ID為替レポート
(画像=外為どっとコム マネ育チャンネル)

総括

FX「円安要因は変わらないが、7月データは全体ではドル円は小安い」

ドル円=158-163、ユーロ円=170-175、ユーロドル=1.04-1.09

通貨ごとの注目ポイント

*円「通貨最下位(最下位)、株価3位(4位)、円安要因は変わらないが、7月は全体ではドル円は小安い」
(GWの巨額円買い介入でも円安が進む)
 GWに9.8兆円と世界では常識外の金額の円買い介入を行ったが、6月は月間で11位、年間では最下位継続。介入後も円安が進んだ。日経平均は年初来18.28%高で世界の主要市場で第3位。日本国債10年債は1.05%で年初は0.41%であった。

(貿易赤字、外貨投資残高増加での円安は続く)
 6月上旬貿易統計では2053億円の赤字、去年の同期の429億円の黒字から赤字化となった。オルカンを含む外貨投信の残高は5月で14兆円増加している。円安の主要要因の貿易赤字と外貨投信の残高増だ。
政府は、日銀に利上げ圧力をかけているようで、日銀のコメントも7月31日の政策決定会合へ向けて「国債買い入れ減額」「利上げもありうる」となってきている。ただ日銀総裁がよく言及する「基調的なインフレ率を捕捉するための指標」はまだ2%台に定着していない。それでも利上げするとしたら、かなり政治・財務省の圧力がかかっているのだろう。だからと言って、円安是正が起きるのかは疑問だ。一時的にはあっても。
 
(今週の需要指標は)
今週は、日銀短観、 消費者態度指数、全世帯家計調査、景気動向指数などの景気敏感指標の発表が続く。4-6月期に成長がプラスに回復する手掛かりがつかめるか

(データから見ると7月はドル下げ、8月はドル上げ)
 {昨年11月から過去の10日ごとのドル円のデータから、今後の10日ごとの動きを予測している。強くデータがブレた時だけ取り上げているが、11月から取り上げた11回すべてエータ通りとなっている。5月は「下げ」、「上げ」「上げ」であった。 6月は上中旬はクセがない。下旬だけがドル上げだ。6月末は世界で期末、半期末の取引もありドル需要が高まるか。}ここまでデータ通り。
 7月のデータは、残念ながら、上中下旬ともにクセなし。ただ7月全体ではドル下げ。7月末日はドル上げ。

(介入は)
 財務省はしきりに過度な動きには介入で対処するとしているが、GW介入から2か月も経たずに介入すれば、それはイエレン財務長官の「マレ」から大きく外れることとなる。

*米ドル「通貨2位(2位)、株価(NYダウ)14位(13位)、大統領選、利下げへの道筋、財政赤字懸念ダイナミックな動きを期待」
(ドルは日銀介入で5月は値を下げたが、6月は回復)
 5月は日銀の円買い介入の相手が米ドルであったこともあり、ドル円やや安かった(といっても0.27%安に留まる)が、6月は挽回し月間7位、年初来でも2位を堅持した。6月の株価指数はNYダウは1.12%高、ハイテク中心のナスダックは5.96%高。10年国債は4.5%から4.398%へ低下した。

(PCE低下もFRBは慎重)
 FRBがインフレ指標として重視する5月の個人消費支出(PCE)価格指数は、前年比2.6%上昇し、前月の2.7%から鈍化したが、その後発表された6月シカゴPMIやミシガン大消費者信頼感指数が改善したことでドル円は買い戻された。フェドウオッチによると、9月の0.25%利下げ確率はPCE発表前の57.3%から66%に上昇。市場では引き続き年内に利下げが2回実施されると見込まれている。
 デイリーSF連銀総裁は、PCE価格指数の発表を受け、「金融政策が十分に引き締め的であるという証拠が得られている。成長は鈍り、消費ペースも鈍化している。労働市場は減速し、インフレ率も下がっている」とし、どこから見ても金融政策が機能していないとは思えないと語った。しかし「PCE価格指数はまだ多くの進展が必要であり、政策面で取り組むべきことはまだあるとし、インフレ率が2025年末まで目標とする2%を上回る可能性があるという見通しだ」とも語った。

(今週はFRB議長発言と雇用統計が焦点)
 今週はパウエルFRB議長の発言と雇用関連指標が注目されている。6月農業部門雇用者数は18.8万人の増加で5月の27.2万人の増加から縮小する。FORMC議事要旨もフォローしておきたい。

(トランプ氏再選の場合の勝負の方法)
 バイデン大統領と、返り咲きをねらうトランプ前大統領による初めてのテレビ討論会が行われ、主要な政策について論戦を繰り広げたが。バイデン氏について力強さと安定感、それに精彩を欠いていたと伝えられている。NYタイムズはバイデン大統領の出馬取りやめを促している。ただ一部では、討論会の時期が早すぎたので新候補選出など民主党に挽回のチャンスを与えたともされている。
 トランプ氏の過激な主張は内外でも長く通用するとは思えない。トランプ氏が再選され市場が混乱しても、また現状の市場主義に戻ることを仮定し、悲観的な動きとなれば、株、為替、債券でも逆張りしたい。ちょっと、ソロス氏の再帰論をまねているが、ギリシャ危機で私がギリシャや周辺国の債券を買ったような正常化への逆張りを狙いたい。

(IMFが米国へ警告)
 IMFは、世界最大の経済大国である米国の「力強くダイナミックな」経済成長とインフレ抑制に向けた進展を評価した上で、債務水準の上昇を抑制するために増税を求めた。
米経済政策に対する審査(4条協議)の最終声明で、巨額の財政赤字と債務は「米国および世界経済に対するリスクを増大させ、財政上の資金調達コストの上昇や、満期を迎える債券の円滑な再投資に対するリスク増大につながる可能性がある」とした。TD証券は早ければ来年にも格付け引き下げの可能性があるとしている。

*ユーロ「通貨6位(7位)、株価6位(7位)DAX)、今朝はユーロドル上昇。フランス極右政権が第一回選挙でリード」
(今朝、仏選挙を受けてユーロ上昇=シドニー市場)
午前6時、ユーロドル1.0740-45,ユーロ円172.65-80

(ユーロは対ドルで小動き、対円では高値更新)
 6月のユーロはでやや弱く9位、年間では6位。対円では高値を更新した。株価では先週はフランスCACは1.96%安、独DAXは0.4%高。仏10年国債は3.3%、独は2.5%で独仏スプレッドは前週の0.75%から0.8%へ僅かに拡大した。年初の独仏スプレッドは0.54%であった。

(今週は消費者物価)
今週は6月消費者物価の発表がある。独は5月の2.4%から2.3%へ低下、ユーロ圏は2.6%から2.5%へ低下する予想だ。ビルロワドガロー仏中銀総裁は、ECBはインフレ率が来年、目標の2%に戻ると自信を持っていると発言した。レーン・フィンランド中銀総裁は、ユーロ圏のインフレ率はぶれがあったとしても最終的に目標の2%で安定するとの見方を示した。
「インフレの動向はここ数カ月で低下傾向がやや鈍化したとはいえ、中期的には目標水準で安定することを引き続き示唆している」と述べた。

(国民議会総選挙は)
極右政党の国民連合が1位となり大きく躍進するのに対し、マクロン大統領の与党連合は3位にとどまる見通し。極右政党RNの国民連合と、連携する勢力が大きく躍進し、あわせて33.2%と首位にたち、左派の連合の新人民戦線が28.1%、マクロン大統領の与党連合は21%で3位にとどまる見通し。

1回目の投票で過半数を獲得する候補者がいない選挙区では、1週間後の7日に上位の候補者による決選投票が行われ、最終的な結果が決まることになる。

 今回の選挙でRNが大勝すれば、政策に大きな変化が生じる可能性がある。ロシアのウクライナ侵攻をめぐっては、マクロン氏が6月、戦闘機の提供を決めたほか、軍事教官をウクライナに派遣する意向を表明。RNはウクライナ支援を維持するとしているが、ロシア国内が射程に入る長距離ミサイルの提供や教官派遣には反対している。
 移民問題では、不法移民の規制強化を訴える与党連合に対して、RNは、外国人の両親のもとにフランスで生まれた子どもが18歳になると国籍を得られる「出生地主義」の廃止を約束。二重国籍者の権利制限も打ち出すなど、多様性に寛容な国のあり方を変える考えを主張している。

(フランス市場のリスク)
 欧州債務危機以降で最悪の国債下落。市場から締め出される可能性を前に資金調達を急ぐ企業。約2000億ドル相当の株式時価総額消失。マクロン大統領が今月上旬に解散・総選挙を決めた後、フランス金融市場はこうした混乱に見舞われた。投資家は30日の第1回投票で、事態がさらに悪化するかどうかを知ることになる。
 フランスの財政健全性には突然の選挙決定前から疑問符がついており、投資家は仏国債を空売りしていた。米国市場に代わる安定的で比較的ボラティリティーの低い市場としてのフランスの評価は傷付いた。市場が懸念するのは、フランスの新政権が債務をさらに膨らませることだ。フランスの財政赤字はすでにEU規則で許容される範囲を超えているが、選挙で極右か左派が躍進すれば財政規律がさらに緩む可能性が高まる。
 ルペン氏が率いる極右政党は前回台頭したのは2017年の大統領選挙だが、当時はユーロ離脱の是非を問う国民投票を約束していた。同氏の姿勢はその後に和らいでいるが、同党の政策は投資家を不安にさせている。ユーロ圏の銀行株が下落した場合に支払いが発生するデリバティブの取引は、16年以降で最高を記録した。銀行は国債保有や経済へのエクスポージャーを通じて国の政治動向から影響を受けやすい。

*ポンド「通貨3位(3位)、株価9位(9位)、経済指標改善も8月に利下げか。選挙は影響なし」
(依然堅調。年間3位)
 依然堅調。年間3位。対円で12.5%高、対ドルでは0.7%安。FT株価指数は年初来9位で6.52%高。10年国債利回りは4.17%で米国債よりは低い。

(GDPなど経済指標は改善)
 1Q・GDP確報値は前期比0.7%増と、速報値の0.6%増から上方修正された。前年同期比では0.3%増。速報値は0.2%増。緩やかな景気後退から脱却したことが確認された。
6月の製造業受注指数はマイナス18と、前月のマイナス33から大幅に上昇し、3カ月ぶりの高水準となった。生産見通しを示す指数も昨年10月以来の最高水準だった。
5月小売売上高や6月消費者信頼感指数が堅調で景気改善は進んでいる。

(英中銀元委員のソーンダース氏、8月利下げを予想、選挙は影響せず)
英中銀金融政策委員会の元委員のソーンダース氏は、インフレおよび賃金のデータが5月の予測と一致している限り、英中銀は「おそらく8月に」金利を引き下げる可能性が高いと述べた。
「データに問題がなければ、近いうちに利下げする用意があると英中銀は明確に示唆している」と指摘。
ベイリー中銀総裁は、 5月の消費者物価前年比上昇率が中銀の目標である2%に低下したことを「良いニュース」と歓迎するものの、利下げは時期尚早としている。

(総選挙と市場)
7月の英総選挙に関しては、ソーンダース氏は最大野党・労働党が大勝すれば市場に安心感が広がると予想。「市場と投資家は保守党政権の終焉を残念に思わないだろう」とした。
また労働党が勝利しても英中銀の金融政策の方向性には影響がないと予想した。

*豪ドル「通貨4位(5位)、株価16位(16位)、CPI加速で豪ドルも強い」
(底堅い豪ドル)
 豪ドルは底堅かった。6月は月間3位、年間でも順位を5位から4位へ上げた。株価(豪全普通株指数)は年初来2.69%と伸び悩み、10年国債は4.41%。

(インフレ加速で豪ドル上昇)
 RBAは、「最近のデータはまちまちだが、インフレ上昇リスクに引き続き警戒する必要があることが再確認された」と指摘、ブロック総裁は「インフレ率を2-3%の目標範囲に戻すには、道のりはまだ長い」と述べていた。その後、発表された5月の消費者物価は前年比4.0%上昇と4月の3.6%上昇から加速し、半年ぶりの高い伸びとなった。

(今週は小売売上。RBA議事要旨もあり)
今週6月求人件数、RBA議事要旨、5月建設許可、小売売上、貿易収支などの発表がある

(ケントRBA総裁補は利上げ示唆、ハウザーRBA副総裁は慎重)
 ケントRBA総裁補は、金融政策は制限的で、現行の政策金利が多くの家計に経済的負担をもたらしていることを認識しているが、インフレ抑制に必要なら追加引き締めも排除しないと述べた。
一方、ハウザーRBA副総裁は、金融政策には単月のインフレ指標以外にも考慮すべき点があるとし、金利と経済の見通しは依然として不透明と述べた。
「1つの数値に基づいて政策を定めるのは大きな間違いであり、われわれはそうしない。適切な政策対応は明らかに冷静さを保つことだ。インフレ率はやや平坦ではないが低下している」とし、8月の会合までに雇用、小売売上高、企業調査などさらに多くのデータが発表されるとした。

*NZドル「通貨8位(8位)、株価18位(18位)、じり安、景気後退から脱した1Q・GDPは評価されず」
(じり安、豪ドルに引き離される)
 6月半ばまでは豪ドルと並んで年間5位であったが、その後じり安で8位へ後退した。豪ドルは4位。株価(NZ50)も安く年初来0.45%安。10年国債は4.7%で先進国では高い。

(弱い経済指標)
 5月貿易収支は2.04億ドルの黒字となった。4月は300万ドルの赤字。ワインや乳製品の輸出が伸びた。輸入は石油及び石油製品が増加。NZの上位輸出国は中国、豪、米、EU、日本。輸入は中国、豪、米国、韓国だ。6月消費者信頼感指数は83で前月の84.9から悪化、ANZ企業信頼感指数は6.1で前月の11.2から悪化した。

(今週は企業信頼感指数に注目)
今週はNZ経済研究所の2Q企業信頼感指数、5月建設許可の発表がある。

(景気後退から脱した1Q・GDPは評価されず下落)
 NZの1QGDPは前期比0.2%成長し、景気後退から脱した。この緩やかな成長は、主に記録的な移民人口増加によって推進されているが、経済の根本的な健全性に関する懸念を払拭するには至っていない。
もう一つの重要な産業である観光業も、パンデミック前の勢いを取り戻すのに苦労している。
 一人当たりベースで見ると、GDPは1Qに0.3%減少し、6四半期連続の減少となった。これは、表面的な経済成長が、より深刻な構造的弱点を隠していることを示している。持続的な経済課題
は経済は不況から脱したにもかかわらず、依然として大きな課題に直面している。高インフレと借入コストの上昇が経済情勢に長い影を落としている。
 政府は、家計の経済的負担を軽減するために、慎重な財政運営と減税の必要性を強調している。