この記事は2024年10月11日にSBI証券で公開された「決算発表シーズン接近!上方修正期待の12銘柄」を一部編集し、転載したものです。
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決算発表シーズン接近!上方修正期待の12銘柄
東京株式市場は徐々に下値を切り上げる展開になっています。米国経済がソフトランディング(軟着陸)するとの見方が強まり、円安・ドル高基調となっていることが背景とみられます。また、石破新政権の経済対策に関する不透明感が後退したことも大きいようです。
もっとも、株式市場にとって重要なのは、企業業績の拡大が見通せるか否かではないでしょうか。予想1株利益の上昇(企業業績の拡大)は、日経平均株価上昇の大きなひとつの要因でした。その意味では、日経平均の予想1株利益がたびたび2,500円台の過去最高水準に乗せるようになったことは、株価が過去最高値を回復する条件のひとつが確立し始めたことを示していると言えると思います。
そうした中、2月末、8月末を決算期末とする小売・外食企業等の決算発表が佳境を迎えています。10月下旬以降はいよいよ、3月末、12月末を決算期末とする上場企業の7~9月期決算発表が本格化してきます。ここで、業績予想を上方修正する企業が増えると、株価全般が浮揚する可能性が高まってくると期待されます。
決算発表社数は10/31(木)が第1のヤマ場で、11/6(水)~11/14(木)には連日で3ケタ社数の企業が発表、特に11/8(金)、11/14(木)には各々500社以上の企業が発表を予定しています。当面は、決算発表から目を離せないでしょう。
そこで、今回の「日本株投資戦略」では、きたる10月下旬以降の7~9月期決算発表で業績予想の上方修正が期待できる銘柄を抽出すべく、スクリーニングを行ってみました。
(1)東証プライム市場上場の3月末決算銘柄
(2)予想EPSを公表しているアナリストが3名以上
(3)市場予想(Bloombergコンセンサス・以下同じ)EPSが過去4週間で2%超上昇
(4)25.3期1Q営業利益が以下の条件を満たしていること
・前年同期比で黒字転換または10%超の増益
・前年同期比増益率が25.3通期市場予想営業増益率を上回っている(黒字転換は優先)
・進捗率(対25.3通期市場予想営業利益)が前年同期(対24.3期営業利益)を上回っている(同上)
(5)市場予想25.3期2Q累計(中間期)営業利益が前年同期比20%超の増益
(6)市場予想25.3期営業利益が同会社予想を3%超上回っている
(7)市場予想26.3期営業増益率(対25.3期市場予想営業利益)が10%超
(8)取引所または日証金、当社による信用規制・注意喚起銘柄を除く
図表の銘柄は上記(1)~(8)の条件をすべて満たしています。
掲載は(6)の市場予想25.3期営業利益が同会社予想を上回っている比率が高い順としました。
一部掲載銘柄を解説!
ヤマシンフィルタ(6240)~建機用油圧フィルタで世界トップクラス。値上げ効果は想定以上?
■建機用フィルタが主力製品。
建機(建設機械)用フィルタが主力製品。建機には、油圧回路に用いられる作動油、燃料であるディーゼル・オイル、エンジンの駆動に必要な潤滑油など様々なオイルが使われています。建機にとって最大の弱点は、故障の原因になるオイルの汚れ(故障原因の7割と言われます・会社側)ですが、フィルタでろ過することにより、オイルの汚れを防ぐことができます。人体にたとえれば、オイルは血液、フィルタは腎臓と表現することができます。
建機用油圧フィルタでは、世界トップクラス、国内シェア70%(22年8月・会社資料より)を誇っています。建機の世界最大手キャタピラーが最大の取引先(24.3期)です。また、耐久性を高めた新製品がコマツ(6301)の油圧ショベルにも採用されています。
部門別売上高(24.3期)では、建機用フィルタが全体の78%を占めています。うち、建機の新車に搭載されるライン品が41%、交換部品である補給品が59%です。建機をコピー機にたとえれば、補給品はトナーに相当し、利益率はライン品より高いと推測され、当社ビジネスに安定性をもたらしています。
その他、産業用フィルタ(工作機械、冷凍用圧縮機、産業機械、輸送機等向け)、プロセス用フィルタ(半導体、化学、食品向け)、エアフィルタ(ビル・建物、工場他向け)等にも展開。「建機用フィルタ」(産業用、プロセス用を含む、24.3期)の国内売上高比率45%、に対し、北米21%、中国8%、アジア13%、欧州12%とグローバルに展開しています。
■好採算の補給品が増加。業績予想上方修正に期待
25.3期は売上高176億円(前期比1.9%減)、営業利益14億円(同0.1%減)と減収減益の会社計画です。
「建機用フィルタ」(産業用、プロセス用を含む)の販売減や人件費の増加を見込んでおり、価格転嫁では吸収しきれないとの読みです。なお、取引の6割が円建てで、為替変動の影響はあまり出ない仕組みになっています。建機用フィルタでは、ライン品、補給品とも減少を見込んでいます。
ただ、25.3期1Qは好調。売上高48億円(前年同期比12%増)、営業利益5.9億円(同430%増)と好調でした。建機用フィルタのうち、利益率の高い補給品が交換需要増大で前年同期比42%増となったことや、値上げの効果が大きかったことが要因です。環境保全や長寿命化、高付加価値化に対応した各種新製品の製品供給も始まっている模様で、今後も収益力の向上が期待できそうです。
1Q決算発表時点では、会社側は25.3通期会社計画を修正しませんでした。しかし、通期で減少を見込んでいた販売数量が1Q時点では増加方向に上振れし、価格転嫁効果も通期で見込んでいた分を1Qだけで獲得しています。会社予想は保守的とみられます。25.3期の会社予想営業利益14.1億円に対し、市場(Bloombergコンセンサス)では、20億円超が見込まれています。
25.3期2Qの決算発表は11/5(火)の予定です。
▽日足チャート(1年)
▽業績推移(百万円)
大真空 (6962)~『水晶デバイス』大手。欧米での販売拡大を目指す。会社計画は保守的?
■機械の心臓的役割、『水晶デバイス』大手
『水晶デバイス』の大手メーカー。
『水晶デバイス』は、水晶を材料とした電子部品です。水晶は振動の安定性に優れている特性を有します。水晶デバイスは、機械の周波数の基準となるリズムを生み出し、システム全体を正常に動かしています。人間にたとえると「心臓」のような役割です。半導体が稼働するのにも必要な部品であるため、スマホから医療機器、産業ロボットなど広く使用されています。
■利益率No.1の水晶業界のリーダーへ。欧米での販売拡大を目指す
2000年代前半、日本の水晶メーカーの世界シェアは70%にのぼっていました。しかしその後、中国や台湾の水晶メーカーが低価格を武器にシェアを拡大。業績が軟調な時代が続きました。価格競争を避けるため、高付加価値市場へのシフトを行いましたが、台湾の水晶メーカーの参入などで、再び難しい状況となりました。
現在は、信頼性向上(性能)と価格競争力(値段)の両立で、利益率No.1の水晶業界のリーダーを目指しています。生産効率向上のため、新工場の竣工など設備投資や、オリジナル生産方式の開発を実施。また、AIサーバや自動運転等の開発拠点が集中する欧米での販売比率向上も目標です。
【ご参考】
欧米比率の会社計画 ▹ 25.3期:約30%、27.3期約40%
24.3期地域別売上高構成比 ▹ 中国31.3%、台湾26.5%。アジア13.1%、日本12.8%、欧州9.9%、北米6.3%
■1Qは堅調!会社計画は保守的?
今期1Q業績は堅調。通期会社計画に対する進捗率は、売上高24%、営業利益38%で、為替差益の押し上げ等により経常利益と純利益は100%超です。台湾や中国で民生向けの販売増、欧米での車載向けの販売増が寄与しました。
価格下落の影響で、期初の今期(25.3期)計画は前期比30%の減益でしたが、1Qでは前年同期比12%増と増益。会社側は、「中国国内の競合他社に追従する形で、価格を下げざるを得ない状態になった。しかし、他社製品の製造が顧客の要望を満たしていない部分があり、当社の受注数が計画より増えています」と語っています。
1Q発表では通期計画の上方修正は行われず、11/5(火)の2Q以降に期待を持ち越している状態です。
▽日足チャート(1年)
▽業績推移(百万円)
▽当ページの内容につきましては、SBI証券 投資情報部長 鈴木による動画での詳しい解説も行っております。東証プライム市場を中心に好業績が期待される銘柄・株主優待特集など、気になる話題についてわかりやすくお伝えします。