(写真=PIXTA)
今年5月、ブルームバーグは株価と長期金利がバブル崩壊後の1992年7月以来となる逆行状態に陥っていることを報じた。つまり、株価と債券価格の相関が高まっているというのである。教科書的には株価と債券は逆相関の関係にある。言い方を変えると、株価と金利は相関関係にあることになる。その歪みが現在、危険な状態にまで広がっているというのだ。
株式と債券など、値動きの異なる資産に投資する手法は分散投資と呼ばれる。一般的には、こうした分散投資によってリスクを低減させる効果が見込めるとされている。バランス型ファンドといわれる投資信託は、この前提のもとに国内外の株式、債券さらに不動産、金をはじめとした商品、原油を含むエネルギーなど多様な資産に投資し、リスクの低減効果を高めることを目指しているわけだ。
機能しなかった分散投資
株式と債券価格は逆相関の関係にあり、株式が値上がりすれば債券価格は下落するともよくいわれる。理屈はともかく、こうした分散投資は本当に機能しているのだろうか。分散投資でリスク低減を図ることが本当に可能なのか。
多くの投資家はそんな教科書的な理論など信じていない。なぜなら、リスク分散を謳い文句にしたバランス型ファンドは、リーマンショック時にも無力だった。むしろバランス型ファンドに見切りをつけて、新興国や高金利通貨に乗り替えた投資家は順調にリーマンショックの損失を取り返した。にもかかわらず、バランス型ファンドを持ち続けた投資家の中には未だに損失を取り返せない人も多い。
値動きの異なる資産に投資することでリスクを低減させるという謳い文句は、投資家の耳に心地よかった。しかし多くの投資家は、その理論が現実の前ではあまりに無力だということを思い知らされたのだ。
分散投資が意味を失うとき
ブルームバーグは、株価と長期金利の相関係数に目をつけて分析を行っている。相関係数の指標は両者が完全に連動すれば1、無関係ならゼロ、反対に動けばマイナス1となる。
異次元緩和が導入された2013年4月4日の相関係数は、マイナス0.1324。長期金利は翌日に0.315%と当時の過去最低をつけたが、翌月23日には1%となり、3倍強に急騰した。しかし2013年5月のバーナンキ元FRB議長のテーパリング発言もあり、TOPIXは大幅に下落した。
東日本大震災が発生する前の10年12月の相関係数は0.0379、同年の高水準0.638から大幅に低下していた。TOPXは大震災のあった11年3月、高値圏から底値圏まで25%程度の下落率を記録。長期金利は、株価がその年のピークをつけた2月17日の約1週間前に1.35%に達していた。
パリバショックと呼ばれる世界的な金融危機に至る最初の兆しが欧州の金融市場に表れたのは07年8月。相関係数はその半年前の2月末に0.0923と同年の最低水準にあった。長期金利は、6月13日に1.985%まで上昇した。TOPIXは7月から下落に転じ、08年9月のリーマンショックを経て、翌年3月には698.46と2年前の半分以下になった。
日本株と長期金利の相関係数はITバブル期の1999年3月にマイナス0.2211に低下している。90年前後に起きた平成バブルの崩壊時にも、相関係数は著しく下げていた。89年9月にマイナス0.5699まで低下しているのだ。
ブルームバーグが報じた今年5月13日のTOPIXと長期金利の相関係数はマイナス0.3302。この指標を見ると、確かに現在の水準はもはや危険水域ともいえる。