本記事は、菅原 洋平氏の著書『仕事が速い人があたりまえにやっていること』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
記憶容量を節約する3つのメソッド
「映像化」「言語化」「動作化」
スーパーでお寿司を買うときは、大体パックになっていますよね。
いくら、マグロ、サーモン、イカ……。
違う種類のネタを自分で一つひとつ選ぶとなると、ちょっと面倒です。ひとまとめになっているからこそ、あまり悩まずに買うことができます。
これと同じことが、脳の中でも起きています。
それが、「頭頂葉」による記憶のチャンク化。
ここでは、動作を1つのチャンクにすることで記憶容量を節約する方法をお伝えしましょう。
ところで、「頭頂葉」はどこにあると思いますか?
答えは、脳のてっぺんのやや後ろ(触ってみてください)。
頭頂葉の役割の1つに、「チャンク化」が挙げられます。
チャンクとは、「いくつかの関連する情報を1つにしたかたまり」でしたね。これは「情報」だけでなく「動作」でも同様です。
たとえば、お茶をいれる動作の場合。
茶葉を急須に入れる、急須にお湯を注ぐ、急須から湯呑に注ぐなどの動作を「お茶をいれる」という1つの動作(チャンク)にまとめることで、「次はこれをやって」と一つひとつ考えずにお茶をいれられるようになります。
脳は、その先の展開が詳細に予測できるほど、スムーズに行動できます。
動作をチャンク化して、それをそのまま行動に移してしまえば、おのずと予測はラクになり(というか予測する必要すらなく)、スムーズに行動できる。つまり脳の記憶容量を節約し、「仕事が速い人」になる、ということです。
こうしたチャンク化は自動的な機能ですが、意図的に、どんどん活動させることができます。
そのカギとなるのが「感覚」です。
頭頂葉の主な役割は、「見る・聞く・動く(触る)」といった感覚情報を集め、「それがなんなのか」という答えを出すことです(みかんを見て「これはみかんだ」と即座に理解できるのは、頭頂葉のおかげです)。
「こう動く」という動作のチャンク化も、頭頂葉に集められた「視覚」「聴覚」「固有感覚」をうまく使うことで可能になります。
具体的に、料理を例にした3つの方法を紹介しましょう。
① 映像化
最初にするべきことは、完成図をイメージすること。
料理なら、頭の中で「料理番組」を制作して再生してみてください。
たとえば、「今晩は肉じゃがにしよう」と思ったら、最初にテーブルに食事が並んでいる様子をイメージします。「絶品肉じゃが」などと好きなようにテロップを出してみてもOK。
このとき、ご飯や味噌汁など、すべての品が並んでいる絵を描くことがポイントです。
続いて、材料を料理していく様子をダイジェストで回していき、最後に盛り付けるところまで再生します。ここまでを30秒で映像化しましょう。
自分の目線からどんな景色が見えているのかをイメージしていると、「この鍋をコンロにかけて……。あっ、でもこっちを先にすれば、余熱で火を通している時間につくれるな……」という感じで、大まかに順番をリハーサルできます。
これができれば、つくる順番を間違えてコンロが占領されてしまったり、準備した食材を入れ忘れてしまったりすることも防げます。
レシピを参考につくるときも、工程を映像として頭の中で再現しましょう。
ほかにも、たとえば出張のときなら、家を出てから現地に着いて仕事を終えるまでを超高速で映像化してみます。
すると、駅に着いたときに必要なものや、現地で担当者に会う前にやっておくべきこと、プレゼンテーションで必要な道具やそれを準備するタイミングなどで、足りないものや忘れているものに気づくことができます。
② 言語化
同じく「料理番組」でも、頭の中で実況してみて言語的にストーリーをつくる方法もあります。
視覚と言語の大きな違いは、「時系列」です。
言語的にシミュレーションすると、「まずは」とか「次に」という言葉が出てくるので、作業の順番を整理することができます。
また、使う調味料は「しょうゆ、酒、みりん」や「クミン、ターメリック、コリアンダー」というセリフになれば、入れる調味料やスパイスが3つあるということや、それぞれの発音や文字数で記憶に残りやすくなります。
出張の例でいうと、映像を描くのが難しければ、実況してみましょう。
当事者ではなく第三者の目線で、「まずは」「そして」「次は」というように、行動する人をリードするように俯瞰的に実況すると、抜け落ちていることに気づけます。
たとえば、次のようなイメージです。
まずはスーツケースとカバンを持って車に乗り、駅の駐車場に止める。カバンをスーツケースに乗せて駅まで歩き、発券機で切符を受け取り、改札を通る。そして次は、新幹線に乗ってパソコンを出して、シートの下のコンセントで電源をとって…… あっ、電源コード入れてなかった!
こうすれば、忘れ物もバッチリ防ぐことができます。
③ 動作化
実技試験などの前に、身振りだけでおさらいをしたことがありませんか?
いつもの動作が決まると、動作を自動化して出力することができるので、記憶容量を使わず、スムーズに行動することができます。
自分の体がどう動いたかをとらえたり、力の入り具合を感じたりする脳の感覚を「固有感覚」といいます。
固有感覚を用いることで、実際に作業をしているときに、未来の作業のための準備をすることができます。
自分の動作を「こういうときはこう動く」という「型」にしてしまい、その型をたくさんもつことで、注意する点を減らし、記憶容量を節約することができます。
たとえば、プレゼンテーションをするとき。
パソコンの左にアナログ時計を置き、マイクは左手に持ち、右手でクリッカーを持ってスライドを操作する。最初の挨拶では相手に自分の全身が見えるように立つ。プレゼンテーションを終えたら、パソコンからクリッカーのレシーバーを外す。自分のパソコンを使用していたらケーブルを回収する…… という一連の動作にしておきます。
こうした「型(いつもの動作)」を決めるには、しぐさや物の置き場所を決めて、なにも考えずに再現できるようにしておくのがポイント。
たとえば、次のようなイメージです。
- プレゼンテーションのときは、会場の奥の天井の隅を左右ゆっくりと見て、笑顔をつくってから話し出す
- マイクや時計、ハンカチなどを置く場所を決める
- カフェで仕事をするときに座る席を決める
- スーツケースに入れる物の場所を決める
とくに、自分が緊張したり集中しなければならなかったりする場面では、型をあらかじめ考えて、それを実験してみることが大切。
実験してよかった方法を採用して、毎回その型を儀式のように用います。
さらに、忘れ物をしてしまったなどの失敗があったら、それを防ぐ動作を組み込んで、注意しなくても気がつくようにしてみましょう。
こうすることで、さまざまなシーンで型をもつことができ、記憶容量の省エネを図ることができます。
私の場合、さまざまな環境でお話しする機会があるのですが、会場によってプロジェクターの種類が異なるので、変換ケーブルをいくつか持参しています。
ただ、話し終えた後に受講者の方々が質問をしに来てくださると、それに気を取られてケーブルを会場に忘れて帰ってしまったことがあります。
そんな経験から、話し終えたらプロジェクターのコードを確認する動作が染みついています。
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