長期金利史上初の「0.2%台」…日銀の金融政策にあたえる今後の影響


なぜここまで金利が低下しているのか?

長期金利の代表的指標である10年物国債の利回りが史上初の0.2%台となった。これは、原油安やユーロ情勢の不安などから安全資産である国債が買われたことによる。日銀の異次元緩和により、市場の国債は日銀が事実上買い占めているため、極度の品薄状態になっており債券価格が上昇しているからだ。

債券価格が上昇すると、なぜ金利が下落するかというと、償還価格(満期に支払われるお金)が同じ場合、債券の購入価格が上がれば、得られる差額(利益)が減少するからである。得られる利益が減少すれば結果的に実質的な運用利回りは下がることになるのである。例えば、償還価格が100円で金利(クーポン)が1円だったとして、債券の購入価格が95円だった場合、得られる利益は6円(100円-95円+1円)になる。これが債券価格が上昇して98円になった場合、得られる利益は3円(100円-98円+1円)と半減してしまう。金利で表すと、6.3%から3.0%になるわけである。


現状の長期金利は日銀の金融政策の影響が大きい

長期金利は、金融政策の影響の他、長期の資金需要、将来の物価変動予測、将来の短期金利の予測などにより変動するが、現状の低金利は日銀の金融政策の影響が大きい。本来、長期金利の低下は、長期資金の需要の低下を意味するので、景気後退局面を意味するが、これだけ大量に日銀が国債を購入している状況ではそれはあてはまらない。

もっとも、今回の債券価格の上昇(長期金利の下落)は、安全資産へのシフトということだとすると、債券購入者は、将来的に短期金利の上昇やインフレにはならないと判断していることになる。そうだとすると、一部の投資家はアベノミクスに対して「No」を突き付けていることになる。

長期金利が低い水準のままだと、金融機関の貸出金利も低下するので、金融機関の収益力が低下する。特に体力がない地域金融機関は、お金を貸しても利益が出しにくい状態になっている。本来であれば、金融緩和により資金量が多くなり、貸し出しが増えることで市場にお金が回ることを期待しているのだが、貸しても金利が低くて儲からないから貸し出しを増やさない、あるいは逆に、利ざやが下がった分を量で補おうと貸し出しを増やすためにさらに金利を下げるという悪循環に陥っている。

債券市場は、日銀が国債買い入れを打ち出しているため、当面は暴落することは考えられず、安定している。また、金融機関は、金融緩和により潤沢にある資金を貸し出しに向けるのではなく、結局は債券の購入に充てている。そのため、国債が一時的に売られてもすぐに買い手がつき、金利は上昇しない状況にある。これもまた、お金が企業に回っていないことを示している。