本記事は、難波 猛氏の著書『ボスマネジメント 「成果を出している人」が上司と話していること』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています。
上司との面談は5段階で構造化しておく
最近は、1on1やキャリア面談を導入している会社も増えています。月に1回30分、あるいは四半期に一度。制度としては整っているのに、「ただ上司の説明を聴いているだけだった」「業務の進捗確認だけで終わった」「結局、雑談で終わった」という声は少なくありません。
面談は、会社が公式に用意してくれる上司とじっくり対話できる貴重な機会です。
ボスマネジメントの時間として活用しない手はありません。上司任せにせず、面談前に自分なりに話の流れをつくっておけば、より有意義な時間になります。
キャリア自律に向けた上司との面談の基本構造は、次の5段階です。
① 自分の「ありたい姿(WILL)」を考えて伝える
② 上司や組織の「期待(MUST)」をきちんと聴く
③ 両者の間にあるギャップについて対話する
④ 合意したゴールに向けた「能力(CAN)」を開発する
⑤ 定期的にズレをメンテナンスする
以降で、各段階について詳しく解説していきます。
第1段階
自分の「ありたい姿(WILL)」を考えて伝える
中長期で、どういう状態で働いていたいのか。どんな役割を担っていたいのか。
どんな時間の使い方をしていたいのか、どんな人生を歩みたいのか。
ありたい姿は、大きな目標である必要はありません。「この分野で専門性を高めたい」「今より裁量を持って仕事がしたい」「周囲に頼られる存在になりたい」「家族みんなといつも笑顔でいたい」など、大事なのは自分の言葉で「この会社で働いていて良かった」と思える状態を整理しておくことです。そうすることで上司との対話が、「評価される場」から「到達したいゴールに向けてすり合わせる場」に変わります。
WILLを考えず面談に入ると受け身の対話になり、「何かあれば言ってください」「特に問題ありません」で終わってしまいます。
第2段階
上司や組織の「期待(MUST)」をきちんと聴く
組織内キャリアにおいては、必ずMUSTが存在します。「何もせず座っていたら給与を払います」「何でも自由にやってください」ということはありません。
MUSTを上司に確認する際は、「今の期待」「定量的な目標」だけではなく、「将来の期待」「定性的な期待」も理解することがポイントです。多くの面談では「今の成績はどうか、どう評価されているのか」「定量目標の進捗はどうか」が中心になりがちです。
将来のキャリアを考えるなら、未来の状態や定性的な期待(どのような存在であってほしいか)も確認してすり合わせましょう。
上司の頭の中にある、「組織として目指す状態」「チーム全体のありたい姿」「その中で、あなたに期待していること」を言語化してもらいましょう。
ここを聴かずに、自分のWILLだけをぶつけても、話は噛み合いません。だからこそ、「今、私には何を期待していますか」「今後の組織運営で、特に重視している点はどこですか」などと、丁寧に聴いていく必要があります。
第3段階
両者の間にあるギャップについて対話する
自分のありたい姿と、上司や組織の期待がいきなり完全に一致しているケースは多くありません。
問題はギャップがあることではなく、このギャップを放置したままにすることです。「実は、将来的にはこういう方向も考えていて」「今の期待役割について、少し違和感を持っている点があって」などと、上司や会社の期待を聴いたうえで話を進めることで、ようやく上司にもギャップがあることに気づいてもらえます。
ボスマネジメントは、このギャップをお互いに共有することが最大のポイントと言ってもいいくらいです。
ギャップがあることを話題にするのは、わがままでも反抗でもありません。認識の違いを可視化し、合意点を探すための建設的なプロセスです。ボスマネジメントは、「どちらが正しいか」を決めることではなく、「どこにギャップがあるか」「どうしたら重ねられるか」を一緒に考えるコミュニケーションでもあります。
第4段階
合意したゴールに向けた「能力(CAN)」を開発する
自分の「ありたい姿(WILL)」と上司の「期待している姿(MUST)」が何らかの形で重なったら、あとは「能力(CAN)」を高めることでWin-Winの状態になります。「今持っているスキルで定年までしのぐ」という考え方は捨てて、「将来に向けて、どのようなスキルを伸ばすことが必要か」「期待に比べて、足りていないものは何か」を確認する必要があります。キャリア自律という長期的な視点に立ったゴールならなおさらです。
ここで大切なのは、能力開発を「会社にやってもらうもの」「会社にやらされるもの」と考えないことです。
能力を高める目的は、あなた自身が理想的なキャリアと人生を獲得するためです。
研修に参加させてもらえないから成長できない、上司が教えてくれないから無理だ、なぜわざわざ勉強しなければいけないのか、という感覚では主体性が消えてしまいます。
上司との面談では、「このゴールに向けて、このような力を伸ばしたいと考えています」「そのために、このような経験を積ませてほしい」「このような研修やセミナーに参加したい」と、自分なりの仮説を持って臨むことが重要です。
この姿勢があれば、上司も具体的な支援を考えやすくなります。
第5段階
定期的にズレをメンテナンスする
環境や技術の変化が激しい現在、組織の戦略も上司の期待も変わり続けます。自分自身も、年齢やライフイベントによって価値観が変わります。期初の面談時点で重なっていたWILL/MUST/CANが、半年後にはズレが生じていくこともあります。
私自身、上司との1on1では3カ月に1度「このような方向で動いていますが、今の戦略や方針と合っていますか?」と自分から確認しています。
面談は「永続的な結論を出す場」ではなく、「微調整を続ける場」。このような意識で上司との対話を進めることも、上司との良好な関係を維持するコツになります。
上司との面談を構造化しておくことは、自分のキャリアを成り行き任せではなく、対話によってアップデートしていくために欠かせない準備です。
マンパワーグループ株式会社シニアコンサルタント
プロティアン・キャリア協会認定アンバサダー/人事実践科学会議事務局長/日本心理的資本協会理事/NPO法人CRファクトリー特別アドバイザー
1974年生まれ。早稲田大学卒業、出版社、求人広告代理店を経て2007年より現職。研修講師、コンサルタントとして4,000名以上のキャリア開発施策、3,000名以上の管理者トレーニング、100社以上の人員施策プロジェクトのコンサルティング等を担当。
セミナー講師、大学講師、官公庁事業におけるプロジェクト責任者も歴任。
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