総括
FX「ペソ続落、司法改革はネガティブ。景気減速・物価低下」メキシコペソ見通し
予想レンジ 7.2-7.7
(ポイント)
*格付け引き下げでペソ下落
*市場は司法改革をネガティブなものと捉えている
*消費者物価は低下傾向
*経済指標は弱い
*トランプ大統領なら経済摩擦拡大か
*王者メキシコが4年振りに年足陰転
*弱い2Q・GDPで米墨成長見通しが逆転か
*6月は貿易赤字、黒字が定着しない
*円買い介入にテスラショックで続落
*IMF成長見通し下方修正
*フィッチ、メキシコの2024年の成長予測を2.2%に下方修正
*2026年USMCA改定への議論開始、米国大統領選挙でも言及されよう
*メキシコの格付けはジャンク債の手前
(失速)
年初来安値の7.073から回復も20日線越えられず反落。雲の下。7月の日銀介入後は最弱通貨、8月もまだ弱く、12通貨中11位。年間も11位。ボルサ株価指数は年初来7.09%安。10年国債利回りは、政策金利の引き下げもあり10%を割り込み9.89%。
メキシコ経済の減速と財政赤字拡大懸念、米経済の減速や11月の米大統領選をめぐる不透明感が続く。日銀円買い介入や日銀の利上げで円高が進んだ。今週は、モルガン・スタンレーの格付け引き下げで失速。
(小売売上弱く、物価は低下)
*6月の小売売上高は前年比3.9%減となり、1.7%減の予想を下回った。
*8月前半の消費者物価は前回の5.61%から5.16%へ低下、コア4.02%から3.98%へ低下し、追加利下げ観測が出てきている。
(メキシコに対する投資見通しを引き下げ、モルガン・スタンレー)
モルガン・スタンレーは、連邦政府の司法改革案による政府権限の強化への懸念からメキシコに対する投資見通しを「中立」から「アンダーウエイト」に引き下げた。政府による国営企業優遇や経済活動への介入強化により、民間・外資企業の事業環境は悪化する。ニアショアリング拡大にも障害となる可能性がある。最近の通貨安はメキシコに対するリスク回避の高まりと関係している。
憲法改正が承認されれば、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を含む国際的な約束を履行する同国の能力を損なう。これらの法改正は北米の長期的な競争力とニアショアリングの可能性に深刻な打撃を与え、米国とカナダのメキシコへの数十億ドルの投資を危険にさらし、2026年のUSMCAの見直しを複雑にする可能性がある。
司法改革の国会での議論は9月1日に始まる。シェインバウム次期大統領は「今後のビジネスに不安になることはない」と発言しているが、駐メキシコ米国大使は「メキシコの司法改革は米国との通商関係を脅かす可能性がある」と切り返している。
(メヒア中銀副総裁の見方=ハト派)
メヒア中銀副総裁は、7月のインフレ率が前年比5.57%に上昇した主な要因は非コアインフレだったと述べ、コア指標の継続的な低下は、物価全体におけるコア指標の比重が大きいため、より関連性の高いデータポイントだと指摘した。予想よりも経済が減速していることも、物価形成に下向きの影響を与えるだろうと付け加えた。
メヒア副総裁は、中銀が2024年末と2025年1Qの総合インフレ率の予想を上方修正したものの、金融政策が引き続き引き締め的であることから、インフレ率は来年後半までに目標に収束すると見ていると強調した。
さらに、メキシコと米国の製造業の弱さの影響でメキシコ経済の減速が続く可能性があり、インフレ鈍化につながる可能性があると付け加えた。「今年も来年も成長は続くと信じているが、予想よりも成長ペースは鈍化するだろう」と語った。メキシコペソの最近の急激な変動は、米国の景気減速や日銀の利上げへの懸念、キャリートレードの解消といった外部要因によるものだと説明できる。それでも、「メキシコペソへの投資状況は改善している」と述べた。