注目集まるビックデータ活用は高齢化した日本の農業の救世主となれるのか


期待されるビックデータの活用

TPP交渉も大詰めにさしかかり、いよいよ日本の農業の行く先に対する議論が白熱しそうな状況が訪れている。確かにティー・ピー・ピー(TPP)締結の結果、国内の農業が立ち行かないようになってしまったら、自国の食糧自給率をやみくもに下げることになり、それは防衛問題よりも深刻な安全保障の問題となるとも言えるからだ。

しかし、農業を守るという視点でTPPに反対し、当面の締結を先送りすることができたとしても、国内の農業はそれだけでは存続できないかなり深刻な問題を抱えている。それは農業従事者の平均年齢の高齢化だ。農林水産省の発表によると農業就業人口は年々減少しており、平成26年で226.6万人となっている。そのうち65歳以上は144.3万人で実に64%近くが高齢者によって支えられている。しかも75歳以上がその3割を占めるというから、かなり深刻な事態に陥っていることがわかる。安全保障上の問題にも匹敵するほどの自国の農業問題を、高齢者にこれほど依存しているようでは基幹産業にはなりえるはずもない。

もちろん若年労働者が、農業により積極的に従事するようになるということが、もっとも有効な解決策ではある。しかし、人口減少も進む中にあっては長年の知見や経験を補うものとして農業が新たな戦略とソリューションを必要としていることは間違いない。そこで注目されているのがアイ・シー・ティー(ICT)をフルに利用したビッグデータ活用の農業事業化だ。


長年の経験や勘に頼らないビッグデータ利用の農業事業化

農業はこれまで専業農家により家業として受け継がれてきており、地域に即した個別農産物の栽培プロセスは、多くの部分で経験と特定の個人の知見に依存して収穫の精度を維持してきている。いわば俗人的な事業といっても過言ではない状態を継続したまま今日に至っているのだ。したがって、このプロセスをより高いレベルで安定した精度を保つ手だてを導入しない限り、若者の就労を増やすだけでは国内農業の生産性向上と安定した事業化は計れない。そこで積極的な利用が考えられているのがICTのフル活用とビッグデータの積極利用だ。