今回の「債券投資の教室」シリーズも、個人投資家の方が債券運用を考えるうえで必要と思われる知識を、できるだけわかりやすく伝えていきます。
さて、そもそも論として、個人投資家の方が「何か運用を始めようか」と思った時に、真っ先に思いつくのは株とか投資信託がやはり多いのではないかと思います。あとは最近FXあたりも広まってはきましたが、全体からするとまだまだFXをされている方は少ないと思われます。
ただ、個人投資家だけでなく機関投資家にまで目を向けると、実際には債券での運用が一番金額も多く盛んなのです。
では、なぜ個人投資家にとって債券投資は身近ではないのでしょうか。
今回はこのテーマについてお伝えしたいと思います。
【債券投資の教室シリーズ】
債券投資の教室vol1〜証券会社の債券ビジネスのカラクリ〜
債券投資の教室vol2〜預金?国債?社債?個人投資家が知っておくべき債券の比較法〜
◉債券を運用する機関投資家の例
例として、我々の年金を運用しているGPIF(Government Pension Investment Fund=年金積立金管理運用独立行政法人)という機関がありまして、こちらは「世界最大の運用機関」と呼ばれるほどで運用規模はなんと「約140兆円」にものぼります。そのGPIFのホームページに運用状況が掲載されていますが、2016年3月末時点での運用割合は、
・国内債券:37.55%(=52兆8010億円)
・外国債券:13.47%(=18兆9388億円)
・国内株式:21.75%(=30兆5809億円)
・外国株式:22.09%(=31兆714億円)
となっており、約40%弱が債券での運用なのです。
では、なぜ個人投資家にとって債券運用というのは身近ではないのでしょうか。その裏には、個人投資家にはいい債券が回ってきにくく、儲ける機会がそもそも少ないという問題があるのです。
以下に具体的なポイントを3つ上げます。
①ほとんどの債券は「額面1億円単位」
債券というのは、資金を調達したい国や会社、いわゆる発行体が1回あたり「総額300億円」とかという金額を決めて発行されるわけですが、その時の額面、つまり一口当たりの金額が「1億円」に設定されていることが非常に多いのです。
つまり、あらかじめ機関投資家向けに発行されているわけです。
これを簡単に説明すると、たとえば総額300億円に対して一口1億円であれば合計300口。ところが個人向けに一口100万円にしたとすると合計30000口。これで何が起こるかというと、発行体や証券会社にかかる「管理コスト」が上がってしまうのです。
発行体が債券を発行するというのは、「事業などに使う資金を調達したい」という目的で発行するわけですが、基本的にはできるだけ低い金利で、かつローコストで債券を発行して資金を調達したいと思っています。
ローコストにするには、できるだけ口数が少ない方が事務コストなどが削減でき、また証券会社に支払う手数料も少なくて良いのです。