ウエルシア薬局などを運営するドラッグストアチェーンのウエルシアホールディングス <3141>と、ハックドラッグなどを運営するCFSコーポレーション <8229> が、2015年9月1日付けで経営統合することを発表した。経営統合は株式交換により行われ、CFSコーポレーションがウエルシアHDの100%子会社となる。
埼玉県を地盤とし郊外型店舗を得意とするウエルシアHDと、神奈川県を中心に都心型店舗を得意とするCFSコーポレーションとが経営統合することで、お互いに補完し合うことが可能だ。また、両社の強みである調剤や化粧品のカウンセリング営業力のさらなる強化も期待できる。
イオン主導によるドラッグストア業界再編へ
今回の経営統合発表は、両社の親会社である流通大手イオン <8267> の意向によるものだ。ウエルシアHDは、今年3月に関西を拠点とするタキヤとシミズ薬品をすでに完全子会社化し、傘下に収めている。売上高と店舗数をみていくと、ウエルシアHDが連結で3607億円(14年8月末)・987店舗(15年2月末)、CFSコーポレーションが1205億円・305店舗(ともに15年2月末)、タキヤが243億円(14年2月期)・681店舗(15年4月現在)、シミズ薬品が107億円(14年2月期)・57店舗(15年3月現在)。単純に合計しても売上高が5162億円、店舗数は1430店舗となる。これは、ドラッグストア業界首位を走るマツモトキヨシホールディングス <3088> の8連結売上高4953億円・9万1486店舗(14年3月期)を超える数字で、新たなトップの誕生といえる。
ただ、これでは、ドラッグストア業界で1兆円規模の売り上げを実現するのは難しい。1兆円をめざすには、イオンとすでに資本関係にある他の企業を傘下に入れる必要がある。イオンは現在、上場しているツルハホールディングス <3391> 、メディカル一光 <3353> 、そしてクスリのアオキ <3398> と資本関係にある。これらを経営統合すれば、売上高1兆円にも手に届く。
鈍化するドラッグストア業界
昨今、ドラッグストア業界では他の企業も積極的にM&Aを進めている。なぜM&Aに積極的なのだろうか。
M&Aを進める主な要因は、ドラッグストア業界の成長が鈍化していることにある。ドラッグストアの市場規模は2000年以降一本調子で成長を続けており、売上高だけでなく総店舗数も同時に増加している。他の市場が、横ばいかゆるやかな減少となっているのとは対照的だ。ただし、市場全体は成長しているが、伸び率は鈍化している。そこで、同業他社のM&Aを成功させて成長を続けようと模索している。
M&Aによる成長にもいずれは限界がくる。次の打ち手をどう描いているのだろうか。
次の打ち手を読み解くキーワードは、“専門性”と“高齢化”だ。
業界再編後のドラッグストア業界の次の一手
流通経済研究所の『消費者の業態・店舗選択に関する調査報告書』によると、消費者がドラッグストアを評価するものは「立地(近接性)」、そして、夜間でも営業しているといった「利便性」だ。政府は、これまでは「平均寿命を延ばす医療政策」をとってきた。しかし、高齢化による医療費の高騰により財政がひっ迫してきたため、「健康寿命を延ばす医療政策」へと舵を切っている。これは国民が自ら病気の予防・治療を行うことを目的とし、一般用医薬品等の活用をこれまで以上に進めていこうというもの。この政策の流れに乗るためには、自社の薬剤師や登録販売者などの専門性を高めていく必要があり、人材教育が重要だ。
人材育成と同時に進める必要があるのが、“高齢化対策”だ。ドラッグストアによる高齢化対策のひとつとして挙げられるのは、『買い物弱者』への支援だろう。たとえば、買い物に出かけたくても思うように体が動かずなかなか出かけられない人は増えている。現在、『買い物弱者』の状況にある人は600万人ともいわれている。その市場は大きく、食品スーパーやコンビニエンスストアが競合になることは明白だろう。激しい競争が繰り広げられそうだ。
ドラッグストア業界の次の一手から目が離せない。(ZUU online 編集部)