●シグマクシスの上場後の株価の強気材料、および弱気材料


では、実際に上場した後の株価について、ポジティブ材料およびネガティブ材料はどのようなものが考えられるでしょうか?

ポジティブ材料としては 「親会社である三菱商事の信用力」 「足元の業績急拡大」 「豪華な経営陣」 が挙げられそうです。

まず、今期までの業績の急成長を可能にする上で、 母体である三菱商事の信用 が大きな要因であったことは間違いないでしょう。今後も信用に業績がさらに伴っていくことで業績の急拡大は十分見込めると言えます。

また、その信用を背景に好調な業績の数字も十分魅力的だと言えます。業績急拡大により、今期は営業利益が12億円に到達しています。黒字転換は会社設立第4期の2012年3月期からであり、繰り越し欠損金がまだ残ってはいるものの、今は損益分岐点を抜けた後の急拡大期に当たる時期です。大型案件主導の業績からは利益変動率の高さも見て取れますが、前述の通り三菱商事の信用力が武器となるため案件も獲得しやすいでしょう。法人税を考慮して今期の値を修正すると、 EPSは180.92円となり、仮条件上限のPERは16.6倍 となる計算になります。「無形」ではあるものの大きな財産である 信用 と、それを裏付ける 数字 。これら二つの事実が、株価に将来的に与える影響は決して少なくないと考えられます。

加えて、その会社を率いる経営陣にも触れておきます。 経営陣には豪華メンバーが並んでいます。代表取締役会長兼社長の 倉重英樹氏 は日本IBMの取締役副社長、プライスウォーターハウスコンサルタントの代表取締役会長、日本テレコム(現ソフトバンクテレコム)取締役代表執行役社長などを歴任してきたベテランです。現在も三菱商事系の協力会社であるアイ・ティ・フロンティア(ITF)と、アダストリアホールディングスの取締役を兼ねています。また副社長2人も日本IBMで取締役を務めた人物です。今後アジアへの進出を図っていくにあたり、これらのボードメンバーによる迅速な意思決定に期待が出来そうです。

一方で、ネガティブ材料としては 荷もたれ感あり」 「上場集中日であること」 が挙げられそうです。

まず、シグマクシスの吸収金額は最大55億円です。投資ファンドのRHJインターナショナルは売り出しで持ち株は全て放出するため、ベンチャーキャピタルなどの売却が予想される既存株主の持ち分は少ないと言えますが、 それでも信用取引の買い残高が膨らんでくることで値上がりが頭打ちになってしまうことは十分予想 されます。 また、足元では公募株取得者の圧倒的な売り渋り姿勢にも変化が見られ始めています 。買い手の強気は依然として健在のようですが日程的な要因に加え、 初値後の不安定な動きが売り姿勢に転じていしまっている可能性 があると言えます。この相場の姿勢の変化がどうなるかが不透明なため、これが大きく上値を抑える要因になってしまうとも考えられるでしょう。

加えて、シグマクシスの上場予定日は 4社集中の上場日 であり、これによる資金分散も懸念されます。比較的注目度の高い企業なので埋没することはおそらく無いとは考えられますが、上記の荷もたれ感が短期的に敬遠される可能性は考慮しておくべきでしょう。


●シグマクシスの初値~上場後の株価想定


最後に想定価格についてのデータを載せておきます。

現状での想定価格は、 2,830円 となっています。主幹事はSMBC日興証券であり、公開株数1,589,000株のうち86%にあたる1,366,500株を引き受けます。次いでみずほ証券(4%)、SBI証券・マネックス証券・岡三証券・いちよし証券(2%)、三木証券・エース証券(1%)となります。

この想定価格を基準として仮条件を設定すると、

・吸収資金レンジ45.0億円 - 47.8億円 (今期予想単独PER:12.3倍 - 13.1倍 )

・時価総額レンジ:133.3億円 - 141.8億円

という数字になっています。

この約45億円の吸収金額に、オーバーアロッとメントによる売り出し(238,300株)も考慮した額を合わせると 約51.7億円 となります。マザーズでこの金額はかなり大きな規模であると言えます。BB期間は12/3(火)~12/9(月)であり、申込み期間は12/11(水)~12/13日(金)です。

また、シグマクシスと同じコンサルティング企業の11/28時点の今期予想PERを掲載します。参考になれば幸いです。

LINK&M(2170)       : 22.6倍 (連結予想 )
三菱総研(3636)     : 11.7倍 (連結予想 )
野村総研(4307)     : 23.2倍 (連結予想 )
船井総研(9757)     : 14.3倍 (連結予想 )
ドリームI(4310)      : 19.0倍 (連結予想 )
山田コンサル(4792): 6.9倍 (連結予想 )
LCA(4798)          :  -倍 (連結予想 )
タナベ経営(9644)   : 8.2倍 (単独予想 )
ネットイヤー(3622)  : 157.4倍 (連結予想 )

参考例として、経営コンサルのIPOではここ数年では人事コンサルのリンク・アンド・モチベーションや、同じ三菱系の三菱総合研究所が例として挙げられます。 ともに不人気となりやすい東証2部への上場 でしたが、LINK&Mは初日初値付かずの倍値。三菱総研は規模が09年9月と時期は悪かったものの45%の上昇を見せました。また、内容は異なりますが、同様にアドバイザリーを業務内容とする範囲ではGCAも参考になるでしょう。吸収金額が97億円に上ったことで初値は3割弱に収まりましたが、売買代金は60億円近くに上りました。これらの例を参考に、上場に向けた値動きに今後も注目していくと面白いでしょう。

三菱商事のDNAを持つコンサルティング会社、シグマクシスは設立当初から「アグリゲーション」というコンセプトで従来のコンサル会社とは一線を画す事業を展開してきました。上場の先に何を見出し、何を生み出すのでしょうか。今後も要注目の企業であることは間違いないと思います。

By ZUU online編集部(Y.S)

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