2015年4月下旬、「エイズ治療薬が「白血病」に効果 京大チーム解明、3年後実用化目指す」というニュースが各メディアから報道された。他の何社かの新聞でも取り上げていたので、目にした方もいることだろう。エイズ治療薬として広く使われており、「ザイアジェン」として販売されているアバカビルが、白血病の一種である「成人T細胞性白血病(ATL)」にも有効である可能性が示されたもので、エイズ向けの薬剤が血液の癌である白血病にも有効だということから注目を集めた。

同報告をした論文によると、ATLを引き起こす癌化した血液細胞(ATL細胞)に、治療濃度のアバカビルを加えると、ATL細胞が死滅。また、アバカビルによるATL細胞の殺傷機序は、DNA修復機能を低下させることで、癌化していない健康な細胞には働かないとのことだ。

ATLはそもそもHTLV-Iというウイルスによって発症する予後の悪い白血病で、現在のところ適切な治療法は少なく、ATLに苦しむ患者やその家族も多い。今回の研究成果はあくまで試験管内での成果であるが、最近、こうした元々は別の病気の治療のために開発された薬が、別の病気にも有効であることが「ドラッグリポジショニング」と呼ばれ、製薬ビジネスの新たな取り組みとして注目を集めている。そこで前編と 後編 の2回に分けて、 ドラッグリポジショニングについて解説していく。