現在の富士フイルムのポートフォリオ

2013年度、富士フイルムの持ち株会社となる富士フイルムホールディングス <4901> のグループ売上高は実に2兆4,400億円、営業利益率は5.8%にのぼる。その事業ポートフォリオは、6つのコア事業に分類される。デジタルイメージング、グラフィックシステム、ヘルスケア、光学デバイス、高機能材料、ドキュメントの事業だ。2013年度は、6コア事業をさらに分類した3事業分類において、どの事業とも営業黒字化に成功している。

そのような富士フイルムが、次に目指すのが、総合ヘルスケアカンパニーである。診断という既存技術を元に「予防」としてスキンケア、サプリメントへの事業拡大を手がけてきたが、次に事業拡大するのは「治療」分野としての再生医療なのである。

再生医療の分野では、既に自社で細胞を培養する足場素材の技術を保有している。2014年に子会社化済みであるジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J-TEC)は自家培養表皮、自家培養軟骨、自家培養角膜上皮製造の再生医療製品事業と、研究用ヒト培養組織ラボサイトを開発・製造・販売する研究開発支援事業を行っている。


今後の再生医療の動向

2015年3月30日、富士フイルムはiPS細胞を開発・製造する米セルラー・ダイナミクス・インターナショナル(CDI)の買収を発表した。iPS細胞といえば一般に再生医療のイメージが一般的であるが、CDI社が得意とするのは「創薬支援」だ。

薬を作るプロセスでは、初期段階において多くの化学物質から医療効果があるものをスクリーニングする。この過程は、人体実験ができないため、これまでは動物実験が行われてきた。しかし、人間と動物では構造が異なり、動物で効く薬品が人間にも効くとは限らないため課題も生じていた。

富士フイルムはここに大きなビジネスチャンスを見込んでいる。人体細胞そのものであるiPS細胞を用いることで、有効成分を発見するプロセスに、大きな革新をもたらすことができるのだ。

昨年のJ-TECを子会社化、米CDIの買収で技術ポートフォリオは全てそろった。総合ヘルスケアカンパニーとして、再生医療分野の磐石な体制を築いてきた富士フイルムの戦略に、今後も目が離せない。 (ZUU online 編集部)

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