◉債券利回りの「本当の評価の仕方」
では、債券利回りは何と比較すればいいのでしょうか。その答えは「国債金利」なのです。
これはよくよく考えれば自然なことで、先ほども話した通りそもそも預金と債券では性質が違うわけです。本来であれば似たような性質のものと比較する方が正しいわけであって、債券の中でも一般には「一番信用力が高い」と言われる「国債金利」と比較するのが適切なのです。
実際に発行体が債券を発行するときに、その債券の金利を決める物差しとして、やや難しい言い回しになりますが『発行する債券と同じ程度の期間の国債利回りとの「金利スプレッド(=金利差)」』を用いているケースがほとんどです(ちなみに、スワップ金利と比較するケースもありますが今回は国債に特化します) 。
例として、今年(2013年)の6月にソフトバンクが個人向けに4000億円もの巨額な社債を発行しましたが、この時の条件は
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満期:5年
クーポン(金利):1.74%
格付け:A(JCR発表)
利回りスプレッド:JGB#295+138bp
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となっています。
ここで利回りスプレッドのところに書いてある「JGB#295」というのが、ちょうど満期まで約5年の国債を表しています。「138bp」というのは「138ベーシスポイント」という利回り差を表しています。ちなみにベーシスポイント=0.01%のことなので、利回りスプレッドのところの表記は「この社債の利回りは、満期が似たような国債の利回りより1.38%高い」という風に読み替えることができます。
これが割高なのか割安なのか判断するには、実際には格付けだったり年限だったりを考慮に入れつつ比較検討する必要があるのですが、少なくとも債券マーケットにおいてはこの「利回りスプレッド」を物差しとして投資するかどうかの判断を下すということは、常識中の常識なのです。
◉評価するための材料はどうやって手に入れるか?
ではその利回りスプレッドという情報を個人がどのように手に入れればいいのかでしょうか。結論としては、証券会社に問い合わせるのが最善かと思われます。
もちろん個人でもデータを取得できないわけではありません。日経新聞に主要な国債金利は掲載されていますし、社債の価格情報も「日本証券業協会」のホームページに掲載されています。ただ、そのホームページでは利回りスプレッド自体を公表しているわけではないので、自分で両方のデータを見ながら自分で計算しなければならなくなります。
またもう一つの弊害として「日本証券業協会」のホームページに掲載されている価格が、必ずしも市場の実勢価格に見合ったものとは限らないという問題もあります。詳細は省略しますが、簡単に言うとこちらの値段は投票制で決められており、また銘柄数も多いことから正確な値段が反映されてにくいという状況です。
なので、証券会社の営業マンに訪ねるのが一番手っ取り早いと思われます。
次回から債券を購入される際にはぜひ営業マンの方に「利回りスプレッドはどのくらいですか?ほかの似たような債券と比べてお買い得だと思いますか?」と聞いてみてください。ちなみに個人的な経験で言えば、利回りスプレッドまで知っている営業マンは極めて少ないような気がします。。。
◉預金金利との差と「利回りスプレッド」の両方をチェックすればOK
だからと言って、預金金利を無視しろと言っているわけではありません。もちろん、預金金利より高ければ高いほどうれしいのは当然ですよね。ただ、「利回りスプレッド」という、債券投資の世界ではスタンダードな考え方も是非意識したうえで債券投資を検討していただければよりよい投資ができますので、ぜひ営業マンにお尋ねいただくことをおすすめします。
合言葉は「利回りスプレッドはどのくらいですか?ほかの似たような債券と比べてお買い得だと思いますか?」です。
【債券投資の教室シリーズ】
債券投資の教室vol1〜証券会社の債券ビジネスのカラクリ〜
債券投資の教室vol2〜預金?国債?社債?個人投資家が知っておくべき債券の比較法〜
債券投資の教室vol3〜個人投資家にとって債券市場が身近でない3つのワケ〜
債券投資の教室vol4〜孫正義氏の辣腕とソフトバンクが発行した4000億円の「個人向け社債」〜
債券投資の教室vol5〜変動型個人向け国債が圧倒的に有利な3つのワケ〜
債券投資の教室vol6〜債券取引の現場、機関投資家が債券を売買するとき〜
債券投資の教室vol7〜債券取引の現場、証券会社が債券を売買するとき〜
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