上昇が続くと考えるようになる必要があるとしたうえで、「まだ2%に達していない。さまざまなインフレ予想の指標を見ると少し上昇してきているが、まだ2%に達しておらず、少し距離がある。これが2%で定着することで現実のインフレ率も2%で持続的に推移することになる」と述べた。
国債の買い入れの方針については、「3月の金融政策の枠組み変更のあとの、金融市場の状況を確認しているところで、今後、大規模な金融緩和の出口戦略を進めていく中で減額することが適当だと考えている」と述べた。
(ドル円需給と介入の関係)
1月から5月中旬までの貿易収支は、約3.5兆円の赤字で22年、23年の約半分。一方、新NISAで話題となっているオルカンを含めた外貨投信残高は1-4月で12兆円増加している。為替の円安や海外の資産高を割り引いても8-9兆円の円売りが出ているのではと推測する。貿易赤字と合計で約12兆円のネット円売りが出ている。これに対しての介入額が9.8兆円というのは合理的だ。
(日銀金融正常化とドル円)
日銀が日本経済の回復を見ながら今後、国債買い入れ額減少や利上げを行うだろう。ただドル円相場を決めているのは長期的に貿易収支だ。それと、長期的な資本の動き。投機的な動きは一時的に終わる。投機筋は中長期的な需給には影響を与えない。今後も、貿易動向と中長期的な資本の動きを追っていきたい。
(データ為替、繰り返しですが、10日ごとのドル円の動きのデータ)
昨年11月から過去の10日ごとのドル円のデータから、今後の10日ごとの動きを予測している。強くデータがブレた時だけ取り上げているが、11月から取り上げた11回すべてエータ通りとなっている。5月は「下げ」、「上げ」「上げ」であった。 6月は上中旬はクセがない。下旬だけがドル上げだ。
*米ドル「通貨首位(3位)、株価(NYダウ)14位(13位)、年間首位奪回。5月消費者物価とFOMCが同日発表、雇用統計の余韻が残るが油断大敵」
(ドルは年間首位奪回)
日銀の円買い介入もあり5月のドルは12通貨中11位と弱く、年間でも首位の座をポンドに譲ったが、6月第一週は週末の米雇用統計で非農業部門雇用者数と賃金の伸びが予想を上回ったことを受け上昇、年間首位を奪回した。米10年国債は4.435%へ上昇、株価はNYダウは年初来2.94%高と冴えないが、ナスダックは14.13%高、S&Pは12.13%高と伸び日経平均15.6%高に迫ってきた。
(5月消費者物価とFOMCが同日に、雇用統計の余韻が残るが油断大敵)
5月は1QのGDPなど弱い指標が多かったが、先週末の米雇用統計改善で、一気に空気が変わり興奮冷めやらぬまま6月12日の5月消費者物価とFOMCの同日発表を迎える。何が出るかわからない米国指標なので油断は出来ない。5月消費者物価は3.4%の予想(前月も3.4%)、コア予想は3.5%(同3.6%)。クリーブランド連銀のCPIナウは3.36%、コアは3.55%。
6月のFOMCでは政策金利据え置きが大勢を占めている。 金利先物市場は雇用統計を受けて、11月か12月のFOMCで0.25%の利下げが1回のみ実施されるとの見方を織り込んでいる。また、市場が織り込む9月の
利下げ確率は6日の約70%から約50.8%に低下した。
また、アトランタ連銀のGDPNowモデルは、米国の2QGDP成長率を前回予想の2.6%から3.1%と上方修正している。
(米国の強さ=株高と高金利で米国家計資産は増加の一途)
FRBは2024年1Qの家計資産は前期から3.2%(5.1兆ドル)増加し、160兆ドル超と過去最高に達した。株式市場が過去最高値を更新したほか、不動産価格の上昇が寄与した。日本円に換算すると2.5京円で日本の家計資産の約10倍。人口は3倍なので、日米資産格差はある。日本が誇りとするのは対外純資産世界一だが、日本に投資が向かないことの裏返しであり、また米国の対外債務が多いと言っても、米国が困っているわけではなく、世界中が好んで米国債始め、資産を購入しているからだ。ここにもドルの強さがある。
(基軸通貨としてのドルの強み)
原油を始め、資源価格がこれだけ上昇すると、ドルの取引額も増大し、資源国や消費国もドル保有金額が多くなるのもドル高の要因だ。ただ最近は米国と敵対するロシアのドル資産が凍結されたこともあり、中国はドル資産を減少させている。金にも向っているが、ドル以上に適切な資産はないのだろう
*ユーロ「通貨4位(5位)、株価6位(6位)DAX)、今朝、ユーロが下落、欧州議会選挙で極右政党などが躍進」
(早朝、ユーロが下落、欧州議会選挙で極右政党などが躍進、フランスは議会解散へ)
欧州議会選挙は、EUに懐疑的な右派や極右の政党が議席を増やす見通し。極右政党が大勝する見通しとなったフランスでは、マクロン大統領が議会下院を解散すると明らかにし近く、選挙が行われることになった。開票作業が進行中。
日本時間の10日午前7時前にヨーロッパ議会が発表した議席予測によるとフランスではEUが統合を進めて強い権限をもつことに反対する極右政党の「国民連合」が、マクロン大統領率いる与党連合に対し獲得議席で倍以上の差をつけて大勝する見通し。これを受けてマクロン大統領は国民議会を解散すると明らかにし近く選挙が行われることになった。
EU加盟国全体でも、720議席のうちEUに懐疑的な右派や極右の政党が所属する2つの会派があわせて130前後と改選前に比べて議席を増やすほか、この会派に入っていないドイツの右派政党「ドイツのための選択肢」も16前後と議席を増やす見通し。これまでEUの政策を主に支えてきた中道右派や中道左派などの3大会派は過半数を維持する見通しだが、EUに懐疑的な勢力が議席を増やすことで、EUの政策運営にどのような影響を及ぼすかが焦点となる。
(さりとて、中長期では安定のユーロ)
ユーロドルもコロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻、高インフレ、高金利からインフレ低下、利下げとありながら、ここ1年半は対ドルで1.07-1.08ユーロを中心に安定推移している。今年も年初来4位。低成長だが、安定した貿易黒字が支えている。常に当局が市場をけん制しているドル円とは異なった動きだ。対ドルで安定しているだけに、ECB当局者から殆ど為替の動きについて語られることはなかった。
ただ先週末は米国雇用統計の改善でユーロは1.08後半から前半へ下落した。今朝も欧州議会選挙で右派が票を伸ばし、続落。
(長すぎたフォワードガイダンスもあり利下げの影響はなかった。今後も慎重姿勢か)
ECBは先週、政策金利を0.25%引き下げた。利下げは2019年9月以来、4年9カ月ぶり。ECBは、インフレ見通し、基調インフレの動向、金融政策の伝達の強さに関する最新の評価に基づき、金融政策の制限の程度を緩和することが適切であると判断したと表明した。 引き続きデータに基づき、会合ごとに適切な制限レベルと期間を決定するとした。7月に追加緩和を行うかについては示唆しなかった。
ラガルドECB総裁は「賃金の伸びが上昇しているため、域内の物価上昇圧力は依然として強く、インフレ率は来年に入っても目標を上回って推移する可能性が高い」とした上で、「われわれは特定の金利経路を約束するつもりはない」と言明した。
(利下げに反対したホルツマン・オーストリア中銀総裁は為替も懸念)
ホルツマン・オーストリア中銀総裁が利下げに反対したようだ。ホルツマン氏はインフレ見通しの上昇を考慮し、金利据え置きを主張したという(一人くらい反対派がいるのも健全だ)
ホルツマン氏は、政策金利を一段と引き下げることはユーロ為替レートとインフレに大きな影響を与える可能性があると述べた。
(ハト派の仏中銀総裁)
ビルロワドガロー仏中銀総裁は引き続きユーロ圏のインフレの「ソフトランディング」に自信を持っており、適切なペースで利下げを実施していくと述べた。「将来の利下げは、急がず先送りせず、適切なペースで実施していく」と述べた
*ポンド「通貨2位(1位)、株価9位(8位)、年初来首位を米ドルに譲るが、今年は強い」
(年初来首位を米ドルに譲るが、今年は強い)
5月末は年初来首位に立っていたが、先週は米ドルに抜かれ2位。FT株価指数は9位。10年国債利回りは4.25%で欧州債より高く、米債より低い(利回り)。ユーロ同様に米ドルに対してここ1年は比較的安定している。
(来週の5月消費者物価、政策金利決定に注目)
焦点は今週の4月雇用統計、賃金、4月GDP、来週の5月消費者物価、政策金利決定となる。
英中銀は6月20日に政策金利を決定する。昨年以来、5.25%に据え置いている。インフレ率を2%に抑えることを目標としている。総合インフレ率は4月までの1年間で2.3%まで低下しているものの、状況は複雑だ。中銀が利下げを検討する際に注目するインフレ指標の一つはサービス部門である。サービス部門には教育や接客業などの分野が含まれ、賃金の伸びや失業率の概観を示す。このインフレ指標は主要指標ほど減速できず、4月には5.9%とわずかに低下しただけだった。サービス部門などにおける物価上昇の根本的な圧力は、依然として頑固に高いままだ。
まだ金利を引き下げられない理由の一つは、こうした圧力がまだ存在し、それが及ぼす影響を銀行もまだ十分に認識しているからだ。
(英国商工会議所の四半期経済予測)
英国商工会議所(BCC)は、経済は昨年末の短期的な景気後退後、回復を続けると予想されるが、貿易の見通しが依然として非常に弱いことから、長期的な成長は力強くならない可能性が高いと述べている。
四半期経済予測で、2024年と2025年のGDP成長率をそれぞれ0.5%と0.7%から0.8%と1.0%に上方修正した。
しかし、金利がゆっくりと低下し、消費者支出が徐々にしか拡大しないことから、2026年は2025年と同程度の1.0%になると予想されている。BCCの調査では、中小企業の大半が依然として投資を増やしていないことが引き続き示されており、貿易の見通しが悪く、2024年には輸入と輸出の両方が縮小するなど、経済の足かせにもなっていると付け加えた。
(総選挙、野党・労働党が圧勝か)
7月4日に実施される総選挙で野党・労働党が圧勝し、与党・保守党は過去約100年で最大の敗北を喫する可能性が高いことが、市場調査会社ユーガブの調査で分かった。 労働党は422議席を獲得し、トニー・ブレア元首相が率いた1997年の総選挙より大きな差で勝利する可能性があることが分かった。 保守党の獲得議席数は140席にとどまり、1906年以来の大きな敗北となる見通し。また、スナク内閣で国防相を務めるシャップス氏ら保守党の重鎮が落選する可能性が高いことも示された。
*豪ドル「通貨6位(9位)、株価13位(15位)、豪の1Qの弱いGDP、経常赤字で豪ドルが売られた」
(6月は陰線スタート)
5月は対円で5か月連続陽線となったが、6月は陰線スタート。米国雇用統計の改善と豪の1Qの弱いGDP、経常赤字で豪ドルが売られた。
(1人当たりGDPは前期比0.4%減、前年比1.3%減)
1Q・GDPは前期比0.1%増加し、予想の0.2%増を下回った。高金利とインフレの高止まりが個人消費にブレーキをかけた。 前年比では1.1%増加し、前四半期の1.5%増から鈍化、コロナ禍の時期を除いて過去30年で最も低い伸びとなった。 家計支出は1.3%増とわずかな伸びにとどまった。そのほとんどは電気代や医療費など必需項目に対するもので、裁量支出は前年比でほぼ横ばいだった。
3月までの1年間の名目GDPは3.5%増だが、インフレの影響を除くと、1人当たりGDPは前期比0.4%減、前年比1.3%減となった。
(1Q経常収支は赤字)
1Qの経常収支は、輸入の急増と商品輸出価格の下落を受け、予想に反して赤字に転落した。 経常赤字は49億豪ドル。予想は51億豪ドルの黒字だった。純輸出は1Q・GDPを0.9%押し下げる。
(RBAも粘着的インフレと弱い成長で舵取りが難しい)
ブロックRBA総裁は高水準の金利が需要を抑制していると指摘した。インフレ率は低下しているものの、ペースが緩やかなため、金融政策についてはいかなる方向も否定しないと述べた。
(今週は5月雇用統計)
5月失業率予想は4.0%、新規雇用者数予想は3万人増。
*NZドル「通貨7位(9位)、株価17位(16位)、インフレ懸念強いが景気・雇用は弱い」
(5月は月間最強、6月は9位スタート)
5月は月間最強となったが、6月は9位スタート、年間では7位。株価(NZ50)は冴えず年初来0.73%高。10年国債利回りは4.67%で先進国では高い。
(インフレ要因=住宅価格上昇)
住宅価格は今年と来年にいずれも上昇すると予想されている。金利上昇と景気減速は需要を圧迫するが、住宅供給不足がそうしたマイナスを帳消しにするため。
住宅価格は新型コロナウイルスのパンデミック期に40%余り上昇したが、中銀による積極的な利上げにより2021年終盤のピークから15%ほど下落している。しかし物件の供給不足から価格が高止まりしている。 住宅価格は今年と来年の上昇率がそれぞれ4.5%、5.1%の見込み。前四半期の調査ではそれぞれ4.8%と5.0%だった。 今後は移民の急増でより多くの供給が必要になる。手ごろな価格帯の住宅の不足は悪化している。中銀がインフレ抑制で勝利を収め、政策金利の引き下げに着手すれば、住宅市場の回復ペースは加速する。
(減税策で財政収支黒字化が遅れる)
ウィリス財務相は、4年間で147億NZドル規模となる減税策を発表した。低・中所得世帯を対象とし、幼い子どものいる世帯が最も恩恵を受けるという。
同相は今回の税制パッケージについて、政権の選挙公約を果たすものだと説明。「税制改正は国庫の取り崩しと歳入イニシアチブで全額賄われるため、減税のため追加の借り入れをする必要はなく、インフレ圧力に拍車をかけることもない」と述べた。財務省の予測では、財政赤字は来年134億NZドルに拡大し、財政収支が黒字に転じるのは2028年と、従来見通しより1年遅れる。
(雇用悪化)
1Q失業率が前期の4%から4.3%に上昇し、13万4000人が失業状態にあることが明らかになった。しかし、この数字には今年発表された公共部門の人員削減の大部分が含まれていない。
財政刺激策の恩恵を受けている教育分野などでは雇用が増加しているため、全体の雇用状況は実際より良く見える可能性があると指摘している。
失業率がピークに達するまでに、さらに2万6000人程度が職を失う恐れがあるという。つまり、公共サービス分野での大規模な人員削減が雇用統計に反映されると、失業者数はさらに大幅に増加する可能性が高い。
(今後の焦点は)
今後の焦点は来週の1Q経常収支と1Q・GDP。経常収支は赤字が継続の見込み。1Q・GDPが豪が不冴えだっただけに弱いものとなるか。