デジタル技術の進歩により、近年では介護施設の入居者を見守る革新的なサービスが生まれています。入居者の異常を検知したり、生体情報を取得したりするシステムの登場によって、施設スタッフの負担が軽減されるようになりました。
本記事では、介護施設向けの入居者の見守りサービスについて最新機能や事例を紹介します。
介護施設向けの入居者見守りサービスとは
介護施設向けの見守りサービスとは、介護施設に専用の機器やシステムを導入し、施設スタッフの負担を軽減するものです。施設に導入すると、スタッフは入居者の見守りをシステムに任せながら、他の業務ができるようになるため、介護サービス全体の質を高めることにもつながります。
AIやIoTなどのデジタル技術が進歩したことで、介護施設向けの見守りサービスは多様化しています。例えば、カメラやセンサーなどの機器を使って、入居者の異常を察知できるシステムも登場しました。
デジタル機器やAIシステムは24時間365日稼働できるため、スタッフだけで対応していた時よりも、介護施設の入居者を手厚くサポートできる可能性が高まります。
介護施設向けの入居者見守りサービスの種類
介護施設向けの入居者の見守りサービスには複数の種類があり、施設によって適したものは異なります。以下では、4つのタイプを紹介します。
1.カメラ型
カメラ型は、入居者の生活スペースにカメラを設置し、リアルタイムの映像を確認できるタイプです。介護居室の映像のチェックができるサービスでは、室外にいるスタッフが入居者の異常をすばやく察知して駆けつけることができます。
介護居室に設置する機器の外観によっては、「監視されている」といった印象が強くなります。入居者のストレスになる可能性があるので、機器の選び方や設置場所を工夫する必要があります。
サービスによってはプライバシー保護の目的で、入居者が映っている映像にモザイク加工をするシステムも見られます。
2.センサー型
センサー型は、役割に応じたセンサーを設置し、入居者や室内などの異常を知らせるタイプです。異常を検知すると、施設スタッフが駆けつけてくれる仕組みになっています。
具体的にどのような異常を察知できるのか、以下では例を紹介します。
<センサー型で察知できる異常>
・転倒につながる行動や姿勢
・離床行動(起き上がるなど)
・ドアや窓の開閉
・ベッドに不在
・熱中症のリスク(室内温度など)
センサーはあくまで異常を検知する機器なので映像は取得できません。映像でも確認をしたい場合は、カメラとセンサーが一体型になったシステムを導入する必要があります。
3.バイタル測定型
バイタル測定型は、体温や血圧などの生体情報を記録するタイプです。
通信機器と連携することで、体温や血圧を測って介護記録システムに自動で入力できます。紙に記載したりパソコンに入力したりする手間を減らせるので、施設スタッフの負担軽減につながります。時系列で分かりやすいように介護記録を残せるので、体温や血圧の変化から身体の異常を発見するのにも役立ちます。
ただし、バイタル測定型は生体情報のチェックに特化しているため、部屋の異常には気づけません。生活環境も見守りたい場合は、カメラ型やセンサー型との併用が必要になります。
4.ボタン型
ボタン型は、ナースコールの代わりになるボタンを室内に設置するタイプです。壁にとりつけるタイプや、持ち歩けるタイプなどがあり、ボタンを押すと施設スタッフに異常を伝えられます。
ボタン型の機器はシンプルで目立つので、高齢者などでも簡単に操作できます。しかし、病気で意識を失った場合や、転倒でボタンから離れてしまった場合などは、入居者自身でボタンを押すことができなくなります。
介護施設向けの入居者見守りサービスの最新機能
デジタル技術の進歩により、見守りサービスはどのように進化しているのでしょうか。ここでは、最新のサービスに搭載されている主な機能を紹介します。
見守り対象の異常検知
最新のサービスは、大量のデータから通常とは異なる状況を検出してくれる異常検知の範囲が広がっています。
例としては、入居者の姿勢から転倒のリスクを察知し、施設スタッフに知らせるようなシステムが挙げられます。サービスによっては、転倒前後の映像から転倒の原因を突きとめて、再発防止をアシストできる仕組みも見られます。
動画解析の進歩によって、現在では人の細かい動作や異常までを検知できるようになりました。動画解析の対象範囲も拡大しており、ベッド周辺だけではなく部屋全体の異常を検知できるシステムも登場しています。
生体情報の収集とデータ化
収集またはデータ化できる脈拍数や血中酸素飽和度(※)などの生体情報が増えていることも、最新のサービスに見られる特徴です。主な生体情報としては、呼吸数や心拍数などがあります。収集したデータを独自のアルゴリズムで解析し、健康状況をスコア化するようなシステムも登場しました。
他にも、リアルタイムの生体情報をグラフ化するなど、介護施設のデータ管理を助けるような機能も見られます。
(※)血液中に含まれている酸素の濃度を示す値のこと。
睡眠状態のセンシング
ベッドにとりつけるタイプのセンサー型では、睡眠状態をセンシング(センサーを用いて計測・分析をする技術)できるシステムも見られます。
このセンシングでは、睡眠の深さや呼吸数、心拍数などの生体情報、離床・入床の時間や回数などの生活リズムを分析できます。この分析結果を活用して病気の予兆となる症状を発見するのに役立ちます。
介護記録管理システムとの連携機能が備わっている場合は、取得したデータを自動的に記録することも可能です。
ロボットを通じたコミュニケーション
介護施設の最新のサービスには、コミュニケーションのサポート機能が備わったロボットも見られます。
例えば、友達感覚で会話を楽しむことができるロボットがあります。この他にも入居者の生活リズムを整えるために、あらかじめ設定した食事や入浴、服薬の時間を教えてくれる機能を持つロボットもあります。
介護施設向けの入居者の見守りサービス事例5選
見守りサービスに求められる機能は、介護施設によって変わります。介護施設向けのサービスには、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
1.まもあい/株式会社シーエーシー
『まもあい(mamoAI)』は、転倒につながる危険な姿勢をAIが検知して、事故発生前に異常を知らせてくれるサービスです。単に危険を察知するだけではなく、異常が発生した前後の映像を記録・保存する機能が備わっているため、実際の状況を確認しながら再発防止の対策も考えられます。
また、一人ひとりの入居者に合わせて、通知のタイミングを設定できる点も『まもあい』の魅力です。センサーマットに触れたタイミングといった決まったタイミングでなく、転倒の原因を突きとめて、その予備動作を通知のタイミングに設定できるため、転倒事故の防止に役立ちます。
参考:株式会社シーエーシー「まもあい」
2.ライブコネクト/株式会社Z-Works
『ライブコネクト』は、複数のセンサーから取得したデータを“見える化”し、パソコンなどの管理画面で一元管理できるサービスです。入居者の動作や生活スペースをデータ化できるため、転倒などの事故防止に役立ちます。
本サービスはドアの開閉を記録するセンサーや、生体情報を取得するバイタル測定器などにも対応しています。カメラやセンサーとも連携でき、生活スペース全体の見守りをサポートしてくれます。
参考:株式会社Z-Works「ライブコネクト」
3.福祉の森 見守りシステム/株式会社日立システムズ
『福祉の森 見守りシステム』は、バイタル測定器や各種センサーからの通知を1つの管理画面に表示できるサービスです。様々な機器に対応しており、例えばベッドにセンサーを設置することで、入居者の体動に異常があればすぐに知らせてくれます。
その他、赤外線センサーで介護居室にいる入居者の動きを検知して、動きを自動で録画できるカメラなどにも対応しています。ワンストップで入居者の見守り体制を構築でき、施設スタッフの負担を軽減することができます。
参考:株式会社日立システムズ「介護施設向け見守りシステム」
4.Neos+Care/ノーリツプレシジョン株式会社
『Neos+Care(ネオスケア)』は、入居者の危険動作を検知し、転倒事故を予防してくれる介護ロボットです。カメラ型とセンサー型を組み合わせたシステムで、「ベッドからの起き上がり」や「ベッドの柵越え」などの対象動作を設定すると、AIが事故の予兆を判断してくれます。
検知された危険動作はデータとして蓄積されるため、入居者の動作傾向を分析することも可能です。また、介護記録システムやナースコールとの連携機能も備わっています。
参考:ノーリツプレシジョン株式会社「Neos+Care」
5.ライフリズムナビ+DR./エコナビスタ株式会社
『ライフリズムナビ+DR.』は、介護施設にある全ての部屋のリアルタイムの状況を管理画面に一覧表示できるサービスです。センサーなどの機器と連携することで、入居者の位置や異常行動などを検知できます。
特徴として、睡眠状況を解析できる技術をベースにしている点が挙げられます。独自のアルゴリズムにより、睡眠状況を分析してくれるため、健康状態や睡眠環境の改善にも役立ちます。
参考:エコナビスタ株式会社「ライフリズムナビ®+Dr.」
介護施設に適した入居者の見守りサービスの導入を検討しよう
見守りサービスは日々進化しており、異常行動や事故を高精度で検知できるようになりつつあります。近年では複数のタイプを組み合わせて、監視から記録までを一元化できるようなサービスも増えてきました。
先進事例のように思えますが、AIやIoT機器を活用したサービスの中には、すでに介護施設で採用されているものもあります。スタッフの負担を抑えたい介護施設の管理者や、介護サービスの質を高めたい経営者などは、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
(提供:CAC Innovation Hub)