2024年は気象庁によると、全国的に暖冬であるという。長い目で見ても、過去100年間で日本における冬の平均気温は1.19度上昇し、1日の最低気温が0度未満となる冬日も18日減少している。
また、近年の冬の傾向として、寒暖差というのもキーワードになるだろう。朝晩と日中の寒暖差、日によっての寒暖差など、生活の中で温度の変化に影響を受けるタイミングは多い。
このような気候の変化で昨今のファッションブランドの秋冬戦略はどのように変わっているのだろうか。多くのファッションブランドやファッションメディアでは、暖冬に合わせて軽量アウターに力をいれる動きが見られる。また、寒暖差にも細やかに対応するべく、取り外し可能なライナー付きのアウターを発売するなど、昨今の冬に対応したアイテムが増加傾向にある。
軽量アウターの代表格とも言えるのが、薄手のダウンジャケットであろう。軽量化されたダウンジャケットはもはやアウトドアブランドだけでなく、ファストファッションブランドでも頻繁に見かけるようになった。
ダウンの軽量化と性能の指標となるのが、フィルパワー(FP)である。フィルパワーとは羽毛1オンスをシリンダーに入れた際の体積を立法インチで表したものであり、この数値が大きいほど暖かいダウンであることを表している。一般的にこの数値が700以上のものは高品質であるとされている。例えば、アウトドアブランドの「モンベル(mont-bell)」は1000FPのダウンを用いて、軽さと暖かさを両立している。
ダウンを軽量化するために工夫がなされるのは、羽毛だけではない。「ユニクロ(UNIQLO)」では、羽毛を入れるためのダウンパックを排除することで軽量化に成功している。
日々の気温の変化に対応する取り外し可能なライナー付きアウターも普及しつつある。屋外と屋内の行き来や時間帯による気温の変化に合わせて、ライナーを脱ぎ着する便利なアイテムである。特に近年街中でよく見かけるようになったものとして、ライナーをアウターの上から着るコーディネートがある。ライナーとは元々、裏地を表す言葉であり、アウターの内側に取り付けて暖かさを担保するのが本来の用途であった。しかし、昨今の暖冬の傾向も相まってか、取り外したライナーをアウターの上から着ることでレイヤードを楽しむ着こなしが少しずつ広まりを見せている。ライナーを内側に取り付けない分、暖かさは若干減少してしまうが、冷え込みがそこまで厳しくない日は十分快適に過ごすことができる。
このように、冷え込みの緩やかな日や、寒暖差の大きな日が続く近年の状況に対応するように、人々のニーズや着こなしも変化を見せている。