「H&M」は中国での不買運動後に3割の店舗を閉鎖
(画像=「セブツー」より引用)

「ユニクロ(UNIQLO)」「GU(ジーユー)」などを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は、英国の「BBC」の取材に対して、中国・新疆ウイグル自治区で生産された新疆綿を使用していないと明言した。これまでファーストリテイリングとして明言を避けてきたが、トップ自らが不使用を明言した。

新疆綿は高品質のコットンとして知られているが、生産背景にある中国による人権問題が指摘されている。中国はイスラム教徒の少数民族ウイグル族への弾圧を強めており、新疆綿の生産過程において強制的に労働させている疑いがもたれている。米国やEU、さらに英国やカナダらはこの問題に対して強く非難しており、中国政府当局者らへの制裁を決定している。

スウェーデンのファストファッション「H&M(エイチ&エム)」は、2020年9月に新疆ウイグル自治区に工場も持つ中国企業との取引を停止すると表明したところ、中国の大手ECサイト「Tモール(アリババ)」と「JD.COM(京東)」で「H&M」の商品が検索できない状態になるなど、中国国内で大規模な不買運動が起きた。

2020年当時、「H&M」は中国国内で約400店舗を展開していたが、2024年11月時点で約280店舗と3割の店舗を撤退している。2024年8月末時点で926店舗を中国本土で展開している「ユニクロ」にとって、柳井正氏の今回の発言が不買運動に繋がれば大きな打撃になることは免れない。

来年1月にはトランプ次期大統領による米国の政権が発足するが、中国製品に対する関税などを巡って両国の関係は一段と先鋭化していきそうだ。ファーストリテイリングは2021年1月に米国の税関によって、新疆ウイグル自治区で生産された新疆綿に対する米国の輸入禁止措置に違反した疑いで、「ユニクロ」のシャツが差し止められている。米国は新疆ウイグル自治区で生産された綿製品の輸入を禁止している。

その後、柳井正氏は2021年4月に開催された記者発表会で、「当然、全部の工場に関して、あるいは綿花の生産に関して監視をしています。そういった問題があったら即座に取引停止しています。それ以上は、人権問題というより、政治問題なのでノーコメント」としていた。

中国のSNSでは、「中国はユニクロが必要か?ユニクロは中国が必要か?」「ユニクロの最大の市場は中国にあります。中国市場の重要性を知るべきです」などといった投稿もみられ始めている。ファーストリテイリングの2024年8月期の通期決算で売上高6770億円を稼ぎ出す中国事業は、今期も上期、下期、通期ともに大幅な増収増益を見込んでいる。このタイミングで「新疆綿不使用」を明言した意図はどこにあるのか、柳井正氏の今後の動向を注視しなくてはならない。