本記事は、松田幸之助氏、吉川充秀氏の著書『ヤバいくらい成果が出る人財教育の仕組み化』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=cacaroot / stock.adobe.com)

教育には教えるタイミングが存在する

■ 必要は発明の母

教育において、インプットだけでなくアウトプットが大切といわれます。これは学んだことを実践し、成果を確認するプロセスが必要というもの。しかし、アウトプットと同じくらい大切なのに、意外と見逃されていることがあります。それは「教えるタイミング」です。

以前、会長の吉川に「吉川さんのように時間を有効活用できるようになるにはどうすればいいですか?」と質問をしたことがあります。その時、吉川は「時間が足りなくなると自然とできるようになるよ。必要は発明の母だ」とシンプルに答えました。当時の私は「そんなものなのかな」と思っていました。

しかし、今では、コンサルティングやセミナー講演会、YouTubeのコンテンツ作成や撮影、本の執筆、さらに社内の会議やミーティングなど、時間がいくらあっても足りない状況です。そうなると自然に「もっと効率的に仕事を進めるには?」というアンテナが立ち、ChatGPTなどの生成AIを活用するようになりました。今なら、吉川が言っていた「必要は発明の母」という言葉の意味が痛いほどわかります。「必要」があるからこそ、それを解決するための方法を見つけ、発明するのだと。

この「必要は発明の母」という考え方は、教育にも通じるものがあります。私たちのベクトル用語集には、「教えるタイミング」という用語があります。


【教えるタイミング】

人を育てる時は、教えすぎてもダメ、教えなさすぎてもダメ。本人がその気になったときに教えるのが正しい。人がアドバイスを欲しがっている時に教えること。

つまり、本人が望んでいない教育は「教育効果が薄い」ということです。

先ほどの吉川への質問は約10年前のものですが、当時の私は「吉川みたいに時間を有効活用したい」と強く思っていたので、「必要は発明の母」という言葉が今でも記憶に残っています。もし、吉川が一方的に「時間を有効活用するためには必要は発明の母だ」と教えていたら、おそらく私は覚えていなかったでしょう。このように、「教えるタイミング」が教育では非常に重要なのです。

入社後すぐにオリエンテーションe‒ラーニングを行うのも、入社直後というのは新入社員が会社のことを知りたいと思うタイミングだからです。同様に、マニュアルやチェックリストをもとにした教育も、入社後すぐに実際の業務を学びたいというニーズに応えるものです。

相手が「必要としている」からこそ、効果的な教育ができるのです。

この「教えるタイミング」を意識することで、教育効果を最大化することができます。実際に、自ら「研修に行きたい」と言って参加する社員と、強制されて仕方なく参加する社員とでは、持ち帰ってくる学びの量がまったく異なります。現在のプリマベーラでは、「行きたい」と希望する社員には積極的に社外研修に参加してもらっていますが「行きたくない」という社員を無理に行かせることはしていません。

もちろん、「良いことの強制」としての教育は行います。会社のルールとして定めている勉強会や研修には参加してもらいます。そうしないと「井の中の蛙」になり、「自分はすごい」と勘違いしてしまう恐れがあるからです。

教育のすべてを強制するのではなく、「教えるタイミング」を意識して社員教育を行うのが、プリマベーラの教育の特徴です。なぜなら、「業績=スキル×モチベーション×ベクトル」だからです。自分が「知りたい・学びたい」と思っているときは「モチベーション」が高い状態にあり、そのタイミングで学ぶことで、スキルが大きく磨かれ、教育効果が高まるのです。

チェックリスト化で実行確率を上げスキルを磨く

■ 「成果が出たこと」をチェックリスト化する

「教えるタイミング」の重要性は理解していただけたかと思います。しかし、すべての教育を「相手が望むタイミング」で行うのは、手間と時間がかかりすぎるという現実もあります。その対策として効果的なのが「チェックリスト」です。

私たちは、チェックリストを「何をすべきかが明記されたもの」と定義しています。例えば、私たち経営サポート事業部では「成果の出るチラシのつくり方チェックリスト」が存在します。このチェックリストは、私がこれまで試行錯誤を繰り返して得た「反応率を高める」方法をまとめたもので、具体的な22個のチェック項目が記されています。

この「全22個のチェック」をもとにチラシを作成すれば、誰でもミスなく、成果の出るチラシを作ることができるのです。

先ほどお伝えしたように、プリマベーラのマニュアルやチェックリストは「成果が出たこと」がまとめられています。

まずは、プリマベーラが過去に取り組んで成功させた「成果の出るやり方」を守ることが重要です。これが「守破離」の「守」の部分です。チラシのつくり方で言えば、私や経営サポートメンバーが過去に「失敗した」方法を、再び新入社員が経験する必要はありません。入社したばかりの社員でも、この「成果の出るチラシのつくり方チェックリスト」に従って作成するだけで、私が5年かけて試行錯誤した時間を大幅に短縮することができるのです。これほど効果的で効率的な教育方法はなかなかありません。

IT業界には「車輪の再発明」という言葉があります。無駄な作業に時間や労力を費やしている様子を、皮肉を込めて表現する言葉です。人生でも仕事でも「遠回りした方が良い失敗」もあれば、「遠回りする必要のない失敗」もあります。成果の出るチェックリストを活用することで、車輪の再発明を防ぎ、無駄な遠回りをせずに成果を出すことが可能になります。

『ヤバいくらい成果が出る人財教育の仕組み化』より引用
松田幸之助(まつだ・こうのすけ)
株式会社プリマベーラ経営サポート事業部社長執行役、兼CCO(Chief Consulting Officer:最高コンサルティング責任者)。
1989年生まれ。市川市立平田小学校卒業。家庭が貧しく13歳から働いて生計を立て、19歳で株式会社プリマベーラにアルバイト入社。アルバイトから、年商51億円企業のトップコンサルタントに上り詰める。延べ400社、10,000名以上の社長、幹部に経営指導を行い、業績アップを実現。経営者・幹部目線でのアドバイスはわかりやすく、実践しやすいと高く評価されている。指導先には日本経営品質賞を受賞するトップ企業も含まれる。
著書にベストセラー『ヤバい仕組み化』(共著、あさ出版)。
吉川充秀(よしかわ・みつひで)
株式会社プリマベーラの創業者。現取締役会長、兼CGO(Chief Gomihiroi Officer:最高ゴミ拾い責任者)。
1973年、群馬県生まれ。横浜国立大学卒業後、地元のスーパーに入社。24歳でビデオショップを開業し、26歳で高額納税者に。2008年、株式会社武蔵野の小山昇氏の実践経営塾に入会。先輩社長から「スピード違反」と言われながらも、爆速で経営の仕組み化を進め、入会後1年2ヶ月という史上最速で改善事例発表企業に選出される。以降、経営計画のチェック講師を10年間歴任し、延べ2,000人の社長の経営計画を指導。2022年、小山昇氏が認定する、受講料176万円の実践経営塾の講師の7人のうちの1人に選ばれる。2023に代表取締役を退任し、現職。2025年3月現在、プリマベーラは従業員数400名、4事業部18業態52店舗を展開し、年商51億円。15期連続増収増益を更新中。ライフワークはゴミ拾いであり「ゴミ拾い仙人」としてメディア出演、講演活動多数。著書に『ゴミ拾いをすると、人生に魔法がかかるかも♪』『ヤバい仕組み化』(共著)(いずれも、あさ出版)、『自分で自分の機嫌をとる習慣♪』(かや書房)。

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『ヤバいくらい成果が出る人財教育の仕組み化』
  1. 最速・最短で成果が出る業績方程式とは
  2. 仕組み化経営×生成AIで爆速回転させる
  3. マネジメントとは実行確率を上げること
  4. 教育には教えるタイミングが存在する
  5. ラーニングピラミッドで勉強の成果を最大化
  6. コミュニケーションとは実行確率を上げる手段
  7. 「仕組みが人を動かし、人が仕組みを動かす」がもたらす成果とは
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