この記事は2025年11月19日(水)に「羊飼いのFXブログ」で公開された「西原宏一氏の現在の相場観とFXトレード戦略」を一部編集し、転載したものです。


FXトレード戦略
(画像=InfiniteFlow/stock.adobe.com)

2025年11月19日(水)の午前11時すぎに、現役トレーダーの西原宏一さんから聞いた最新の相場観と戦略を紹介する。

西原宏一
青山学院大学卒業後、1985年に大手米系銀行のシティバンク東京支店へ入行。1996年まで同行にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後、活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラーなどを歴任後、独立。ロンドン、シンガポール、香港など海外ヘッジファンドとの交流が深く、独自の情報網を持つ。

現在の為替相場の傾向や相場観

今月、上昇が際立っているのがメルマガにて推奨していたスイスフラン。スイスフラン/円は、ターゲットの200円まであと4円強(高値は195.60円)と迫る強さをみせており、普段欧州通貨に興味のない参加者の間でも話題となっている。

このスイスフラン急騰の材料となったのが関税だ。スイスが米国関税の39%から15%への引き下げ交渉を民間主体で進めたことが、スイスフランの上昇を加速させた展開。

FT(フィナンシャルタイムズ)の報道によれば、「スイスが米国から課せられた39%の懲罰的関税を15%程度まで引き下げる交渉で前進。政府の外交が行き詰まる中、ロレックスやリシュモン(※)などの企業トップがホワイトハウスで直接交渉し、突破口を開いた」としている。

※リシュモン(Richemont)とは、スイスに本拠を置く高級コングロマリットのこと。カルティエ、ヴァン クリーフ&アーペル、IWC、ジャガー・ルクルト、パネライ、ピアジェなどの高級時計・ジュエリーブランドを保有

スイス政府とトランプ大統領の関税交渉が決裂し、39%という数字で行き詰まっていたところ、ロレックスなどの民間企業が突破口を開いたところが素晴らしい。

警戒すべきは、ユーロ/スイスフランにおけるSNB(スイス国立銀行)の介入。

米ドル/スイスフランでは、米国の目が気になり介入しづらいが、ユーロ/スイスフランが0.9200フランを割り込んでくると、SNBが対ユーロでスイスフラン売り介入してくる可能性が高まるので警戒が必要。実際、先週末、一時0.9200フランを割り込んだが、あっさり0.9260フランレベルまで持ち上げられている。

現在の為替相場の戦略やスタンス

先週大きな話題となったのが、マイケル・バリーのAI投資への警鐘。

マイケル・バリーは、2008年のリーマンショック(住宅バブル崩壊)を予言し、世界経済が崩落する方に賭け続けて巨万の富を得た伝説の投資家。彼の投資手法は、映画「マネー・ショート華麗なる大逆転」(2015年日本公開)の主人公のモデルとなっており、ゴールドマン・サックス、リーマン・ブラザーズ、バンク・オブ・アメリカ、シティバンクなど世界の名立たる金融機関を相手に逆張り(ショート)で勝利を収めた。

先週、リーマンショックから17年ぶりにX(旧ツイッター)で活動を再開し、AIバブルに対する警告を発信している。具体的には、NVIDIAとPalantir(パランティア)の株に対してショートポジション(空売り)を取っていることが証券取引委員会の文書で明らかになり、緊張感が高まっている。

PalantirのCEOアレックス・カープは、バリーの空売りに激怒しテレビインタビューで厳しく批判している。加えて、マイケル・バリーは来週25日(火)に新たな分析を発表すると予告していることもあり、NVIDIAを筆頭にAI関連銘柄の動向にはこれまで以上に神経質になっている。

今週の注目は、そのマイケル・バリーがショートポジションを取っている日本時間20日(木)未明発表のNVIDIAの8-10月期決算発表。 好決算予想もマイケル・バリーのコメントの影響で、マーケットの利益確定が先行するようだと、思わぬリスクオフになる可能性もあるため警戒している。

今週に入り、株が続落し、リスクオフとなっても唯一の避難通貨であるスイスフランが買われないことで、マーケットは調整局面に入っていると想定している。

戦略的には、米ドル/円は引き続き高値づかみは避け、丁寧に押し目買い。また、ユーロ/スイスフランの動向をみながらユーロ/円を押し目買いで臨みたい。

▽米ドル/円 日足チャート

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(画像=羊飼いのFXブログ)

*:当記事は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。

羊飼い(ひつじかい) FXトレーダー&ブロガー
「羊飼いのFXブログ」の管理人。2001年からFXを開始。ブログで毎日注目材料や戦略を執筆配信中。トレードはスキャルがメインで超短期の相場観には自信あり。