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2014年9月の後半から原油価格は突如として下がり始めWTIでは6月に1バレル107ドルあった原油価格が直近では55ドル程度まで大幅に下落することとなった。クリスマス休暇シーズンを迎えて一旦は下げ止まりを見せた原油価格だが、依然としてなんら収束しているわけではなく、2015年も世界経済を揺り動かす大きなテールリスクとしてその動向が注目される状況にある。


今回の原油下落の基本的な原因とは

この原油価格の大幅下落の基本的な原因は、世界経済の減速と中国をはじめとする新興国のエネルギー需要の減退に加えて、米国を中心としてシェールガスを含めた産油量の増大が余剰原油を多く生み出していることが根底にあると言われているが、それ以外の憶測もしきりに飛び交う状況となっている。また、米国におけるボルカールールやバーゼル3が金融機関の原油投機をかなり難しく制限していることから既存の投機マネーが大幅に撤退していることが背景にあるとの見方も根強い。


サウジと米国によるロシア制裁、イスラム国制裁が背景という説も

2014年3月末に米国オバマ大統領がサウジアラビアを訪問した際に、米国はサウジに対して対ロシア制裁として原油価格を1バレルあたり12ドル以上下落させる提案をしたと同年4月4日付けのロシア紙プラウダが報じたことから、欧州を中心としてこの原油下落は米・サウジの制裁措置であるとの見方が非常に強く広まった。またこの措置はイスラム国もターゲットにしているとの説が非常に強くなったのである。


サウジは米国のシェールガス潰しを視野に入れた動きを顕在化

ところが、その後サウジアラビアは明確に米国のシェールガス潰しを視野に入れているといった発言をする要人が現れ、かならずしも米国とサウジが一枚岩ではないことも露見し始めている。実際問題原油価格が1バレルあたり80ドルを割るあたりから多くの零細な米国のシェールガス事業者の事業が困難な状況となりはじめ、深刻な影響がではじめている。


ロシアの原油価格下落容認でジャンク債相場は急変

この原油価格の大幅下落を受けてロシアルーブルが猛烈に上昇し、対ドルではほぼ半額程度の価値しかなくなったことから市民生活は著しいインフレに見舞われているが、実は原油の輸出業者自体は米ドルベースで取引をしていることからロシアルーブル換算では原油価格が半額になってもほとんど大きな影響を受けていないとされている。逆に原油価格下落容認といった発言が聞かれたことにより、その後急激に米国市場のエネルギー系のジャンク債が多くのヘッジファンドによる売り浴びせを受けて大幅に下落するという新たなリスクへと状況が変わりつつあるのである。