ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「円は介入をやっても年間最弱、貿易赤字は続く、外貨投信残高も増加」

ドル円=157-162、ユーロ円=168-173、ユーロドル=1.04-1.09

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨最下位(最下位)、株価4位(3位)、日本は変動相場制に向いていないが、FX参加者にとっては最高の環境」


(円相場は介入をやっても年間最弱は変わらず)
 弱い。GWの介入で160円台から151円台になったが、1か月も経たないうちに、159円後半と元通りとなった。先週は最弱、介入後は12通貨中11位、6月もここまで10位、年間では最弱だ。日経平均は年初来15.34%高で4位とまずまずだが、このところ伸び悩み、台湾加権指数とナスダックに抜かれてしまった。金利(10年国債)は7月の日銀の利上げや国債買い入れ減額観測が話題となっているが、0.9%台の小動き。

(日銀の「基調的なインフレ率」に注目)
 5月コア消費者物価は2.5%上昇、予想は2.6%、ただコアコアは2.4%から2.1%上昇に鈍化している。今週の日銀の「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」も注目したい。現在3指標共に1%台だ。世界の物価も低下傾向にあり慌てて利上げする必要もないが、あるとすれば、円高に誘導できない財務省の圧力か。ただそうすれば、最高益を上げている企業収益も悪化、国民の可処分所得も減少する。
 原油高がある限り貿易赤字は変わらず、円安圧力は続く。今週は6月東京消費者物価や6月上旬貿易統計にも注目したい。

(貿易赤字は続く、外貨投信残高も増加)
 円安の大きい要因である貿易収支は1-5月で約3.5兆円の赤字で昨年より半減している。ただ新NISAもあり今年の外貨投信残高は14兆円増加している。これが円買い介入を9.8兆円実施しても効果がない原因だ。

(日本は変動相場制に向いていない国かもしれない)
 プラザ以降のドル円は240円から75円の円高になり、今は159円だ。戦後から東日本大震災までは円が最強だったが、それ以降は最弱に近い。他の先進国では殆ど実施しない為替介入をある時は頻繁に、最近は規格外に巨額の介入を行っている。変動相場制度を採用しながら介入を行うのはそもそも変動相場制度が合わない国かもしれない。ただ欧州のようにユーロという統一通貨の実現の可能性もなく、ダーティーフロート的変動相場のままでいるしかない。FX参加者にとってはボラが高まる好条件は続く。

(10日ごとのドル円の動きのデータ)
 昨年11月から過去の10日ごとのドル円のデータから、今後の10日ごとの動きを予測している。強くデータがブレた時だけ取り上げているが、11月から取り上げた11回すべてエータ通りとなっている。5月は「下げ」、「上げ」「上げ」であった。 6月は上中旬はクセがない。下旬だけがドル上げだ。今週は世界で期末、半期末の取引もありドル需要が高まるか。

*米ドル「通貨2位(首位)、株価(NYダウ)13位(14位)、混乱時は米国が強い。懸念は一つだけ」


(大きな問題なくドルと株価は堅調、金利も小動き)
 年初来最強を南アランドに譲ったが、年初来、常にトップクラスにいる。株価もナスダックは20市場中13位の3.88%高と冴えないが、ナスダックやS&Pはそれぞれ17.84%高、14.57高と強い。その時々に強い産業や個別の会社が主導する。先週の10年債国債利回りはほぼ変わらず4.2%台。

(数少ない強い指標がドルを支えてしまう要因は)
 アトランタGDPナウは3.0%、CPIナウは3.13%、コアCPIナウは3.52%、サプライチェーンインデックスは0.48%と大きな変化はない。先週は5月の小売売上高は前月比0.1%増と、予想の0.3%増を下回ったが6月の製造業・サービス業が他国とは異なり前月比改善したことは好感された。1QのGDPが前期比年率で1.3%と低調であった頃より、多くの指標は冴えなかったが、時々強い指標が出でてドルを支えてしまうのはベースの需給が強いからか。ベースの需給とは基軸通貨のドルは資源の取引通貨としても使われ、価格が上がればドル買いが強くなる。それは米国の貿易収支には現れない隠れたドル買いだ。

(今週は個人消費支出(PCEデフレーター)が注目)
今週は週末の5月個人消費支出(PCEデフレーター)が注目で、若干弱めの数字が予想されている。0.1%の違いでも大げさに動く米国市場なので油断せず臨みたい。それ以外にも消費者信頼感指数、リッチモンド連銀製造業指数、シカゴ購買部協会景気指数、ミシガン大学消費者態度指数・確報値など中程度の指標も多い。

(周期的に訪れる米国の波乱)
米議会予算局(CBO)は最新の財政収支見通しで、2024年度(9月30日まで)の財政赤字の想定規模を2月時点の1兆5070億ドルから、1兆9150億ドルに引き上げた。新型コロナウイルスのパンデミック期間を除けば、過去最悪の赤字となる。
学費ローン免除や低所得層向け医療保険拡充、銀行破綻処理のための連邦預金保険公社(FDIC)のコスト、ウクライナやイスラエル向け支援などに関する支出が膨らんだことが、想定赤字額の増加につながった。また財政の崖といって政府機関の閉鎖が危惧されよう。

(大統領選挙への討論会)
 6月27日にバイデン大統領は、秋の大統領選挙に向けたトランプ前大統領との初めてのテレビ討論会が開催される。為替の直接の議論はなくとも、外交防衛、経済、インフレ、関税の議題は金融市場に影響する。

*ユーロ「通貨7位(4位)、株価7位(6位)DAX)、仏与党衰退での財政赤字拡大懸念でユーロがやや安い」


(ユーロは仏議会選挙の影響が少し出ている)
 仏の極右台頭でやや弱い。月間はここまで9位、年間では6位。株価は欧州議会選挙後、仏CAC40が4.66%安、独DAXが2.62%安、10年国債はフランスが3.04%から3.15%へ上昇、独は2.55%から2.4%へ低下で独仏スプレッドが拡大している。さほど大きくはないがフランスの議会選挙の影響は出ている(表参照)。

(ただ円よりは弱くならない)
 ユーロ円は、やや弱くはなったが、週間、日銀介入後、6月月間、そして年間と依然円よりは強い。ギリシャ危機以来の危機感を醸成しようとしているが、まだそれほどではない。日本と違って、海外へのエネルギー依存度が半分くらいなので、貿易・経常収支が赤字にならずユーロを支えている。
 
(仏総選挙、左右の2大勢力台頭は財政赤字を増大させるか)
 解散・総選挙を決めた後の世論調査では、大統領与党連合(ENS)は、極右の「国民連合(RN)」、RN阻止のために幅広い左派が結集した「新人民戦線(NFP)」の3つのブロックのうち、大差での3番手と出遅れている。臨時議会選挙は6月30日と7月7日の2回に分けて行われる。マクロン大統領は大統領選で実績がある「極右包囲網」を再現し、国民連合の勢いを封じる狙いだった。ところが、古巣の社会党は左派連合に合流。中道右派の共和党も一部が極右と連携するなど、想定と異なる展開となっている。

 左右の2大勢力は、移民への姿勢や価値観の隔たりは大きいが、ともに有権者の最大の関心事である購買力回復のために財政コストの嵩む政策を掲げる。ルメール仏経済・財務相は「極右や極左が勝利すれば、歳出拡大などで金融危機につながりかねない」と警告した。RNは、議会第1党と首相ポストが視野に入ったことで、市場の激しい反応を引き起こし、有権者を遠ざけることのないよう、EUへの対決的姿勢を弱め、財政規律を意識し、軌道修正し始めているようだ。最悪の想定は仏のEU離脱だ。

(最近の指標、今週の指標)
 先週の6月製造業・サービス業PMIはユーロ圏、独ともに前月より悪化した。6月のZEW景況感指数は改善した。今週は6月独IFO指数、雇用統計、ユーロ圏6月消費者インフレ期待などの発表がある。

*ポンド「通貨3位(3位)、株価9位(9位)、今月はユーロ安に連れ安だが、対円では2018年8月以来の高値更新」


(今月はユーロ安に連れ安だが、対円では2018年8月以来の高値更新)
 今月はユーロ安に連れ安ということもあり、対ドルでは冴えないが、円はユーロより安いということもあり対円では2008年8月以来の高値を更新し202.044をつけた。FT株価指数は先週は1.125上昇、年初来では6.52%高、10年国債は4.07%で先週は小動きだった。

(英中銀、消費者物価2%でも7会合連続金利据え置き) 
 英中銀は、政策金利を7会合連続で5.25%に据え置いた。ベイリー総裁は利下げは時期尚早との見解を示したが、一部委員からは、利下げ見送りは「微妙なバランス」にあるとの指摘が出たという。これを受け、将来の利下げ確率が上昇した。 据え置きは7対2で決定。前回に続きラムスデン副総裁とディングラ委員が025%利下げを主張した。
ベイリー総裁は、 5月の消費者物価前年比上昇率が中銀の目標である2%に低下したことを「良いニュース」と歓迎するものの、利下げは時期尚早とし、「インフレ率を持続的に目標の2%に戻すため、金融政策は十分な期間にわたり景気抑制的であり続ける必要がある」と述べた。前回5月は「状況が正しい方向に進んでいると楽観している」と述べていた。
 英中銀による早期利下げの可能性が高まったとの見方から英債利回りが低下しポンドがドルに対して下落。市場が織り込む8月1日の次回会合での利下げ確率は発表前の約30%から55%に上昇した。

ただ5月小売売上高や6月消費者信頼感指数が堅調だったことで、楽観的な見方はいくぶん弱まった。

(スナク首相落選の可能性も)
7月4日に実施される総選挙では、野党・労働党が党史上最多の議席を獲得すると予想されている。
ユーガブの世論調査によると、労働党の獲得議席は425議席、スナク首相率いる与党・保守党の獲得議席は108議席となる見通し。た、英紙テレグラフが報じた調査会社サバンタによる世論調査では、スナク首相は現職首相として初めて自身の議席を失う見通し。

労働党の地滑り的勝利を市場は既に織り込み済みとした上で、「政治の安定と政策の不確実性低下は、英国のビジネスと成長に大いにプラスになろう」と指摘されている。

*豪ドル「通貨5位(5位)、株価16位(16位)、対円では年初来10%高へ上昇」


(対円では年初来10%高)
 対ドルでは弱いが、対円では年初来10%高となっている。年間順位もユーロを抜いて5位。やはりインフレの高止まりで政策金利の引き下げが後退していることが買い要因だ。1Q・GDPは悪化したが雇用は堅調で、金融緩和への道が閉ざされている。ただその影響は株価の低迷に現れている。ASX30は年初来2.69%高。10年国債は4.22%で先週は4.1%から上昇した。

(インフレ率を2-3%に戻す道のりは長い)
 RBAは、政策金利を予想通り4.35%に据え置いた。据え置きは5会合連続。インフレの上振れリスクを踏まえ利上げの是非を議論。最終的には据え置きを決定し、利上げへのハードルが依然高いことが示された。ただインフレの抑制に必要であれば追加利上げを排除しないと改めて表明。「最近のデータはまちまちだが、インフレ上昇リスクに引き続き警戒する必要があることが再確認された」と指摘した。
直近のインフレ率は3.6%で、目標値をなお大幅に上回っている。ブロックRBA総裁は「インフレ率を2-3%の目標範囲に戻すには、道のりはまだ長い」と述べた。

(6月PMIは悪化)
・製造業47.5(前回49.7、予想49)
・サービス業50.6(前回52.5、予想53)
・総合50.6(前回52.1、予想53.4)

(6月CPIは上昇加速か)
 今週は5月消費者物価の発表がある。4月は3.6%、予想は3.8%と高い。

(豪中の貿易関係改善なるか)
 豪の最大輸出国は中国だ。中国の李強首相はかつて冷え込んでいた貿易関係の緩和を図るため豪を訪問した。2020年に前保守政権との外交上の亀裂の中で中国が課した制裁により打撃を受けたのは石炭、ワイン、木材、大麦、牛肉、ロブスターなどであった。これらの制裁により、豪の輸出業者は年間200億豪ドルの損害を被ったと推定されている。アルバニージー首相が2022年に発足し、中国に対してより柔軟な外交姿勢を取って以来、関税は徐々に撤廃されてきた。軍事的緊張は痛づくが、李首相は「相互尊重、相違点を棚上げしながら共通点を模索すること、そして相互に利益のある協力が両国関係の鍵だ」と語った。

*NZドル「通貨8位(17位)、株価18位(18位)、GDP、リセッションから抜け出すも反応弱い」

(NZドルは対ドルで弱いが対円では上伸)
 NZは年間では前週の5位から8位へ後退したが対円では先週も上昇した。株価指数(NZ50)は18位と弱い。10年国債は4.65%と先週は小動きで豪ほど金利は上昇しなかったのが対ドルで弱含んだ要因だ。

(1Q、景気後退から脱却)
 1Q・GDPは前期比で0.2%増加し、予想の0.1%増を上回った。発電、賃貸、雇用、不動産サービスなど複数のセクターが伸びた。 前年比では0.3%増加。予想は02%増。経済は景気後退から脱却した。
 中銀は経済の重しとなっているインフレを抑制するため、金利を2008年以来の高水準に維持している。好調な移民と観光業の回復が経済活動を支援する一方で、高金利が続くことで個人消費と企業投資が低迷している。
ただ市場は「今年を通じてわずかな成長にとどまる見通し。最近の指標は4-6月期がかなり軟調になることを示唆している」とされている。
力強い人口の伸びがここ1年半程度にわたり経済の弱さを覆い隠しているとし、1人当たりの年間GDPは2.4%減少したと述べた。また、中銀はインフレ抑制に取り組む中、来年もしばらくは利下げする可能性は低いと警告している。

(今週の指標)
 貿易収支 消費者信頼感 ANZ企業信頼感

(インフレ率、目標回帰へ前進)
中銀チーフエコノミストであるコンウェイ氏は、インフレ率の目標回帰へ前進しているとしつつ、確信を得るには制約的な政策期間が必要だと述べた。 労働市場の緩和を含む経済の余剰能力の拡大はインフレ圧力をさらに低下させる可能性が高いと指摘した。 ただ、このプロセスは予測よりも早く起こる可能性もあれば、ゆっくり起こる可能性もあると付け加えた。 1Qのインフレ率は4.0%。コンウェイ氏は年末までにインフレ率が目標バンドに戻ると予想しているとした。

(NZ・中国首脳会談、貿易拡大か)
 NZを訪問した中国の李強首相は、ラクソンNZ首相と会談し、両国間の貿易や投資、人的交流を拡大することで一致した。一方、李首相は、NZが米英豪の安全保障枠組み「AUKUS」と先端軍事技術の協力を検討していることに対し懸念を伝えた。NZにとって中国は最大の貿易相手国、中国はNZから農産物などの輸入を増やす方針を説明した。両国はサービス貿易促進や気候変動対応に関する共同文書に署名した。