地方の不動産投資はインカムゲイン狙い

確かに都心物件では一年中賃貸需要はあるが、地方物件は、地域によっては一度退去者が出ると繁忙期(1~3月)まで入居者が入らないこともある点がデメリットだ。ただ近年は、原状回復費などを入居者に請求しづらいうえに入居者が入れ替わるたびにオーナー負担となるうえ、都心では景気がよくなると競合物件が雨後のタケノコのように乱立することで、入居者募集にかかるAD(広告費)もかさみ、入居者はつくもののキャッシュ・フローはほとんど残らないということが珍しくない。一方、地方物件は景気が良くなっても競合物件がそれほど増えるわけではなく、また入退去が都心と比べ頻繁にあるわけでもないので、一度、満室になるとキャッシュ・フローが安定する。

次に、同じ価格の物件であれば地方の物件は都心の物件より土地が安い分、建物比率が高くなる。つまり、減価償却費を毎年多くとれるので支払う税金が少なくなり、そのうえ都心に比べると利回りがよいので、受け取るキャッシュ・フローはかなり多くなる。その代わり、売却時には償却が進んでおり簿価が下がり譲渡所得が高くなるので、譲渡税を多く支払う必要がある。とはいえ、着実に残債も減っているので購入金額より安く売却しても十分利益は出せる計算だ。従って、地方物件は着実にインカムゲインを得ていく投資、都心物件はキャピタルゲインを1発で狙う投資と言える。

銀行の融資担当者は「よっぽど変な物件を買わない限り、20~30年の長期ローンで買えれば損はしないですね。」と話す。不動産市場は概ね10年くらいの周期で変動すると言われているが、景気が上向くと、多くの不動産業者は1年程度のプロジェクトローンを組んで物件を売り買いする。不動産ファンドも、せいぜい長くて5年くらいのローンだ。ローンの償還期に減退した景気が重なれば物件の売却は困難になり、リファイナンスできければデフォルトするしかなくなるだろう。ところが融資期間が20~30年あれば、イグジットのタイミングを何度かは迎えることができる。仮に買った価格より高く売却できなくても、ローンの残債も進んでいれば、十分売却益をだせるし、また、都心の物件のようにキャッシュ・フローがでていない物件でないかぎり、持ち続けても問題ないのである。


インカムゲイン狙いの不動産投資は、早ければ早いほど有利!

今、欧米でフランスの経済学者トマ・ピケティ教授の著書『21世紀の資本論』 がベストセラーになっている。同書はピケティ教授が3世紀にわたって20カ国以上の「所得と資産」の膨大なデータを約15年かけて 収集し、それを分析してまとめたものである。要約すると「長期的には経済成長率よりも資本収益率が高いため、多くの富を持つ者にはさらなる富が蓄積されて格差が拡大し、資産の不平等は世襲により時代を超えて続く」というものだ。さらにこの分析から、資本収益率は平均で年に5%程度であるが、経済成長率は1~2%の範囲で収まっていることがあきらかになった。

例えば不動産オーナーのように資産をもっている人なら高いリターンを得ることで益々お金が増え、お金がお金を生んでいる状態となる。実際は5%どころか1棟不動産に投資していれば、特別優良な物件でなくても、自己資金に対して10%以上の利回りを得ることは、それほど難しくはないだろう。一方、サラリーマンの給料は昇給してもわずかで、都市銀行に1年預けても0.025%程度の金利を得る程度であり、その格差は拡大するばかりである。資本主義が完全になればなるほど、資本収益率が経済収益率を上回る可能性は高くなる。つまり、インカムゲイン狙いの不動産投資は、早ければ早いほど有利と言えるだろう。