本記事は、岡野隆宏氏の著書『管理職の手帳 BASIC100』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

マネジメント
(画像=Mikhail Vorobev/stock.adobe.com)

コントロールとマネジメントの違いを知る

コントロールとマネジメントは、いずれも「管理」という意味合いを持っています。

コントロールは設定された目標に対して、日々の活動が計画通りに進んでいるか、成果につながっているかを確認し、必要に応じて修正を加え管理します。

一方、マネジメントは組織目標の達成に向け、経営資源の5要素を念頭に計画、組織、実施、統制、調整するプロセス管理です。

日本語に訳すとどちらも「管理」なので、違いがよく分からないかもしれません。

コントロールは自分自身が対象で、自分の仕事の管理を指します。

つまり、目標達成に向けて自分が正しくPDCAサイクルを回しているか、ということです。

マネジメントは自分以外の周囲、主には部下の業務推進に問題がないか、つまり部下がPDCAサイクルを正しく回せているか、が管理の対象となります。

ちなみに、マネジメントは組織の管理・組織作りとよく言われ、管理職にはこのような包括的な人の管理=マネジメントが期待されています。

マネジメントには様々なスキルが必要とされますが、中でも「効果的な意思決定を下す技能」と「部下を指揮・指導し、動機づける技能」は、管理職にとって必須の技能と言えるでしょう。

意思決定技能を高めるには、日頃からの課題整理、解決方法のバリエーション・アップ、面子にこだわらない潔さ、目標達成へのこだわり、などを強化することが挙げられます。また部下への動機づけには、部下本人、さらに言えば人間心理の理解が重要と考えられるでしょう。

自己コントロールに注意しながら、管理職の役割であるマネジメントに注力し成果につなげることが大事です。

POINT
マネジメントはコントロールと同義だと考えている日本人は少なくない。しかし管理職はイコール統制者ではない。チームに最高の成果を出させるのがマネジメントである。管理職が優先すべきは抑制ではなく伸長にあると心得よ。

任せるマネジメントと、放任との違い

よく見られるケースは管理職自身の多忙さから、部下を放置してしまっているというケースです。原因としては多忙さのほかにも次のようなものがあります。

  • 優先順位のミス~上司が自分の業務を優先し過ぎ、部下の指導やサポートを後回しにする

  • マネジメント・スキルの不足~効果的な指導方法・ツール・フィードバックなどが不足している。また「見て覚えろ」という昔ながらの(関与が希薄な)スタイルのみにこだわっている

  • コミュニケーションの苦手意識~部下との対話が苦手で避けてしまう

  • 過度な信頼~部下の力量を過信している。また、部下の自発性を重視し過ぎ、任せておくほうがよいと誤解している

  • 低い期待~「管理しても成果が上がらない」というネガティブな思い込みがある

  • 組織の影響~組織全体に部下マネジメントを軽視する風土があり、上司もその影響を受けている

部下を放置しないためには、時間管理と優先順位の見直し、マネジメント・トレーニング、自社の人材育成の風土強化などが挙げられますが、同時に私はエンゲージメント強化が必須であると感じています。「エンゲージメント」とは、昨今注目されているキーワードで、社員の会社に対する愛社精神、そこから発展させ社員と会社が一丸となり、双方の成長に貢献し合う関係などの解釈があります。

しかし、この言葉が本来持つ意味が「つながり」であることを念頭におけば、社員と会社間のみならず、上司と部下間もつながりは不可欠であるはずで、コミュニケーション促進をベースにここを強化していくことは外せません。

何はともあれ部下とのコミュニケーションに少しでも時間を確保・増加させることです。

POINT
愛情の反対語は無関心であると言われるように、放任とは無関心だ。部下に仕事を任せ切るとは、関心を持ちつつ口出しはしないことである。部下に関心のない放任主義者は管理職としての責任を放棄している。

マネジメントで見るべき「仕事」と「人」

管理職の役割を一言で表現するならば「成果を創出する」ということです。

リーダーシップやフォロワーシップを発揮することも、他部門との連携を強化するのも、すべてはより高い成果を生み出すために行うことになります。

マネジメントは大別すると次の2つに分けられます。

《ワーク・マネジメント》 方針の明示・理解・浸透、目標設定、計画化、役割分担、などを管理することで、めざす売上や品質、コスト、スピードなどを実現する

《ピープル・マネジメント》 部下が意欲的、主体的に仕事に取り組み、そして判断し、各自の強みを発揮することを促すシンプルに言えば、ワークは「仕事」、ピープルは「人」という解釈になります。

マネジメントというと、部下のマネジメントや周囲とのコミュニケーションを促進することを連想する人がいます。しかし、仕事そのものが正しく管理できなければ、そこに関係する組織、人材を管理できないでしょう。

まずは「ワーク・マネジメント」ありきです。適切な目標を設定し、理想とする仕事を実現しましょう。また以前に比べ、昨今は人の管理に対する重要度が増していると同時に、その手法も変わってきています。

管理イコール監視という部下管理のスタイルが長く続いていましたが、これではVUCA時代における環境変化のスピード、また業務難易度の向上についていけません。

部下との心の距離を縮め、見張るような態度よりも寄り添うことが求められており、本人の可能性を引き出すサポートが必要な時代となっています。そのためにはコミュニケーション手法、コーチング・スキルなどを効果的に活用した「ピープル・マネジメント」の充実化が管理職には期待されます。

「仕事」と「人」を見るのが管理職です。

POINT
「ヒラメの目をタイの目にすることはできない」と後藤新平が言ったように、人の個性は仕事にも表れる。異なる個性の集団が同じゴールを目指すのがチームだ。管理職は部下の個性を尊重しマネジメントすることを求められる。
『管理職の手帳 BASIC100』より引用
岡野 隆宏
株式会社新経営サービス人材開発部シニアコンサルタント。広告会社や研修会社で、営業・人事・教育に関わる実務を担当。その経験を基に、現在は「社員のモチベーション向上」「関係性強化」「未来志向」などをテーマに主に中堅・中小企業の組織・人材開発支援を行っている。クライアント企業に対するコンサルティングや研修のみならず、外部団体での講演等も精力的に行っている。受講者からは「分かりやすく、現場経験に基づいた話に説得力、納得感がある」と定評がある。

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