本記事は、加藤俊徳氏の著書『老害脳』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の中から一部を抜粋・編集しています。

シニア
(画像=folyphoto / stock.adobe.com)

「老害」をなくし認知症を予防する「高齢化先進国」日本の未来

日本は世界の高齢化社会をリードしている国ですが、高齢化しているのは決して日本だけではありません。

東アジアは遅かれ早かれ高齢化と人口減の波に飲まれていきますし、出生率を見る限り、数十年後には日本よりもむしろ中国や台湾、韓国などのほうが厳しい状況に追い込まれている可能性があります。

そして、脳の老化自体はどの人種であろうと、どこの国であろうと起きている問題でもあります。その上で、現在の日本は数多くのケースを抱えた高齢化の、そして、脳の老化に関する「先進国」だといえるでしょう。そして、日本のような1億人を超える人口と経済規模を持っている国が、この難題をどう乗り越えていくのかについては世界中の注目を浴びています。高齢化が進み、人口が減っても、いかに経済を動かし価値を生み出す力を可能な限りキープしていくか、言い換えれば、いかに1人当たりの生産性を上げ、効率良くしていくかを考え、あれこれとテストをしてみる最先端モデルになり得ると思います。

これは、決して嫌みやヤケの類いで述べているのではありません。島国であり文化的に独特で、言語の壁も厚い日本ですが、このまま高齢化と脳の老化が進むままにしておけば、やがて数少ない若い人たちは活力の高い海外に出て行ってしまうでしょう。そして、日本に魅力を感じてやってくる外国人も少なくなる危険性があります。こうなってしまうと、社会は、より内向きで活力の失われた状態になり、ただでさえ先行きの見通しが明るくない状況が、より厳しいものになってしまいかねません。

だから私は、現在の日本にとって、どうやって「老害脳」化を止めるかは、認知症を食い止めることにもつながるだけではなく、最終的に、日本の将来を左右する案外大きなテーマなのではないかと考えるのです。

中間層(老害予備軍)こそが果たす重要な役割

現在進行形で「老害」の被害を受けている、あるいは、過去に受けた経験があり、もうこりごりだ、と考えている方も少なくないでしょう。なぜ今更「老害」とつながらなければいけないのか、そんなの面倒だしおっくうだと感じられるかもしれません。

しかし、年を重ねるにつれて、個人差はあれど、誰しも脳は老化していきます、そして、やがて「老害」的傾向が強くなり、結局「老害脳」になるリスクを抱えています。

だからこそ、「老害」について考え、問題について関わっていくことは、自分の「老害」化を防ぎつつ、自分自身の力にも変えていくメリットがあると思うのです。

その1番のメリットは、自分の認知症を予防できることです。

認知症は、40歳前後から20〜30年かけて、運動不足や睡眠不足、睡眠障害、閉塞性睡眠時無呼吸症、高血圧、糖尿病などの病気が積み重なり、発症すると考えられています。つまり、40歳前後から認知症患者が急激に増加する78歳までの間で、自分自身が「老害脳」にならないことが、結果として自分の認知症を予防することになるのです。

60代となった私は、「老害」についてあれこれ考えを巡らせました。そして、最終的に考えたことがあります。

それは、「老害」の被害者でもあり、今後、加害者の側面も持ってしまう可能性のある、中間層(つまり老害予備軍)が果たす役割が特に重要であるということです。

多少なりとも「老害」の加害行為がどのようなものかを身をもって体験しており、自分が被害者だった記憶も生きています。このような立場にある人々が、「老害」加害者になってしまった人たちから若い人たちを守るべき立場になります。そのため、できるだけ脳の老化の悪影響を表出させないように努力することが必要となってきます。

中間層である人々が、そのまま「老害」に向かって一直線に老化しないよう、メンテナンスしながら、自発的に脳の老化を遅らせる習慣を身に付けたいところです。

そして、「老害」のせいで萎縮し、本来の能力を発揮できていない若者たちを助けていけるようにするべきなのです。

『老害脳』より引用
加藤 俊徳
新潟県生まれ。脳内科医・小児科専門医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。 株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。「脳番地トレーニング」や「脳活性助詞強調おんどく法」を提唱・開発・普及。小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。

14歳のときに「脳を鍛える方法」を知るために医学部への進学を決意。1991年、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測「fNIRS(エフニルス)」法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。帰国後、帰国後、慶應義塾大学、東京大学などで脳研究に従事し、「脳の学校」(https://www.nonogakko.com/ )を創業。

現在、港区白金台に「加藤プラチナクリニック」を開設し、独自開発した加藤式MRI脳画像診断法を用いて、強み弱みなどの脳個性や脳タイプ、適職を診断し、薬だけに頼らない脳処方を行う。

著書・監修書の累計は300万部を超え、『頭がよくなる! はじめての寝るまえ1分おんどく』(西東社)、『1日1文読むだけで記憶力が上がる!おとなの音読』(きずな出版)、『1万人の脳を見た名医が教えるすごい左利き』(ダイヤモンド社)、『一生頭がよくなり続けるすごい脳の使い方』(サンマーク出版)など多数。
*著者による脳画像診断を希望される方は、加藤プラチナクリニック(https://www.nobanchi.com/ )までご連絡ください。

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