賃貸マンションにおける容積消化

容積の消化については、分譲マンションと賃貸マンションでは、考え方を変えた方が良い。分譲マンションでは容積率が増えるほど、販売できる床も増えるため、容積は消化しきった方が良い。マンションディベロッパーからすると、分譲マンションは売り切ることで事業が完結するため、販売床が増えるほど収益が上がる。

一方で、賃貸マンションはどうであろうか。賃貸マンションは賃貸需要との兼ね合いで容積消化をすべきかどうか判断する必要がある。例えば、賃貸需要の弱い郊外の土地で、大きなアパートを建ててしまうと、将来、空室を多く発生してしまうケースがある。空室部分の建設投資額を、他の埋まっている部屋で回収していることになり、投資効率が悪くなる。そのため賃貸マンションの場合は、賃貸床を増やすことが必ずしも収益増加に繋がるとは限らないのだ。


大型商業施設は未消化が多い

このように、賃貸事業において容積をあえて未消化のまま投資するという考え方は、プロは良く行っている。一番典型的なのが郊外型の大型商業施設だ。大型商業施設があるところの用途地域は近隣商業地域もしくは商業地域に指定されていることが多い。

容積率も通常は200%以上が指定されている。そのため高層の商業施設も可能であるが、郊外のアウトレット施設は2階建てに留まっているケースが多い。

理由としては、郊外の商業施設の賃貸需要は、3階以上は極端に弱くなってしまうことが挙げられる。郊外型の大型商業施設は、来客者にとって1階もしくは2階に店舗があった方が便利だ。よっぽど魅力のある店舗でない限り、なかなか3階以上に上がっては買い物をしないという行動特性がある。3階以上はテナントにとって立地条件が悪いため、賃貸需要が著しく落ちるのだ。

したがって、郊外の大型商業施設で容積を消化しきるのはリスクがあり、未消化のまま2階で留めているケースが多い。