「便利」が利益を圧迫する

日本でもイオンやセブン&アイグループが、「オムニチャネル」という言葉でネットとリアルの融合を目指している。特にセブン&アイグループは、ネットスーパー西日暮里店を今年3月にオープン。ネット専門の店舗、いわゆるダークストアと呼ばれる次世代型の店舗を誕生させている。

ただ、宅配は車両やシステム、人件費などのコストが掛かるサービスなだけに、今後こうしたコストをどう抑えるかがコンビニだけにとどまらず流通業界すべての課題となる。現状では、2千円以上の買い物で配送料無料にするなどしているが、さじ加減を間違えると顧客はすぐそっぽを向くため、いかに利益を圧迫しないような仕組みをつくるかが胆になる。実際に住友商事傘下のサミットネットスーパーは2007年に開始したサービスを昨年秋に終了。原因は、利用人数が思うように増えなかったことと、配送範囲を広げ過ぎて効率的な配達ができなかったことといわれている。

海の向こうでも物流コストが課題となっており、アマゾン・ドット・コムなどは、無人飛行機ドローンを使って配達できるのか実証実験に取り組もうとしており、倉庫内もロボットの使用を見込む。また冷蔵可能なロッカーの登場など、今、物流コスト削減の現場は、技術革新が目覚ましい分野になっている。だがそれは、来たるべき未来に技術が追い付いていないという現実も物語っている。


つきまとう「人」の問題

さらに、利用人数の確保も宅配サービス維持の重要な点になる。価格や利便性もさることながら、長期的な視点で考えれば安心感は外せない。多くの高齢者にとっては、いまだにネットは縁遠いだけに御用聞きは有効な戦略となるはずだ。だが、御用聞きでは、宅配する側のホスピタリティーや人間性が重要になる。ただでさえ人材確保が難しい中、育成も含めた人の問題をどうクリアしていくのかが今後の課題となっていくはずだ。

いずれにしても、流通のカギを握るのは、店舗などの拠点から顧客のもとへのラストワンマイルとなりそうだ。ローソンは今回、佐川急便と提携したが、同時にかねてより関係の深い日本郵便とも「多面的な提携」(玉塚氏)を表明している。店舗をオープンプラットフォーム化し、異業種の参入を促し多くのサービスを提供することを目指しているが、結局は、配送網を確立しているヤマト運輸、佐川急便に日本郵便を含めた大手3社と、今後どのように協力体制を築くかが流通業界の命運を握るのかもしれない。 ( この記事は5月12日号「 経済界 」に掲載されたものです。)

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