事業承継問題の解決策として注目を集めるサーチファンド。ファンドから資金提供を受けた個人(サーチャー)が、中小企業を探して買収し、自ら経営者として企業価値向上を目指す仕組みだ。今回のインタビューは、このサーチファンドを運営するロケットスター社長の荻原猛氏。プライム上場を経験し、長年中小企業支援している荻原氏は、なぜ次の起業でサーチファンドを選択したのか?サーチファンドのどこに魅力を感じているのか? またファンドレイズしてから1年が経過したため、どのような戦略を打ち出し、結果はどうだったのか? そして今後の展望についても荻原社長に聞いた。

ロケットスターとはどんな会社か?

-なぜサーチファンド事業に取り組んだのでしょうか。

もともと私は中小企業向けのデジタルマーケティング支援を本業とする会社、ソウルドアウト株式会社(2019年プライム市場へ上場)を立ち上げていました。そのなかで感じたことが2点あります。一つは販売力が弱い会社が多いということ。もう一つは、売上を伸ばすためのマーケティングの提案をしても、投資への不安やリスクへの警戒感から実行に踏み切れないケースも多いということ。

まず一つ目です。多くの中小企業では、商品やサービスへの情熱はあっても、誰に何の強みを持って、どう売るかが整理されていません。BtoB企業であれば営業活動が属人的になっていたり、営業プロセスが可視化されていなかったりする。顧客管理や育成の仕組みも整備されていない事例が見られます。

二つ目です。機会損失よりリスク回避を選択した場合、その意思決定にまで我々は入れません。そのため、外部からの提案に限界も感じていました。

それであれば、株主として、または経営者としてマネジメントしていきたい、という想いがありました。例えば、ハンズオン型VCのように株式出資して資本に参画し、経営そのものに踏み込んでいく、という構想です。

そこで起業するタイミングでやりたい幾つかの事業案がある中、構想の一つだったサーチファンドを選択しました。

-ロケットスターのサーチファンドは何が違うのでしょうか。

最大の特徴は、この規模の会社で企業価値を上げる方法は、突き詰めると一つしかないという確信を持っていることです。つまり売上トップラインを伸ばすこと以外に、答えがない。

大きな会社なら財務再編や間接費削減で価値を作れます。でも中小企業(マイクロキャップ)にそのコスト圧縮の余地はほとんどありません。だから私たちは、承継した会社の商品やサービスがまだ十分に市場に伝わっていない部分を見つけ、そこに販売力を足すことに集中します。

また金融出身者が多いこの業界で、私たちが事業会社出身であることの意味はここにあります。財務の数字だけでなく、経営者として売上を作ってきた経験があるから、「誰に、何を、どう売るか」という一番泥臭い問いに、具体で答えられます。

加えて、承継先の社長が壁にぶつかったとき、その痛みに対する理解度が深いことも大きいと思います。私たち自身が、創業から上場、M&A、売却、PMIまでを一通り経験してきました。経営者のしんどさ、引きちぎられるような葛藤、弱さや苦しさ、そしてカッコつけたがること、強がっちゃうこと、全部わかります。理解できます。自分自身がそうだったからです。

M&A Online

(画像=実体験があるからこそ「経営者の苦しさがわかる」と荻原社長(Photo By Masahiro Osawa)、「M&A Online」より引用)

そういうとき、誰がどう寄り添い、経験シェアしてくれるのかで、経営者の精神状態が全く違ってきます。私自身、ソウルドアウトを経営していた時には鉢嶺さんという経験豊かな先輩経営者がいました。メンターであり、相談相手にもなってくれます。何度助けられたことか。

我々はその実感値をもってファンド運営しているので、おそらくここは、現在のサーチャーの皆さんも感じてくれていると思います。ロケットスターのコンセプトでもある「チームを組んでスターを目指す」という発想の通り、私たちはチーム戦を意識しています。

このメンタリングの一環として、RSG(リアル セッション ギルド)というサーチャー全員参加の定期セッションを開催しています。この場は、お互い経営の情報共有や相談の場として活用してます。「私だけじゃないんだ!」ってことが分かるだけでスッと気持ちが楽になるはずです。

その経営者への理解という点では、他のファンドさんより強いかもな、と自負しています。メンタル不調となりがちな社長業ですが、結果として離脱する人は一人もいません。

そして、私たちが大切にしているのは、承継して終わりではないということです。創業者や先代経営者が大切にしてきた事業を、次の経営者が責任を持って伸ばす。それが私たちの果たすべき役割だと思っています。