皆さんこんにちは、前回 債券投資の教室vol1〜証券会社の債券ビジネスのカラクリ〜 をお届けしました元債券市場参加者のgelです。
債券市場に携わった人間として、個人の方にはなかなか取っ付きにくい債券市場の本当の姿を、前回に続き、分かりやすお伝えできればと思っています。

本日は、債券の価格についてのまとめをお届けさせて頂きます。

【参考】

「外資系金融の終わり」藤澤数希著
日本でも始まる大革命?エクイティ型クラウドファンディングIndiegogoとKickstarterが目指す新時代の資金調達
アジアから見た日本の不動産、ならびにシンガポール最新不動産事情
実質利回り10%超え?3月・9月に忘れたくない人気の株主優待ベスト10

◉債券は預金と比較する?

さて、みなさんが実際に証券会社で個人向け国債や社債などの債券を購入しようとするとき、何を基準に買うかどうか決めてますでしょうか。購入するための予算だったり、発行している会社(国)の名前だったり、あるいは満期までの年数だったり・・・色々あると思います。
ただ、一番多いのは「金利(利回り)が高いかどうか」ではないでしょうか。まあ当然といえば当然ですよね。ズバリいくら儲かるかという明確な指標ですから。

では、その金利に投資妙味を感じるかどうか、何と比較して判断していますでしょうか。他にも投資商品はいくらでもあるわけで、投資するかどうかを最終的に決断するためには、何かとの比較を皆さん意識的にも無意識的にも行っているはずです。
そして、特に債券に投資する場合、一番多いのは「預金金利(定期預金)」と比較することではないでしょうか。

これは一つの比較対象としては問題ないです。
預金よりたくさん金利がつかないと、わざわざ銀行から証券会社に預金を移動させてまで投資する妙味なんかないですよね。ただ、預金と比較したりしているのは個人投資家だけなのです。債券は株式などに比べたリスクの小ささから機関投資家、いわゆる法人(投資信託、事業会社、その他もろもろ)の方が個人より圧倒的にたくさん購入しているわけですが、彼らは預金金利なんかほとんど気にしていません。

気にしているのはもっと別な指標なのです。

◉預金金利と債券金利(利回り)の違い

そもそも、預金金利と債券金利(利回り)は同じようで全く違う性質のものです。

預金金利というのは、言わずも知れた「お金を銀行に預けることでもらえる金利」のことです。銀行はその預かったお金を元手に他の人や企業などに預金よりも高い金利で融資などをし、その「低い金利で借りたお金を高い金利で運用する(貸し付ける)」ことで利益を稼いでいます。専門用語的にはこの流れのことを「間接金融」なんて言ったりします。
ところで、この預金というのはそもそも銀行が元手を保証しています(もちろん倒産したらペイオフ限度額(日本だと1000万円)までしか保証されませんが)。そして、預金者がたとえば定期預金を組んでいて、満期までに急にお金が必要になった時でも、金利が最初に契約した時の金利から多少割り引かれたりすることはあっても、元本は保証されて帰ってくるわけですね。

一方、債券金利は「発行体(会社、国)にお金を直接貸すことでもらえる金利」のことです。投資家は証券会社などを経由して債券を購入するのですが、実際の投資金額は預金の時とは違って直接発行体に引き渡されるわけですね。つまり債券は「発行体は満期になればその元本を返します」という一種の借用証書のようなものです。
ただ銀行と違うのは、借用証書である債券は「満期の時に返します」という契約になっているので、仮に満期までに投資家がお金が必要になった場合に、途中で発行体からお金を返してもらうことはできないのです。満期までにどうしてもその債券を現金に換えたい場合、代わりに証券会社が引き取ってくれる、つまり「債券を売却する」ことができます。ただし、その場合は「時価」での買い取りとなるので、場合によっては損をする可能性もあるわけです。これは「直接金融」なんて言われたりします。

つまり、何が言いたいかというと、預金と債券では、投資したお金の流れも、また途中換金したいときの手続きも全く違うということです。
そのため、預金金利と債券金利(利回り)を比較するのはそもそもナンセンスなのです。