◉日本人富裕層にとってのシンガポールの魅力

日本マーケット(シンガポールベースのプライベートバンク的観点)は脚光を浴びています。
私は、日本に住んでいるお客様は法的規制の観点から非常に対応しづらい状況にあり、今現在でもほとんどお取引をさせていただいておりません。しかしながらそんな私にすら、日本在住の日本人顧客の対応をチームヘッドとしてやってくれないか?という依頼が数件きました。

果たして普段の商品勧誘等が自由にできないこの顧客層が、どれほど銀行に対して重要になりうるか?という疑問は強く感じるものの非常に魅力的に映る(欧州最大手で以前撤退した銀行含む)マーケットであることは間違いないようです。日本のお客様は自国マーケットの長きに渡る体たらくもあるせいか、投資に対するリターンの期待値が低く設定されていそうなのも一つの要因かと思われます。
あくまで噂ではありますが、震災後のここ数年だけで、3000億〜4000億円もの資産がシンガポールのPBに新たに日本から預けられたということです。

個人的にはシンガポールにお金を移すだけでは大して違いが生まれないかとは思いますが、ボンドのプライシングは2〜3ポイント(信じられないほど大きな違いです)よくなるケースもあれば、株取引についても超優遇レート(どのマーケットも均一0.25%など)を提供するケースも往々にしてありますので、本当のお金持ちの方々はしっかり大事な顧客として認識してもらっているという実感を得やすいのかもしれません。

また何よりも大事なことかもしれませんが、担当につくバンカーも、日本のように数年ごとにいなくなってしまうという事が殆どなく、お客様がいるからこそ彼らの給料が支払われているという事実が存在しているがために、優良顧客であればあるほど優秀なバンカーが担当することになり、銀行も集中的にリソースを注ぎ込む傾向が強くなります。
私も一番大事なお客様ご一家4名を先月旅行にお連れしましたが、その費用100万円くらい(電車代、ディナー代などで、宿代、飛行機代は含まず)は経費計上が認められる世界でもあります。

決算発表ごとにプライベートバンクのコストが高すぎて利益率が非常に低いということが常に指摘され、また実際にシンガポールからもメリルリンチが撤退し、最近ではソシエテジェネラルも業務売却を考えているという報道がされました。各銀行ともに最適な継続的に利益が出せるモデルを模索しているところなのでしょうが、バンカーに対する報酬をなかなか削れない現実があり、また昨今のレギュレーションの厳格化に対応したバックオフィスの増員などが必要なため、超優良顧客とトップバンカー達の居心地は良くなって行く反面、雇い主(銀行)や株主にとっては決して満足出来る現状ではないとも言えます。

◉相変わらずの不動産信仰

これについては以前から何度もしつこく申し上げているかもしれませんが、こちらの投資家たちの不動産投資に対する真剣さ、盲目的信用は依然変わらず衰えぬものがあると言えます。

歴史的に英国への投資が好きなシンガポール、マレーシアの方達ではございますが、その英国だけではなく、香港、シンガポール、最近では日本も含めましてコンドミニアム一部屋毎の投資といったような細かい投資もマメになされているなという印象を受けます。
イメージとしましては、1部屋1億から2億円に満たない位の物件を各地に分散して持っている方が意外に多いなという印象を強く受けます。また。大抵そういった投資が20%位のアップサイドを生み出している(シンガポール、UKは大抵儲かっています)と同時に、低金利で調達されたローンをまかなえる位の家賃を得ることができているので、この上ない安定したお金の運用先だと言えるのでしょう。

今後その運用先の一部に安定して日本が加われるかどうかは、彼らにいかに目に見える利益をもたらせるかどうかにかかってくると思います。儲かることが出来るマーケットだと認識してもらうのは、非常に大事な一歩であるように思います。

繰り返し申し上げますがもう年末です。今年のパフォーマンスはどうだろう?最後の勝負どころだな?という観点を少しでも持ち合わせているバンカーは全くそういった観点がないバンカーとは比べものにならないほど大事な存在です。
もしそのような事に関心がなさそうなバンカーとお付き合いであるのであれば。。。

ご自身で真剣にお考えになるか、他のバンカーを探されることを切にお勧め致します。

BY N.S