この記事は2024年11月29日に「第一生命経済研究所」で公開された「都区部版・日銀基調的インフレ率の試算(2024/11)」を一部編集し、転載したものです。


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目次

  1. 刈込平均・加重中央値・最頻値は再上昇、低変動CPIは横ばい圏
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刈込平均・加重中央値・最頻値は再上昇、低変動CPIは横ばい圏

以前のレポートで試算した①東京都区部版の基調的インフレ率3指標、②日銀が賃金から物価への波及度合いを分析する際に利用した低変動品目CPIについて、本日公表の11月都区部CPIを用いて計算した。

計算値を見ると、刈込平均値(全国ウェイト換算)は10月:+1.7%→11月:+2.0%、加重中央値(全国ウェイト換算)は10月:+0.7%→11月:+0.8%、最頻値は10月:+1.3%→11月:+1.4%(いずれも前年比)となった。前月に大きめの低下となった刈込平均値が再上昇しているほか、加重中央値、最頻値はそれぞれ0.1ptの上昇となった。刈込平均の上昇は電気・ガス補助金縮小の影響(11月は電気代が刈込品目となる一方、ガス代が刈り込まれていない)が大きく、一定程度割り引いてみる必要がある。全国版の低変動品目CPIは9月:+1.2%→10月:1.1%、都区部では10月+1.3%→11月:+1.3%となった。

総じて、これらの指標に基づく物価の基調に対する評価は横ばい圏である。2023年半ばごろからこれらの指標は鈍化が続いたが、足元では全般的に踏みとどまっている印象も受ける。上昇が明確に加速しているわけではないため、日銀が利上げを急ぐ内容ではない一方、利上げをためらうような内容でもない。市場では12月or来年1月の利上げが有力視されており、その見方にも変化を及ぼさないだろう。

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(参考文献)

  • 星野(2023)「東京都区部版・日銀基調的インフレ率の試算」第一生命経済研究所 Economic Trends

  • 星野(2024)「日銀の「第二の力」指標を再現してみた」第一生命経済研究所 Economic Trends

  • 川本・中浜・法眼(2015)「消費者物価コア指標とその特性 — 景気変動との関係を中心に —」日銀レビュー・シリーズ、15-J-11

  • 白塚(2015)「消費者物価コア指標のパフォーマンスについて」日銀レビュー・シリーズ、15-J-12

  • 尾崎・神保・八木・吉井(2024)「賃金・物価の相互連関を巡る最近の状況について」日銀レビュー 2024-J-2


第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 星野 卓也