日立製作所(日立) <6501> は24日、イタリアのフィンメカニカ社の鉄道向けの信号・車両部門を買収すると発表した。英国の高速鉄道向けの日立製車両の製造と納品が話題を呼ぶなど、世界市場で強力に推進する日立の鉄道事業がまた大きなマイルストーンに到達した格好だ。

フィンメカニカ はイタリアの多国籍コングロマリット企業で、欧州の航空・防衛産業のリーディングカンパニーの一つ。ミサイルシステムや運輸、エネルギー事業も手掛けており、2013年の収益は約160億ユーロ。ミラノ市場に上場している巨大な機械工業製造企業だ。特にイタリア、英国、米国およびポーランドで重要な役割を担っている。


日立の買収総費用は“19億ユーロ”

今回、両社は、フィンメカニカ傘下のアンサルドブレダ社の修理・修繕事業とアンサルドSTS社の株式のうち、フィンメカニカ社が保有する全株式を日立が取得することで合意。日立の株式取得金額は約2億5000万ユーロ(約338億円)となり、これによりフィンメカニカグループの純負債は約6億ユーロ(約810億円)減少する見込みだという。

一方、フィンメカニカの新CEOであるマウロ・モレッティ氏は、先月発表した経営計画の中で、純債務を35億ユーロ以下に縮小させるとともに、今後は航空・防衛・セキュリティシステム事業を集中的に強化していく旨を表明。鉄道部門の売却とDRSテクノロジー社の再検討が言及されていた。オート・メラーラ社売却の噂も出ていたようだが、こちらは否定されている。

イタリア現地紙によると、鉄道部門の売却はポジティブに受け止められているようだ。会社側は15%の債務カットにつながるというが、ムーディーズは「依然状況は厳しい」とし、レーティング(Ba1、ネガティブ)に変更はない。フィンメカニカ社に対する大きな影響は無いという見方もある。

アンサルドSTS社株式の予定買取価格は、7億7300万ユーロ(約1044億円)、アンサルドブレダ社及びフィンメカニカ社保有の不動産の合計買取価格は、3600万ユーロ(約48億6000万円)となる。アンサルドSTS社の残りの株式は、正式な締結終了後TOBを実施する予定。完全買収コストは総額19億ユーロに上るとみられる。


日立・フィンメカニカの協調で目指すのは“世界の社会インフラ事業”

日立は今回のフィンメカニカの鉄道信号・車両事業部門の買収を、世界の鉄道市場のトップへ切り込む足掛かりにする考えだ。同社は、鉄道関連の売上高を、将来的に8000億円まで引き上げる計画で、ビッグデータ解析などと組み合わせ、世界の社会インフラの需要を取り込んでいく目算もあり、「今回の買収でITと社会インフラを組み合わせた社会イノベーション事業の強化・拡大が可能になるとし、鉄道システム事業における世界屈指のトータルソリューションプロバイダーをめざす」と意気込む。

フィンメカニカ社も、日立を鉄道システム事業の長期的成功のためのベストパートナーと認識しているという。

バリューサーチの松野氏は、「アベノミクスを背景とした社会インフラ輸出の積極展開の流れに沿う形で、日立にとってはグローバル企業の一角を占める力を蓄積する良い機会だ」と指摘。日立は今後、世界の鉄道関連市場ビッグ3(カナダのボンバルディア(BBDb.TO)、独シーメンス(SIEGn.DE)、仏アルストム(ALSO.PA))に続き、中国にも誕生する可能性のある巨大鉄道会社との競争に備える見込みだ。

(ZUU online)

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