コンビニエンスストア大手のローソンと佐川急便を傘下に持つSGホールディングスが業務提携し、ローソンを拠点にした宅配サービスを開始する。 eコマースの拡大をきっかけにネットとリアルの融合が進む流通業界。だが、そのサービスを維持するのは容易ではない。 (文=古賀寛明 提供: 経済界


「ネット」が買い物を変えた

ローソンとSGホールディングスがコンビニエンスストアを拠点に宅配サービスを行う新会社を設立すると発表した。6月に設立される新社名はSGローソン。51%をローソンが、49%をSGが出資する。

ローソン店舗を起点とした半径500メートルの小商圏内での配送や御用聞きを、まずは都内の店舗を皮切りに行う予定だが、背景にあるのは、高齢社会の進行や世帯人数の減少で、利便性の良さからコンビニが生活により密着した存在になったことがある。さらに、コンビニ間の競争激化も理由のひとつだ。ローソンの玉塚元一社長も「待っているだけでなく、積極的に顧客に近づく戦略」と説明するように、宅配しつつ御用聞きをすることで、接触頻度を高め顧客の囲い込みを狙う。

また、eコマースの市場が日用品はもとより生鮮食料品にまで拡大しており、今や宅配サービスは当たり前になりつつある。「流通で元気がいい分野は2つ。コンビニとeコマースだ」(玉塚氏)というのもうなずける。


佐川急便にも多くのメリット

もちろん佐川急便にとってもローソン店舗で荷物を受け取れるようになれば、再配達のコスト削減が見込める。特にネット通販で拡大した再配達のコストはばかにならない。ただでさえ人材不足の物流業界にとって、ドライバーの人件費と走行距離の増加は死活問題と言っていい。 既にヤマト運輸もファミリーマートでの受け取りサービスを始めるなど再配達ゼロを目指した取り組みを行っており、佐川急便で送られた荷物が全国1万2千店近くあるローソンで受け取れるのは大きい。また、夜間の配達を嫌がる一人暮らしの女性の声にも対応できる。

今回の取り組みは、例えば近所にスーパーがなかったとしても、コンビニの商品と同じく生鮮野菜や肉や魚などをローソンのネットスーパーを通して、宅配で受け取ることも可能になる。高齢者にとっては、米など重い荷物を運ばなくてよいだけにうれしいサービスだろう。また、「大地を守る会」や「らでぃっしゅぼーや」など安全・安心を謳う生鮮野菜の通販サイトとも連携。 ローソン自体も積極的に農業生産法人に出資するなど産地や旬、鮮度にこだわった姿勢は、価格競争に巻き込まれない付加価値の高い商品として一定の層を取り込めそうだ。

既に欧米では、こうした生鮮食料品の宅配サービスはポピュラーなものになっており、例えば、あのアマゾン・ドット・コム も「アマゾンフレッシュ」で生鮮食料品の宅配を米西海岸の都市を中心に拡大している。