日本の長期金利は、2024年にじわりと上昇した。これまで金利がほぼゼロだった日本だが、「金利がある世界」に変わりつつある。金利がある状況が普通になった場合、私たちの生活はどのように変化するのだろうか。本記事では、「金利がある世界」で起きることや、今すべき備えについて解説する。

日本もかつては金利が高かった

「金利のある世界」へ変わる日本。生活への影響は ? コスト増に備える方法も
(画像=LALAKA / stock.adobe.com)

日本の金利が高かった時代、普通預金や定期預金の金利は、現在よりはるかに高かった。総務省統計局の資料をもとに過去を振り返ると、普通預金の金利は1980年代前半においては1~2%台が当たり前だったし、定期預金の金利は1990年ごろには6%台に到達していた時期もあった。

しかし2024年現在は、金融機関によっても異なるが普通預金は0.02~0.03%程度、定期預金は預入期間が長くてもせいぜい0.3~0.5%程度となっている。

日本における金利上昇の背景

2024年に入ってからどうして日本の金利は上昇しているのだろうか。その主な要因は、日銀が金融政策を変更していることにある。日銀は、2013年に大規模な金融緩和政策を導入しマイナス金利政策を進めてきた。その後もマイナス金利政策の姿勢を継続してきたが、2024年3月に政策を修正。具体的には、マイナス金利政策を解除し、短期金利の誘導目標を0~0.1%程度とした。

日銀がマイナス金利政策を解除した背景には、日本国内でインフレ (※物価の上昇) が定着しつつあることが挙げられる。日銀は2%程度のインフレターゲットを掲げており、その安定的な実現が視野に入ったと考えられるため、金融緩和政策の修正に踏み切ったというわけだ。

「金利がある世界」で起きること

金利がある状況が日本で定着すると、どのようなことが起きるのだろうか。

金利変動型の住宅ローンが上昇

まず住宅ローンを「金利変動型」で組んでいる人の場合、金利上昇が考えられる。住宅ローンの金利は市中金利の影響を受けるため、上昇すると将来的に支払いの負担が増えてしまう。

奨学金の返済金利も上昇

有利子の奨学金を借りている大学生などの場合、制度によっては奨学金の返済金利が卒業時点の市中金利などで決まるため、トータルでの返済額が増えることになる。

企業の経営コスト増による商品・サービス価格の上昇

金融機関から融資を受ける企業にとっては、経営コストが増える。こうした経営コストの増加が商品やサービス価格に転嫁され、消費者の負担増につながりやすくなるだろう。

さまざまな金融商品にも影響

さまざまな金融商品にも影響を与える。例えば金利の上昇は、償還期限まで国債を保有する投資スタイルの場合、魅力が増す。一方、一般的に金利高は株式投資にマイナスの影響を与えやすい。なぜなら企業の経営コストが増え、利益の圧迫要因になり得るからだ。

ただし、株価は企業の業績や経済成長、政治動向など、多くの要因による影響を受けやすい。例えば、金利が上がる背景に経済成長がある場合、企業収益が増えて株価が上昇することもある。したがって、金利上昇が株価に与える影響は一律ではないという視点も持っておきたい。

「未来のコスト増」にどう備える ?

金利がある世界では、未来のコスト増が起きやすいことが理解できたのではないだろうか。ここでは、こうした状況にどのように備えるべきかについて解説する。

複利効果に注目しよう

まずは「複利効果」に注目してほしい。複利効果とは、投資で得たリターンを再投資することでリターンがリターンを生み、資産が増えるスピードがどんどん加速することを指す。この複利効果の恩恵を享受できれば、多少のコスト増があってもしっかりとカバーできる。

毎年5%のリターンを再投資すると……

例えば元本を1,000万円として、資産運用で得た毎年5%のリターンを再投資し複利運用すると、資産の増え方はどれくらいになるのだろうか。

経過複利運用 (1年複利)再投資しない場合
0年目1,000万円1,000万円
1年後約1,050万円約1,050万円
2年後約1,1030万円約1,100万円
3年後約1,158万円約1,150万円
4年後約1,216万円約1,200万円
5年後約1,276 万円約1,250万円
6年後約1,3406万円約1,300万円
7年後約1,407万円約1,350万円
8年後約1,477万円約1,400万円
9年後約1,551 万円約1,450万円
10年後約1,629万円約1,500万円
11年後約1,710万円約1,550万円
12年後約1,796万円約1,600万円
13年後約1,886万円約1,650万円
14年後約1,980万円約1,700万円
15年後約2,079万円約1,750万円
16年後約2,183万円約1,800万円
17年後約2,292万円約1,850万円
18年後約2,407万円約1,900万円
19年後約2,527万円約1,950万円
20年後約2,653万円約2,000万円
※税金などは考慮しない場合

リターンを再投資する複利運用だと10年後には約1,629万円になっているが、再投資しない場合は1,500万円にとどまる。20年後には、その差は約653万円とさらに大きくなる。

安定的にリターンを得るための投資法は ?

安定的にリターンを得るためには「インカムゲイン」に注目した資産運用の手法を選ぶのがおすすめだ。インカムゲインとは、保有を続けているだけでリターンが得られるタイプの収益のことを指す。

例えば外貨預金であれば、利息がインカムゲインに該当する。為替変動リスクはあるものの、円預金より高い金利収入を安定的に受け取れることが魅力の一つだ。

金利のある世界への備えを

ゼロ金利政策が定着していた日本では、金利のある世界への備えについて知識がない人が多い。2024年時点で40~50代であれば、将来に備えて資産運用を始めるタイミングとして決して遅すぎることはない。外貨預金を一つの選択肢に、ぜひ行動を起こしてみてはいかがだろうか。

(提供:大和ネクスト銀行


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