岩田氏「追い込まれているつもりはない」

「よくメディアの方に、任天堂は追い込まれていると書かれますが、そんなつもりはない」と会見の席上で岩田氏は強がっていた。しかし、世の中の変化に対応しなければ企業は衰退するという危機感の中で、「驚き」「喜び」をユーザーに提供し続ける方法を模索していたことは、先の岩田氏の言葉からも想像できる。DeNAとの連携は、任天堂がスマートデバイスのゲームビジネスの世界でビジネスを展開するために必要な条件を考え続け、ようやく答えを導き出せたということだろう。必然的に、共同開発で生まれてくる新しいゲームや新プラットフォームに対する期待度は上がる。


タッグの決め手はDeNAの情熱

ここで、疑問が残るのは任天堂がなぜDeNAをパートナーに選んだのかという点だ。両社の出会いは10年。DeNAが運営するSNSサイト「モバゲー」のソーシャルゲームプラットフォームに任天堂IPを供給してもらえないかという提案がきっかけとなり、話し合いを重ねてきたという。同時に多くの企業からも提携を持ち掛けられていたことを会見で岩田氏は明かす。

その中で任天堂がDeNAと組むことにしたのは、DeNAの「情熱」、守安功社長兼CEOの「黒子になっても構わない」という一言、そして任天堂とのプロジェクトにエース級の人材を配置するというコミットメントに対する評価だという。


苦戦を強いられていたDeNA

DeNAはモバイルゲーム事業を主力事業として会社を成長させたが、ここ数年はフィーチャーフォンからスマートフォンへの利用者のシフトといった変化に適応するまで時間を要していた。

モバゲーのようなSNSサイトを介したゲームビジネスから、Google PlayやApp Storeからダウンロードして遊ぶネイティブアプリ(スマホアプリ)市場も広がった。ソーシャルアプリ事業を展開する会社によれば「モバゲーを介したソーシャルアプリのユーザーの伸び率より、ネイティブアプリがやはり人気」だという。

こうした時代のうねりの中でDeNAは苦戦を強いられたが、昨年ようやくスマートフォンのゲームアプリでヒットタイトルを生み出した。それはスクウェア・エニックスと共同開発した「ファイナルファンタジー レコードキーパー」であり、スクエニのIPを活用したものだ。守安氏はこの経験から、「スマートフォンでのゲームアプリ市場においても戦える」とし、任天堂とのプロジェクトにも自信を見せる。