特集「令和IPO企業トップに聞く 〜 経済激変時代における上場ストーリーと事業戦略」では、IPOで上場した各社のトップにインタビューを実施。コロナ禍を迎えた激動の時代に上場を果たした企業のこれまでの経緯と今後の戦略や課題について各社の取り組みを紹介する。

ココルポート
(画像=ココルポート)
佐原 敦矢(さはら あつし)――代表取締役社長
1963年京都府生まれ。神戸大学卒業後、株式会社リクルート(現リクルートホールディングス)入社。新卒採用担当を経て人材系部門に異動。顧客の新卒採用、中途採用、教育研修に関する業務に従事。人材紹介部門で首都圏エリア責任者として4つの支社の立ち上げ後、東海統括部長、関西統括部長、医師斡旋事業部長、人事・総務・法務・広報部長を歴任。2014年株式会社クロス・マーケティングを経て、2017年1月株式会社ココルポート入社。2018年4月代表取締役社長に就任。好きな言葉は「WILL」。
株式会社ココルポートは、「私たちは一人ひとりの可能性を信じ、自分らしさと笑顔あふれる社会を共創します。」という企業理念の下、障がい福祉サービス事業を展開しております。私たちが大切にしていることは「徹底的に個別支援にこだわる」という点です。人は一人ひとり違います。ご利用者様お一人おひとりに適した支援を提供し、結果としてお一人おひとりが自立した人生を送ることができるように支援することが私たちの目指すところです。

目次

  1. 人生のターニングポイントについて
  2. 上場を目指した背景や上場後の実感
  3. 今後の事業戦略や展望
  4. 今後の重要テーマ
  5. ZUU onlineのユーザーに⼀⾔

人生のターニングポイントについて

ーー佐原社長が新卒でリクルートに入社されてから現在に至るまでの変遷とターニングポイントを教えてください。

株式会社ココルポート 代表取締役社長・佐原 敦矢氏(以下、社名・氏名略) :大学では電子工学を専攻する理系学生で、当初は大学院への進学を考えていました。しかし、将来会社経営に携わりたいという思いに加え、じっと研究しているたちではなかったことから、大学を学部で卒業し、いわゆる文系就職しました。当初は30歳くらいで独立することを考えていましたが、気が付けば50歳まで株式会社リクルートに勤めました。その後、株式会社クロス・マーケティングに2年9か月在籍したのちココルポートにジョインしました。

ココルポートへの転職のきっかけは、エグゼクティブサーチに転職していた後輩からの誘いでした。実は私は以前から、障がい者支援に関わりたいという思いがありました。というのも、中・高校時に仲の良かった友人、大学で一緒に野球をしていた同級生、リクルートで同じ職場で働いていた無二の親友、の合計3人を精神障がいに伴う自殺によって失っていました。こうした経験がありながら何もできなかった悔しさから、いつか障がいのある方々の支えになることに関わりたいと思っており、ココルポートへの転職を決意しました。

ーー佐原社長が取締役に就任されてから取り組まれたことについて教えてください。

佐原 :まず、入社して驚いたのは、赤字企業だったことです(笑)。入社前はもちろんそんなことは知らされていませんでした。

現場で3か月支援員として働いたのちに取り掛かった施策は大きく3つ。まずは業務の見える化です。業務を数値化して量と質の両面で可視化しました。これによって働いている皆が何に注力すべきかを明確にすることができました。

次に、システム化です。当時は手書きでタイムカードを書いているなど、基本的には全て紙で記録をとっていました。そこでシステム開発の会社を個人経営している知人に連絡をとり、新たな社内システムを開発してもらいました。そのシステムの導入によって、業務効率化が進みました。

また同時に、マインドセットを図りました。社名の変更、企業理念の再設定、そして行動指針を創りました。これらは私一人が決めたことではなくみんなで創っていきました。特に行動指針は6か月という長い時間をかけ、その当時の社員全員で考えました。

上記3点に会社として特に力を入れたこと、さらに現場の皆さんの頑張りのおかげで業績は赤字から急回復していきました。

上場を目指した背景や上場後の実感

ーー貴社に入社されてからたくさんの問題を乗り越えてきたと伺いましたが、上場までのエピソードをお聞かせください。

佐原 :入社した当初は個人商店のような企業で、業績が悪化して月間収支の赤字が続いていおり、銀行もお金を貸してくれないほど状況は悪化していました。そのような状態で入社し、まずは現場を理解するために社長候補であることを隠して現場社員として働きました。知人友人など周囲からはすぐに辞めた方がいいと言われることも多くありましたが、現場で支援している中で、従業員の方々が純粋な思いで一生懸命やっているのを肌で感じ、辞める決断はできませんでした。

“なんとかして真っ当な会社にしたい“、意を決して創業社長に掛け合い、IPOすることを提案しました。これが2018年7月のことです。1回目はダメといわれたのですが、めげずに翌月再提案し、「そこまで言うならやってみてほしい」と言われたのがIPOの始まりです。そして2023年3月に、やっとの思いで上場を果たすことができました。

――上場後の成長を振り返って、社長自身の実感はどのようなものでしょうか。

佐原 :知名度向上は大きかったと思います。例えば、採用難のこのご時世でも応募者は減るどころか増加していますし、新卒採用では、上場企業であることで親御さんからお勧めを受けたという話も聞いています。

また従業員も上場会社である自覚と仕事への誇りを持ち、モチベーションが向上したと実感しています。

今後の事業戦略や展望

ーー今後の事業戦略についても伺っていきたいと思います。これからの市場の成長性と、市場の競争環境について教えてください

佐原 :市場は、右肩上がりに成長すると確信しています。その理由の一つは、障がい者の法定雇用率の引き上げです。今まで2.3%であったのが2024年4月に2.5%になり、更に2026年7月には2.7%まで引き上げられる予定です。それに伴って企業の障がい者雇用ニーズは確実に高まると考えています。

また、障がい者数の推移を見ても、メインのご利用者様である精神障がいのある方の人数がここ5年で56%も増加しています。しかし、市場の成長に合わせて競争環境は激しくなりつつあります。今後レッドオーシャン化する中で、しっかりと施策を打っていきたいと考えています。

ーーその競争環境のなかで発揮する、貴社の強みを教えてください。

佐原 :私たちの強みは大きく3点あります。1点目は、「集団ではなく個別」のコンセプトです。人は一人ひとり違います。年齢・性別・障がい種別・状態・個性。そのため集団ではなく、個別に特化した支援を行っています。

2点目は、「指導ではなく支援」のコンセプトです。答えは相手が持っているという考えをもち、あくまで「支援」を徹底し、障がいのある方自身が自立することを大切にしています。

3点目は、「幅広い受け入れ」です。「手を差し伸べてほしいと思っている人に手を差し伸べるのが福祉である」という考えのもと、たとえ週に1回しか外に出られないような重めの障がいのある方であっても受け入れられる支援体制とノウハウを有しています。

株式会社ココルポート
(画像=株式会社ココルポート)

ーーこの3つの強みに加えて、地域密着の顧客基盤も強みだと思っているのですが、こちらもいかがでしょうか?

佐原 :おっしゃる通りです。私たちのご利用者様は、約半数が支援機関などからのご紹介経由です。株式会社でありながらも、福祉の考えを強く持った会社であることをお伝えするために、各種支援機関にリレート活動を積極的に行っています。私たちだけでは障がい者支援の問題は解決できないと考えているため、社会資源の活用、すなわち様々な支援機関と助け合い協力しながら、この問題を解決したいと思っています。

今後の重要テーマ

ーー今後の貴社の重要テーマについて伺っていきたいと思います。今後の事業拡大においてどのようなテーマを持っていますか?

佐原:今後の重要テーマは、事業所の拡大と新規事業の2つです。私たちはドミナント展開をとっており、しばらくは東・名・阪・福で事業所の拡大を進めていきます。同時に新規事業も考えていきたい。例えば2024年4月からリワーク専門の事業所を千葉県船橋市に立ち上げました。このように障がい者福祉に貢献する新規事業を取り入れて、サービスの展開をおこなっていきたいと考えています。

株式会社ココルポート
(画像=株式会社ココルポート)

ZUU onlineのユーザーに⼀⾔

ーーZUU onlineのユーザーに向けて一言お願いします。

佐原 :私たちは、一人でも多くの障がいのある方々が私たちの支援を通じて元気になり、社会に溶け込み、幸せな人生を歩めるよう自立していただきたいと思っています。利用する障がい者の方々、そしてそのご家族にも喜んでいただき、社会的にも多いに価値のある事業です。そのうえ、これからもマーケットは拡大する事業領域。今後、投資家の方にも満足していただけるような会社にするべく、事業を磨いていきますので、ぜひ応援のほどよろしくお願いいたします。

氏名
佐原 敦矢(さはら あつし)
社名
ココルポート
役職
代表取締役社長

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