共同研究の将来性はどのくらいあるのか?
では肝心のiPS細胞を使った臨床応用への可能性についてはどのようなことが期待できるのか。iPS細胞の応用によって、患者本人の細胞の一部を、病気の原因となっている組織の細胞に変化させて、元の細胞と置き換えたり補充したりする治療が理論的に可能である。
たとえば、パーキンソン病は脳内のドーパミンを作る神経細胞の数が減るために神経に障害をきたし、ふるえや歩行困難、動作が緩慢になるなどの症状を引き起こす。
現在の治療法はドーパミンを薬として服用することで、症状を緩和させるという補充治療が中心であるが、根治療法ではないため、生涯ドーパミン薬を飲み続ける必要があり、服用を止めると元に戻ってしまう。
しかし、iPS細胞の応用が可能となれば、患者本人の皮膚や血液の細胞をドーパミン産生神経細胞に変えて、脳に移植すると自らの力でドーパミンを作ることが可能となりパーキンソン病の完治が可能になるのではないかとの展望が見える。
パーキンソン病のようなiPS細胞の応用が期待される領域として、文部科学省が2009年iPS細胞研究ロードマップを作成している。それによると、主要な臨床研究領域として、中枢神経系、眼科領域、血液領域、循環器領域、肝臓・膵臓など11領域について重点研究が計画されている。これらの領域でiPS細胞が臨床応用可能となると、多くの患者を救うことができると同時に莫大な経済効果を得ることが期待されている。
しかし、これらの疾患領域については、前述の通り世界中が研究対象として注目しており、現在し烈な競争が展開されているのだ。今回のCiRAと武田とのタッグは、その国際競争において我が国にとって強い追い風となろう。
「われわれが長期で成長するには、サイエンスが必要だ」-このウェバーCEOの信念は強いメッセージとして、今後武田に浸透していくものと思われるが、このメッセージは我が国の成長にとっても至言である。(ZUU online 編集部)
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